HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】人が想像できることは、すべて実現できる『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』

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想像してみよう。遠くの世界のことを。
想像してみよう。あなたは火星の赤い大地に立ち、青い夕日が沈むのを見ている。
想像してみよう。あなたは宇宙船の窓から「星月夜」の絵のような木星の渦を間近に見下ろしている。

地球に生命が誕生したのはおよそ40億年前ということがわかっている。
だが、どうやって生まれたのかはわからない。そして我々は地球以外の生命をまだ1つも知らない。我々は40億年の孤独の中にある。

イマジネーションとはウイルスのようなものだ。ウイルスは自分では動くことも呼吸をすることもできない。他の生物に感染し、宿主の体を利用することで自己複製して拡散する。イマジネーションも、それ自体には物理的な力も、経済的な力も、政治的な力もない。しかしそれは科学者や、技術者や、小説家や、芸術家や、商人や、独裁者や、政治家や、一般大衆の心に感染し彼ら彼女らの夢や、好奇心や、創造性や、功名心や、欲や、野望や、打算や、願いを巧みに利用しながら自己複製し、増殖し、人から人へと拡がり、そして実現するのである。

こんな逸話がある。1962年、ケネディー大統領がNASAを訪れた時、廊下にホウキを持った清掃員がいた。ケネディーは視察を中断して話しかけた。
「あなたは何の仕事をしているのですか?」
彼は胸を張って誇らしげに答えた。
「大統領、私は人類を月に送るのを手伝っています!」
なぜアポロが月に行けたのか?その鍵は、政治家の名演説よりもむしろ、現場の技術者の創造性の中にあるのではなかろうか?月を歩いた12人の宇宙飛行士の華やかな活躍よりもむしろ、無名の40万人の泥臭い努力の中にあるのではなかろうか?

もしかしたら現代は、人々がイマジネーションを働かせる余裕に乏しい時代かもしれない。テレビやインターネットやスマホが片時も休むことなく情報を吐き出す。自分から頭を働かせなくとも、生活空間はほんの小さな隙間すら情報で埋め尽くされる。旅先の静かな夜や待ち合わせに遅れた恋人を待つ甘い時間さえ、スマホは余念無く我々の心を情報の鎖で縛り、イマジネーションを働かせる自由を奪う。

イマジネーションは見たことのないものを想像する力だ。
常識の外に可能性を見出す力だ。翼を持たぬ人間が青い空を見上げて飛ぶことを夢見る力だ。目には今存在するものしか映らない。だが、目を瞑り、常識から耳を塞ぎ、代わりに想像力の目をイマジネーションの世界へ向けて開けば、今ないものを見ることができる。現在だけではなく未来も見ることができる。