上野千鶴子については説明不要かと思うが、日本のフェミニズム学の権威というべき巨塔である。いや、壁というべきか。書評の筆者は氏の大きな壁をよじ登ろうとしている、アマチュア専業主婦作家です。その巨壁に、真っ向から挑んだ急先鋒女性が鈴木涼美氏である。鈴木涼美氏は、私が今1番気になっている作家でもある。元日経新聞記者で元AV女優、母親は児童文学者という背景をもっている女性だ。性に関して一家言ある芯のある女性であることは、この肩書きを見ればわかるだろう。
私は彼女の文体が好きだ。新聞記者らしい理路整然とした文章ながらもながれるようななめらかさと、少し影のある申し訳なさそうな色気。
はっ、違う、ここは鈴木氏の文体をめでる場ではなかった。ちなみに、彼女は芥川賞に2度ノミネートされているので小説を好む方はぜひ。
上野千鶴子氏は、「おひとり様在宅死のススメ」を著し、「おひとり様天国ニッポン」の文化を築き上げた。東大卒で実家が医者でお嬢様の同氏は、資本主義に女性が絡め取られていく時代に巻き込まれてしまったように私には思えてならない。女だって男と同じくらい仕事ができる、日本の男はダメだと息巻いて、高飛車にフェミニズム思想を歌い上げた。
上野氏は、日本の男をディスりながらも、可愛いと思っている。
彼女が堂々たるビッチであることは周知の事実だ。彼女は理知的な男性に好かれるタイプ。暴走がちな知性、リズミカルな言葉、奔放な態度。庇護欲系の理知的男性は、こういう女が好きなのだ。同じ身だからワカル。目を細めて見守ってしまう。しかしながら大抵の男性は、知「識」が豊富でしゃしゃってる女性が好きではない。自分よりも知「識」が豊富で口達者な女性は怖いからだ。女版ひろゆきと囁かれるのも納得の論破ぶりなのだ。こわいよう。
上野姐さんは全女の味方なのだけど、学者だから手厳しい。鈴木氏との言葉の応酬は本当に見ものだ。
新しい価値観をつくる、フェミニズム用語にいくつも出会い、Wikipediaを引き引き、読み応えたっぷりの本書に、メモを書き込みまくりながら一生懸命読んだ。
この本のコピーがまた凄い。
「女の身体は、資本か?負債か?」
もう絶句してしまった。
「資本」と捉えるのは、AV女優としてプライドを(後悔はありながらも)それなりに持っている鈴木氏で、「負債」と捉えるのが、それに苦言を呈する上野氏というのが基本的な構図。
ここではちょっと私の意見は書ききれないので、エッセイ本でも出版したいと思っている。もし興味のある編集者さんがいらしたらぜひお声掛けくださーーい。
あー、女に生まれて、良かった!(ブルゾン ちえみ)