この手の「読むならコレ」的な本は、実はあまり読んだことがなかった。紹介している本そのものを読んだ方が早いと思ってしまうからだ。しかし池上さんの本は読むと何かしら学びがある。その経験を信じて今回は読んでみることにした。
結果的には「読むならコレ」的な本ではなく、各書が生まれた歴史的な背景や世の中への影響の解説を通して、世界史を学ぶ本だった。紹介している本を勝手に大別してみると、宗教(アンネの日記、聖書、コーラン、「道しるべ」)、資本と労働(カール・マルクス、マックス・ウェーバー)、科学と環境問題(沈黙の春、進化論)、経済学(ケインズ、フリードマン)だ。どれも原著を手に取るのはハードルが高いが、この本ならサラッと解説してくれるので少し分かったような気になれる。
個人的に考えさせられたのは、資本と労働の話だ。私自身、浪費することなく慎ましい生活を送りながら、労働によって自分の存在価値を見出そうとしている。その一方で、資本家から求められる労働力に磨きをかけていく努力が煩わしくも感じることもある。だから自分は資本家の側に入りたがっていると改めて感じた。
本が好きな人ならぜひ読んでほしい。本好きなら、本がこれほど世の中に影響を与えてきたという事実を知って喜ばないはずがない。ただ、世界史をよく知っている人にとってはもっと個別のテーマに沿った専門書でなければ少し物足らないだろう。ページ数としてはそれほど多くないので、気軽に手に取ってほしい本だ。
本好きのあなたへ、本の可能性は底知れない。