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【書評】鬼才 狩撫麻礼の作風を、谷口ジローの迫真の画力が完成させる。『青の戦士』

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私が、初めて谷口ジローの漫画を眼にしたのが本作品である。週刊漫画誌で読んだそれは、いきなりの最終回だったが、そのインパクトは強烈であった。
神秘性のある独特の雰囲気を持ったストーリーを、緻密で迫力のある画が下支えをしていた。
最終回だけを何度も読んだ。そして待った。
暫くの後、単行本が刊行され、ようやく物語を最初から読むことが叶った。
ボクシング漫画であるが、原作の狩撫麻礼の持つ異様な世界観が面白かった。
そして、ほとんどセリフも表情も無い主人公「礼桂(レゲ)」を描き切った谷口ジローの物凄さ。
古い作品ではあるが、今でもKindleで読める。

この頃の谷口ジローの画風はかなり劇画的である。
その後の、繊細さを兼ね備え、洗練されていく画とは異なり、ややバタ臭さを感じさせるものであるが、この作品にはこれで良い。

この作品で、谷口ジローだけでなく、狩撫麻礼の存在も同時に知った私は、その後、両者のそれぞれの作品を追いかけていった。
そして、有難いことにこのタッグでの作品も、「LIVE!オデッセイ」、「ナックル・ウォーズ」、「ルード・ボーイ」など、本作だけにはとどまらなかった。
なかでも、「ルード・ボーイ」は私のお気に入りだ。

谷口ジローは、かつてはハードな劇画作品ばかりであったが、その後作風でも画風でも様々な面を見せるようになり、ジャンルを問わず名作を多数残している。
有名なところでは、『「坊っちゃん」の時代』や、『孤独のグルメ』、『犬を飼う』などがあるが、原作付きの作品が多いなか、オリジナルストーリーで展開した『ブランカ』なども個人的には良作だと思う。

一方の狩撫麻礼も多作であり、色々な漫画家と組んでいる。
キーワードは、ボクシング、音楽、放浪。特徴は反体制の姿勢だろうか。
韓国で制作され、その後ハリウッドでリメイクされた映画「オールド・ボーイ」の原作者と言えば、通りも良いかもしれない。

 

青の戦士 (アクションコミックス)