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【書評】郷愁、憧憬、思慕、切なさ、愛。『サウダージ』

原作者のカリブsong、つまり狩撫麻礼は、作画を務める相手の持ち味を活かそうと努める。
本作の作画は田辺剛。写実的というのか、無機的というのか、コミカルさやドタバタとか、人間性を前面に出したり、激した情熱的な物語には決して向いてはいない絵柄と作風の持ち主と思えた。
だからこそのこの選択か。この六つの短編集では、小泉八雲の『怪談』、フランツ・カフカの『断食芸人』、陶洲明の『桃花源記』を題材にした三作と、オリジナル三作で為っているが、いずれも舞台は中世期の欧州をイメージしていると思われる。

サウダージとは、郷愁、憧憬、思慕、切なさ、愛などの意味合いを持つポルトガル語だそうだ。
そういった狙い目を持って挑んだ本作に於いては、狩撫麻礼にしては科白が少ない。神秘性を持った寓話的な漫画作品を目指したのだろうか。
正直なところ、画風が読み手が気に入るかどうかで評価は大きく分かれるだろう。私はといえばあまり好みではない。
しかし、六作目「ビヨンド・ランド」は多少面白く感じられたのであった。

1.「サヨナラ、また会いましょう(小泉八雲『怪談』より)」
2.「断食芸人(フランツ・カフカの同名短編)」
3.「占い師ワーリカ」
4.「首吊り台」
5.「コンペティション
6.「ビヨンド・ランド(陶洲明『桃花源記』より)」

サウダージ
作者: 作・カリブsong、画・田辺剛
発売日:2015年3月9日
メディア:単行本