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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】自分をやめたらどんな景色が見えるのか 『誰でもないところからの眺め』

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舞台は東日本大震災から数年後の宮城県。余震が続き、なんとなく不安を感じながら皆生活している中、少しずつ異変が生じていく。言葉をなくし、記憶をなくし、自分をなくしたら、どんな世界が見えるのか。日本漫画家協会賞優秀賞受賞作。

「なぜ逃げないのか」認知症の父が問う。気にも留めなかったその言葉が、じわりじわりと響いてくる。認知症患者は徘徊を始め、表情がなくなり、もはや別人と化してしまう。では一体誰になってしまうのか。

徐々に変貌していく人々は不気味で目を逸らしたくなるほどだが、自分をなくしていく人々がどう変わっていくのか、どこにたどり着くのか。夢中で読んでしまう。

宮城県で描き続けている作者が、震災後にどんなことを思ったのか。ほのぼのとした作風の「ぼのぼの」で有名な作者だが、それとは一変し日常をシリアスに描いた作品だ。

自分が人間であることを意識する、不思議な感覚になる一冊。いがらしみきおワールドをぜひ体験してみて欲しい。

 

誰でもないところからの眺め

誰でもないところからの眺め