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【書評】人生の師と呼べる人はいますか?『リーチ先生』

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「好いものは好い」日本とイギリスの架け橋になるべく、若くして芸術を学びに来日したバーナード・リーチ。彼の生涯を捧げることになる陶芸との出会いや、日本の芸術家たちとの熱い友情劇などを描いたアート小説。

絵の才能があったものの、学費が払えず芸術の学校に行けれなかった亀乃介は、日本にやってきたばかりのリーチの弟子になる。彼の芸術に対する姿勢や人柄に魅了され、亀乃介は多くの事をリーチから学んでいく。彼に魅了される人は多く、後に日本を代表する芸術家となる若き日の柳宗悦濱田庄司もリーチのもとに度々集まり、芸術について日々口論し、固い友情を築き上げていく。

日本で陶芸と出会い技術を身に着けたリーチは、日本とイギリスの架け橋となるために、亀乃介を連れて帰国する。陶芸の文化など全くないイギリス。まずは土探し、といったゼロからのスタートを切り、徐々にリーチと亀乃介はイギリスに陶芸を浸透させていく。いつしか二人には、師弟関係を超えた固い絆が結ばれていた。関東大震災を機に亀乃介は日本に帰ることになるが、別れても心はひとつ。それぞれの道で陶芸に明け暮れるのであった。

本作品は、亀乃介以外は実在する人物である。実際の陶芸史に沿って話が展開し、芸術家達の芸術論や陶芸品の描写などが巧みに表現されており、芸術に疎い私でも、一度美術館に行ってみたいと思わせる内容であった。

亀乃介は後に、自分の子どもに「リーチ先生に出会えたから陶芸を知った。究めたいと思った。そのためにこそ、私の人生はあったんだ。」と語っている。私にも、一生の師と仰ぐような人ができるのだろうか。

 

リーチ先生 (集英社文庫)

リーチ先生 (集英社文庫)