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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】著者は作品に自身の何を投影したのだろうか『トラペジウム』

本作品はアイドルを目指す女の子の物語だ。女の子の名前は“東ゆう”、彼女はアイドルになるという自分の夢を叶えるため、変わらない日常を勇気を持って抜け出した。

きっと同じ志を持っているだろう仲間が増え、絆を深める機会があり、そしてチャンスが訪れる。物語の表面をなぞるとアイドル志望者の爽やかなサクセスストーリーに感じるが、実は打算と軌道修正の繰り返しで組み立てられた実行計画だ。東ゆうの頭の中には常に攻め所と引き際の線引きがされている。

アイドルの触れたくない部分に触れてしまった印象を受けるのは、作品の主人公である東ゆうと著者自身の相乗効果かもしれない。何か1つの成功を手にするためには、きっと打算や見通しを立てることは必須なのだろう。少なくとも受験や部活、仕事においても偶然だけで走りきれるサクセスストーリーはあり得ないはずだ。

ありきたりなストーリーとそこに交差する思考と打算、そこから感じられる危うさが本作品の魅力だ。命を脅かす大事件が起こるわけではないが、読み進めるうちになぜかハラハラする。終盤では予想していた一つの着地をするが、“予想通り”という一言では済まない何かが胸に残る。アイドルを目指す一人の女の子の物語をぜひ手に取ってほしい。 


トラペジウム

トラペジウム