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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】マラソンの先人に学ぶ簡潔バイブル『3時間台で完走するマラソン まずはウォーキングから』

 この本一冊あれば、とりあえず市民ランナーがマラソンの何たるかを知るには十分なのではないか。
そう思わせる読後感。唐突な例えだが、まるで、メロン、巨峰、バナナと果実が沢山入ったフルーツ炭酸ジュースのように、味や色彩の満足感とともに爽やかスッキリ感がある。なぜそんな本なのか、紐解いてみよう。
 
 マラソン初心者の私がまずガツンと叩かれ、かつ納得せざるを得ないのが、「地球上でできるだけ楽に物を運ぶコツは、重心をうまくつかみ、活用することである。」という物理学的アプローチだ。たとえば声楽が人間を楽器のようにいかに使うか、ということと同じように、ランニングもいかに人間という器を効率的に長距離運ぶかということなのである。そこで、身体の重心「丹田」を中心とした上下左右にブレないフォーム、そのため体幹を鍛える日頃の姿勢やウォーキングでの調整、走る前のウォーミングアップ運動、さらに体重の管理などが記されている。

 そしてもう一つのガツン&納得ポイントは、レースマネジメント、つまりスタート前からレース中の細かなノウハウだ。例えば前夜からシューズを始め荷物確認や開催場所までのルート確認。レースの朝は消化の良い四時間前に炭水化物やミネラル中心の食事、そして排便タイミングまでかいてある。レースの序盤はどうしても気持ちがハイになるが冷静を心がける。そして始めは身体に余裕があるのでオーバーペースになるが、過度な心拍数で無酸素運動を増やすと後半スタミナ切れになる。、、などなど。

 恐らく初心者市民ランナーは、ハーフ、フル、とレースの数と距離をこなしていく都度この本の基本に戻れば、理解力と経験が高まるごとに自分のレベルに合わせた発見がありそうだ。そんな意味で、本の帯「ベテランからビギナーランナーまで使えるマラソン入門のロングセラー」に納得せざるを得ない。

 他にもシューズの選び方、食事や練習の仕方など市民ランナーがゆくゆくはフルマラソンを3時間台(サブフォー、という)で走ることを目標にした、あらゆるノウハウが広範囲で、場面が思い浮かぶ細やかさにもかかわらず分かりやすく簡潔にまとまっている。この多岐にわたるが簡潔、というのが入門書ならではの「フルーツ炭酸ジュース」のさっぱり感にも繋がるのだ。
 ぜひ、サブフォーなんてとんでもないという初心者からベテランランナーの皆さんにバイブル候補として開いてほしい。

発行  光文社新書
発行日 2006.12.13
作者  金哲彦