元夫から、
命の危険を感じる程のDVを受ける主人公の千鶴。
千鶴は偶然にも、
小さい時に自分を捨て、出ていった母 聖子の居場所を
知る。頼るあてのない千鶴は、母と共に生活をすることに。
そこには、
母 聖子以外に、娘に逆に捨てられた彩子と、聖子をママと呼び慕う恵真の3人が暮らしていた。
3人に千鶴を加えた、女性4人の共同生活が始まる。
千鶴は元夫から受けた恐怖のトラウマのあまり、家の外に出られない。
母の聖子は40代で、若年性認知症を発症。
彩子は娘のためにせっせと働きに出ていたのだが、
旦那・旦那の両親・娘本人からも母親失格として貶められる。
美人で、ぷちインフルエンサーの恵真は、小学生の時、頼った男性の担任から逆に性的ないやがらせを受け、それから男性不信に。
というように、町田そのこさん作品あるあるの、登場人物全員が幸薄い設定。
3人で協力し、聖子を介護しながら、
なんとか支え合う共同生活だが、共同生活での安らぎの時間はほとんど続かない。
①母 聖子の病(若年性認知症)が徐々に、しかし確実に進行
・夜の徘徊
・トイレできなくなる
・人が誰だか分からなくなる
・調子悪い時間が長くなるetc...
②音沙汰なかった彩子の娘の電撃訪問
さらに娘は妊娠しており、彩子に親としての最低限の責任を持って償えと、甘えてくる
③千鶴のDV元夫が、千鶴の居場所をみつけ、4人で暮らす家に乗り込んでくる
といった悲劇が重なる。
本作品で印象に残ったセリフは、ほぼ全て母 聖子のセリフ
『わたしの人生は、わたしだけのものだ』
『「自分の手でやることを美徳だと思うな。寄り添いあうのを当然だと思うな。ひとにはそれぞれ人生がある。母だろうが親だろうが、子どもだろうが侵しちゃいけないところがあるんだ」』
タイトルの「星を掬う」というのは、
宇宙のように拡がる記憶の中から、
星のように美しい記憶を辿るという意味。
記憶を辿ることは、星を掬うようなものだと。
病気のこと、家族のこと、色々と考えさせられる1冊。
本:星を掬う
作者:町田そのこ
発売日2021.10.18