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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】ラスタ(RASTA):a.聖なる 俗なる 高貴な 乞食的な 捨て身の『ラスタ牌』

 

果たして、漫画原作者である狩撫麻礼が麻雀に興じていたのかは知らない。少なくとも私にはそのイメージは湧かないのは確かだ。
本作は、別冊近代麻雀にて1982年から1985年に連載された。意外に長期連載である。
作画は守村大。まだまだポッと出の頃からの連載開始だったのだと思う。正直なところ、連載当初は画もセンスもやや稚拙さを感じるが、それも僅かな期間のこと。やがてその画風は私を魅了した。

さて、麻雀漫画というと、知略、激しい打ち合い、執念の勝負、なんかが想像出来ちゃうが、本作は全く以てそんな漫画じゃない。
レゲエ、ロック音楽と麻雀が好きな男、自室だろうが銭湯だろうが常に黒眼鏡を外さない下村という男が主人公。スケベでビンボーで身勝手だが、回復力だけは驚異的なラスタマンの間抜けな話がコアだ。
下村は、初めの頃は明らかに狩撫麻礼を見た目のモデルとしているが、連載を重ねるにつれ、どちらかというと松田優作みたいになっていく。そして、ショボさとミジメさが目立つ始めの頃から、次第に相変わらず下世話な中にもラスタマンとしての風格も現れてくる。ま、自我とワガママを押し通すとも言うが。
単発のエピソードは、常に刺激的な寓話性の面白さをもたらす。麻雀仲間が拾ってきたホームレスに、麻雀でコテンパンにされたり、胃がんに犯されたと思い込んでヤケになり、サラ金巡って二千万円を踏み倒して逃亡したり、偶然再会した高校時代の同級生の人妻と恋仲になり北へ逃げようとするが土壇場で裏切られたり、目が不自由なヒトをマジで演じて食堂に務める若いオネーチャンとの結婚を夢見たり、あまりの空腹に無一文で挑んだ麻雀で負け、売り飛ばされてクスリの影響で我知らずババアの相手を務めて小金持ちになったり、アパートの地下を掘って雀荘にして一攫千金を目指したり、基本的にアホで突飛。下村のヤケクソ的な活躍とクサレ縁的麻雀仲間三人たちを描く。よくもまぁあれこれと思い付くものだと感心してしまう。
ソウル溢れるラスタマン故の喜劇の数々。下村のおかしなことばかりの日常はむしろ愛おしい。
虚無か過剰の日々。Oh ラスタ牌。

ラスタ牌
作者: 狩撫麻礼守村大
発売日:1983年12月30日
メディア:単行本