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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】 噛めば噛むほど味わい深い 専門人情漫画『解体屋ゲン1〜5巻』

 

 連載20年、なんと全部で100巻にもなっていて、しかも電子版が読み放題になっているサイトも多いので読みやすい。そんな超長編漫画の初っ端の1〜5巻である。漫画の出だしのストーリーは、読者をその世界観に引き込むのに大変重要だ。さてこの漫画ではそこはどう展開されているのか、、。

 主人公のゲンは爆破解体のプロ。大手ゼネコン「三友重機リース」に勤務している慶子の後押しでグループに入り「三友爆破株式会社」をつくる。会社の台所は火の車だが常に弱者の立場に立つ、泥臭さただようヒーロー。そしてゲンのまわりにだんだん仲間の社員が増えていく。特に芸能活動をしていた女子、光が運転手として入社するくくだりは印象深い。爆破解体するビルで飛び降り自殺しようとしたクレーン技術者のヒデをゲンが救いながら入社させるなど、人情に厚いエピソードもでてくる。

 爆破解体の様々なエピソードも面白い。地上26階建て、高さ100mを超えるビルの解体。ゲンは下の階を壊してあとは自重で壊れる、とシミュレートし張り切るが、ライバル的存在の海外の会社に仕事を取られてしまう。かれらは、解体をショーとして見せるかのごとく、ゲンにしてみれば無駄とも思える幾多の発破を建物のそこかしこに仕掛けて解体に挑む。そこに期せずして下請けに回ったゲン。明日の爆破解体を待つ現場を点検しながら、彼らの計画の重大な欠点に気づく。その後取った行動は、、。

 彼らの織りなす物語の縦糸は、「専門性」だ。例えばコンクリートと違い、粘性の高い鉄でできた鉄鋼用の鋳型。均一素材の鉄の塊のそれはダイナマイトを大量に仕掛けてもひび割れる程度だ。この物体の解体を爆破でできるのか? など知らず知らずと読者の知らない世界へ誘ってくれるため、読んでいて知的好奇心が満たされる。
 そして横糸は「人情」だ。例えば「解体」とくれば不動産売買に伴うものが多い。そこで現れる強者と弱者。仕事を通じて弱者に味方するゲンのストーリーがわんさか。

 会社の規模や請け負う解体の規模もだんだんと大きくなっていく。彼らの今後、そして時折みせるゲンと慶子の恋愛動向も気になる。そんな伏線を拾ったり、専門用語を理解するのに読み返したりの繰り返しでいつの間にか世界観にはまってしまう冒頭1〜5巻である。電子書籍でしか発行されていないので、ネット検索してほしい。