「最善か無か」
これはメルセデス・ベンツのスローガンだそうだ。
ドイツといえば自動車。その代表ブランド、世界の高級車の代名詞であるメルセデス・ベンツが掲げるこの姿勢こそ、まるでドイツ人の働き方・生き方を象徴している様だと、著者には思えるのだそうだ。
筆者によれば、ドイツ人の文化・習慣・考え方は我々日本人とは大きく異なるとのことだ。
「議論も厭わず、自分の意見を自信を持って伝える」
「相手に忖度しない」
「時間内に必ず仕事を終え、残業は一切しない」
「オン・オフがはっきりしており、就業後のお付き合いは無し。家族と過ごす」
「上司や同僚に気がねなく、長期休暇を満喫する」
「女性の多くがノーメイク」
「服装やヘアスタイルは流行を追わない」
「倹約家で新製品に飛びつかない。使えるものは永遠に使い続ける」
「サウナは混浴が基本、裸を見られても平気」
「おもてなしはしない。人のビールは注がない」
日本人の様に、「空気を読む」、「他人に気を遣う」のとは正反対で、「ありのままの自分」を大切にするのが、ドイツ流の生き方なのだ。
著者は、そのドイツ人のメンタル・特性を「自己肯定感」が高いと捉え、分析する。
日本人の様に、他者を慮ってばかりいて自分を抑えたり、疲れたりするより、ドイツ人に様に、自分らしく、ありのままに生きることが出来れば、ストレスフリーな生活を過ごせるのではないか。少なくとも、「自分自身に満足している」と、もっと自分に自信が持てる様になるのではないか、という訳だ。
それを裏付けるのが、内閣府が行なった若者の意識調査の結果だ。
「自分自身に満足している」・・・日本人は4割強、ドイツ人8割強。
「自分には長所がある」・・・日本人6割強、ドイツ人は9割以上で世界トップ。
逆に、「自分は役に立たないと強く感じる」という質問では、日本人は5割弱程度だったのに対して、ドイツ人は7割弱が否定した。
確かに日本人より、ドイツ人の方が幸せそうに生きているっぽい。
これは気になる。
ということで読んだ本書であったが、最も驚かされたのは、1900年に制定された「閉店法」だ。
大きな駅や空港の店舗、ガソリンスタンドや飲食店などを除いて、日曜日と祝日は原則として店舗の営業が禁止されているのだと言うのだ。
平日も20時でどこもかしこも閉店。24時間営業のコンビニエンスストアも深夜営業のスーパーも無し!
「全ての人が、日曜・祝日は家族の為にも休む権利がある」
ドイツ人にとって日曜日や祝日は、家族や友人、恋人などの大切な人たちとゆっくり過ごす日という認識が根づいているのだ。
そして、休みはやることがないので、老弱男女、季節問わず、ドイツ人は総じて散歩好きなのだそうだ。
さて、個人的なことを言えば、私自身はあまり物欲も無いし、余計なものも買わない。
殊更に他人に干渉しない。
昔、ハゲが出来てしまってからは、仕事のオン・オフも切り分ける様にしてきた。
趣味は、酒、散歩、吉川晃司だ。
もしかして、ドイツ人とは結構上手くお付き合い出来るだろうか。
いや、それとも、やはり自分は日本人だと思い知らされることになるのだろうか。
ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか
作者:キューリング 恵美子
発売日:2021年11月30日
メディア:新書