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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】無頼、豪胆、海と南国の冒険活劇。『サムライ・ノングラータ』

 

矢作俊彦司城志朗共著の長編小説の第三作目であり、元は、1984年に刊行された『海から来たサムライ』という作品であったが、著者自ら大幅に手を入れ改作したらしい。
どういう作業を以て共著となっているのか。凄く気にはなるのだが良く分からない。
ともあれ、海洋冒険活劇である。
時は1892年、明治25年のこと。元海軍士官の鹿島丈太郎は海軍大佐、外務大臣、そして畏きあたりからの密命を受ける。
ハワイ王国の王女を救出せよ」
当時のハワイは、米国からの移民、資本流入が増加し、米国による勢力が拡大、政府も傀儡政権となっていた。
アメリカの植民地政策に対し、ハワイの反米勢力は、英国に留学中の王女を新たな女王として擁立すべく呼び戻したが、王女は帰国直後に行方不明になってしまった。
日本とは縁浅からぬハワイの窮状。
明治天皇の勅旨をハワイの王女に届けるように、つまり見つけ出して救い出せよという要請を請け負った丈太郎は、政府が手配した一党と共に客船ヴェルマ・ヴァレント号に乗船した。
曲者揃いのこの一党。だが、船の中には、アメリカ人、イギリス人、ユダヤ人、清国人らと言ったこれまた様々な怪しい珍客が蠢いていた。
個性、と言うよりキワモノ揃いとの表現の方が相応しい登場人物たちと、快男児振りを見せつける丈太郎との痛快な活劇は、読む者に豪放磊落な時代を創造させてくれる。
また、完全なフィクションではなく、南方熊楠陸奥宗光東郷平八郎黒田清隆ら実在の人物も登場させたり、歴史的事実も盛り込んだりもしている冒険エンタテインメント小説なのである。

前半は、遥かなハワイへの航路で起こる事件の数々。そして後編は、なんとか上陸したハワイ王国での索敵と大立回りを描く。
さて、無頼の徒、丈太郎とその一党はハワイ王女の救出という使命を全う出来るのか。
運命や如何に。