“80年後のある日、あなたが100歳、私が134歳になり、私たちがみなうんざりするほどやさしく、愛情たっぷりになったら、私に短い手紙を書いて、あなたの人生がどうだったかを教えてください。とてもすばらしかったよ。とあなたが書いてくることを願っています。”
著者のジョージ・ソーンダース氏が大学の卒業式で行ったスピーチの一部です。
読者の皆さんなら、これから社会に出る卒業生に対し、どのような「はなむけの言葉」を贈りますか。
著者は自身の人生を振り返って、自分が経験してきたことを卒業生にユーモアたっぷりに説明します。
貧乏をしたこと、好きな子の前で恥をかいたこと、特殊な仕事に就いたことなど、様々なことがあり、その中で「自分が本当に後悔していることは何だったのか。」を振り返るのです。
それは、著者が小学7年生のとき、転校してきた少女がイジメにあい、再び転校していったという経験です。
著者は少女がイジメにあい、侮辱を受け、深く傷ついていること、自分の居場所が無いと感じていること、できることなら消えてしまいたいと思っていることを理解していました。
著者はその子に対して、からかうこともせず、時にはかばったりしたこともあったそうです。
他の同級生よりも、その子に親切に接したそうです。
そして、少女の一家は引っ越していきました。
著者は、その時のことが気になって、未だに心から離れないそうです。
42年経った今でも、その時のことが頭から離れないと言うのです。
「わたしが人生でもっとも後悔しているのは『やさしさがたりなかった』ということです。」
他の同級生よりも親切に接しましたが、それでも後悔しているというのです。
54年間生きてきて、沢山の悲しいことや苦しいことを経験してきたのにも関わらず、人生で最も後悔していることは、その時のことであるというのです。
「目の前で苦しんでいる人がいる。そのときにわたしはどんなふうに応えたのか・・・」
大学を卒業し、社会に出ると多くの競争にさらされます。
若い人々は自身が抱えている不安や恐れ、自信の無さに苦しむこともあるかもしれません。
そして、それらは十分に成功し、お金、名声を手にすることで解消されるという間違った思い込みを持ち、生きていく人もいるかもしれません。
著者は自分が大学を卒業してからずっと、成功に固執し、「やさしいひと」になることを後回しにする生き方をしてきたと伝えています。
そして、人生を振り返ると、「やさしいひと」になること以外のことはあまり意味がないと言うのです。
野心を満たすことと同時に、なるべく「やさしさ」から遠ざからないように生きるべきであり、人生は成功よりも「やさしいひと」になることの方に意味があると伝えています。
成功することと同じくらいの思いで、「やさしいひと」を目指してみてはいかがでしょうか。
「人生は、とてもすばらしかったよ。」と言うために。
この本は、自分の過去を振り返りながら、2回、3回と繰り返し読むことをおすすめします。