料理のカリスマの自伝。挑戦とはなにか。皿洗い何年といった単なる努力話ではない。他の人が避けるところにこそチャンスがある。その1つが鍋磨き。誰よりも早くきれいなだけでなく、磨く間にも活路を見出すアンテナを張り続けた。
若い禅僧がただ座しているようで、仏道という大海原に正面から挑むような、まさに料理「修行」。この16歳から28歳の約12年が、後の39年を差し置いて本書の3分の2を占める。
充分に技術を身に付けたころに師から一言、「セ・パ・ラフィネ(洗練されていない)」。後にその師から著者の代名詞「JAPONISÉE(日本化)」と評価され、2019年には同名の書を出版。まだ求道の旅は終わらない。3年後の70歳から新たな扉を開く。洗練さを求めて、無心で料理に取り組むために。