最初は高校3年生、今では男子大学生の高橋美咲と旧財閥宇佐美グループの次男で超有名小説家でもある宇佐見秋彦との大恋愛を描くBL作品。1つの巻を読み終えるごとに、「こんな恋愛してみたいなー。いやー、無理だろうけど。」といった感想を思わず口にしてしまう。それぐらい華やかで爽やかな恋愛作品だ。
こんな設定有り得ない、こんなカップル有り得ない、特に宇佐見秋彦の設定はおかしいだろう。通常の作品なら現実感が無くて冷めてしまいそうだが、純情ロマンチカは不思議と世界観に入り込める。現実には有り得ない設定ではあるが、BL作品特有の「周りの目なんかどうでもいいから男どうし愛し合おうぜ」的なことはなく、美咲が秋彦に惹かれていく中で、こんな関係おかしいんじゃないか、自分はおかしいんじゃないかと自問自答しながら葛藤し、二人の愛を育んでいく。その過程に思わずキュンとくる。
また、本作品はオムニバス形式となっている。高橋美咲と宇佐見秋彦のカップルの話である『純情ロマンチカ』をメインとしながらも、大学助教授の上條弘樹と医師の草間野分の恋模様を描く『純情エゴイスト』。大学教授の宮城庸とヤンチャな高槻忍との恋のストーリー『純情テロリスト』。主にこの3つのストーリーが同時進行して、全体として1つの作品になっている。評者は最初このオムニバス形式というものに戸惑いもあったが、それぞれのストーリーが少しずつ絡み合うことでより魅力的に見えている。合うかどうかはおいといて体感してもらいたい。
作者の中村春菊は1998年に商業デビュー。主にBL作品を描いている。本書の『純情ロマンチカ』だけでなく『世界一初恋』という作品もアニメ化されるなど、大人気作家だ。
ここまで読まれた方には注意を1つ。BL作品であるので本作品にもBL描写は出てくる。キスやベッドのシーンは少々ある。そういうのが苦手な方は仕方ないかもしれないが、本作品には過剰なまでのBL描写はない(評者基準)。評者は多くのBL作品を読んでいるが、この作品のBL描写には無駄がないのだ。無駄のない描写だからこそ、特に美咲と秋彦の純愛が際立つ。これから寒くなる中、純愛を堪能して温まってもらいたい。