本書には大人であることに苦しんでいる人に向けた人達へのメッセージが込められている。嫌なことは思い切ってやめてしまおうということ、それで周りに大きな迷惑がかかるのはただの思い込みだということ、至ってシンプルな主張だ。ただ、現実には行動に起こせずに苦しんでいる人はとても多いだろう。
“家事をしないと旦那さんに嫌な印象を与えてしまうかもしれない”
“仕事は辛いけど迷惑をかけるわけには行かないから会社は休まない”
“親は自分の都合よりも育児を第一に考えるべきである”
本書ではこれらを“思い違い”とバッサリ切っている。
本書で特に印象深かったテーマは育児についてだ。より私事と重ねることができた分、共感や気づきがあり、同時に救われた。たとえ実の子供でさえも、自身の関わりたいように関わればいいのだ。どんなに子供のことを考えて実行しても、子供からの親への不満は色や形を変え出てくるものなのだ。できないことを完璧にしようと心身の消耗戦に走るよりも、自身の関わりたいようにすることが余程健全だ。いつか子供から不満の意思が向けられた時に、しっかり向き合うことができればいい。
小さな頃から人は一人では生きていけないと教えられてきた。本来の意味はどこかに置き去りにされ、大人になるといつの間にかその言葉は“世間体”や“思い込み”という、ぐるぐる巻きの鎖にすり替わっている。本書はその鎖を断ち切り、あらためて本来の生き方とすべきではない事の間に一本線を引いてくれる。自身のしたいことと誰かにしてあげたいことの優先順位がつけられない、そんな優しい人こそ本書を手にしていただきたい。
- 作者: 小田桐あさぎ
- 出版社/メーカー: WAVE出版
- 発売日: 2018/04/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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