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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】 情報の交通整理に『ネット情報におぼれない学び方』

 ネットでの検索、ChatGPTにとりあえず聞いてみる、SNS、世の中まさにそれがなければ回らなくなったこの時代に、こう思ったことはないだろうか?「やっぱり生の講演会はいい」「やっぱり直に会って聞かないと」。

 なぜそう思うのか。実はその端的な説明がこの本の勘どころの1つであり、改めて情報の交通整理の出来る本である。

 本書は、 大学図書館の司書であり『学ぶ技術』の大学授業も担当する著者から、特に中高生を中心とする学習者に向けた、ネット時代の学び方指針である。
 ページをめくるとネット情報と図書館の本に代表される紙の情報の違いが分かりやすく纏まっている。ネット情報は「情報スピードは速いが信頼性は玉石混交」、印刷物は「遅いが信頼性は全体としては高い」などである。
 そしてもっというと、情報の出処本人の一次情報が大切で、その源泉こそが重要であることが、本書冒頭の「千と千尋の神隠しの舞台はどこか?」を例に説明される。
 この書評の冒頭に述べた生の講演会、オフ会、そして本人インタビュー記事などは、源泉だからこその言葉の端々、表情などを含めたニュアンスが伝わり情報の信頼性が高いのである。
 そんなことは皆分かっているかもしれない。しかし、改めて解説されることにより論理的な交通整理に納得する。これは特に社会経験の少ない初学者にとって恐らく目から鱗が落ちる思いであろう。そしてそんな交通信号を脳内に張り巡らせて批判精神で情報にあたることは、現代を生きる人間誰しもに有用なのだ。

 また、情報操作や噂の広がり(なんと関数で説明!)についての記述も興味深く分かりやすくかかれている。後半では得た情報インプットからアウトプットすることでの学びについて述べられており、学び方について一層深みを増している。

 自ら経験し、ときには失敗して学ぶことも大いにあるが、それには時間もかかる。本書を、そんな経験と平行しながらも抽象化した羅針盤として参照することで、この時代の情報リテラシーの学びがショートカットできるであろう。

発行所 ㈱岩波書店 
(岩波ジュニア新書)
著者  梅澤貴典
発行日 2023年2月21日