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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】レールの上をただ歩いているのかと頭が錯乱する - 『令和元年の人生ゲーム (麻布競馬場)』

「麻布競馬場は実は知り合いなんじゃないか?」と旧友を探る程に具体的すぎる描写。小説に友情出演した気になった私の心には虚無と興奮が残る。

「ビジコン」「コンサル・金融業界の社名が一杯のランT」「地方の観光大使」「人材最大手のエレベーター激混み問題」
あまりに具体的すぎる描写から麻布氏が仕事もほどほど、日々取材に勤しむ様子が伺える。
これは刺さる人には強烈に刺さるだろう。

本著は4つの短編により構成されている。
◆第1話『平成28年』は、ビジコン運営サークルが舞台だ。自分の可能性を広げたい平成の意識高い大学生が描かれている。
◆第2話『平成31年』は、人材最大手「パーソンズ(おそらくリクルート)」でキラキラした会社に惹きつけられた社員の実態だ。外銀との差が非常にリアル。
◆第3話『令和4年』は、池尻大橋や神泉あたりにありそうな意識高いシェアハウスでZ世代の若者が登場する。
◆第4話『令和5年』は、老舗銭湯を舞台にプチお坊ちゃんの真面目で不真面目な奮闘が描かれている。

ビジコン運営もビジコン出場もした私はまさに平成の意識高い大学生だ。資格勉強と外コンを挟んだが、リクルートに入り人生に困惑した。
思い返せば、ビジコンに居た人間の何人が実際に行動したのだろう。。ビジコンの何人かはリクルートに入社し、起業した人もいれば潰れた人も居る。まさに小説に出てくるロールモデルだ。

自分にとっては“特別な”人生が小説として一般化されるのは、何も特別なことではないと辛い過去も洗い流してくれるような思いと自分の人生はレールを歩いてるだけだと一般化され虚しい気持ちが交差する。
しかし1億人も居たらどこかのカテゴリに所属しているのは普通なことなのだろう。
本著は“令和元年の人生ゲーム”とあり、おそらく昭和→平成→令和の“意識の高い-自分が価値ある人間と思いたい人かもしれない-”の変遷も表している。
どの時代であっても真面目で不真面目に、つまり自分で考えずにレールの上を少し有利に歩いているだけなのかもしれない。
私も人生ゲームの中にいるのだろうか。そうかもしれないという考えがよぎるのを瞬発的に脳が拒否する。
自分の人生はまだ無限の可能性があると信じて動いていきたいのだ。

ちなみにタワマン文学がハマる層は『東京女子図鑑』『東京男子図鑑』をお勧めする。あのとき東京でもがいた自分を投影できるのではないか。