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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】ナンセンスから純文学まで、言語を遊び尽くす。『エロチック街道』

多作を誇る著者のこと、次はどれを読もうかとAmazonを検索。
短編集ゆえこれといった選択の基準というものが特には無い為、やや迷うのであるが、決めるに当たってやはりタイトルは重要な要素だ。
しかし、だからといって、そう言う意味で選んだのではないことは断りを入れておかねばならぬ。
そ、そんなものを期待した訳じゃないよ。いい〜や、マ、マジで。
例の、ぶっ飛んだ展開を予想したまでのこと。だって、普通は付けないでしょうよ、こんな題名は。

発刊された頃には既に作家生活二十年ほど。収録されている18編は、初期のスラップスティックな作風ではなく、前衛的で実験的な作品が多い印象で、あんまりドタバタ、グチャグチャ、メロメロというよりは、みっしりとじっくりとした作品が続く。
こうなってくると良く分かるのが、文章の巧みさだ。
分かり易い盛り上がりが有るでもないのだが、ちゃーんと読み進めていけるのだから著者の筆力には頭が下がる。
その顕著な例は、冒頭の『中隊長』。主人公の中隊長の随筆みたいなものというだけであって、何が起こる訳でもないが、流れる様に読めてしまう。そしてテーマと言えるのが、ただ単に中隊長の性格に依っているということに次第に気付いていき、おお、なるほど、むむむとなるのだ。
他には、言ってることがデタラメばかりな『昔はよかったなあ』、『日本地球ことば教える学部』とか、淡々とそのプロセスを描写するかと思えば、次第に裏切られていく『寝る方法』、『冷水シャワーを浴びる方法』、『歩くとき』の方法シリーズ(?)、ああ楽しいなぁといった感じで読める『ジャズ大名』等々。

という訳で、あんまり「こういう傾向の作品集」と決めつけ難い一冊であるが、何が出てくるのか予想の付かない迷宮の面白さを体感ください。

エロチック街道
作者:筒井 康隆
発売日:1984年10月25日
メディア:文庫本