アベック、メッチェン、おかちめんこ、スットコドッコイ、アミ、話がピーマン、人三化七。これらの俗語は過去に日常的に使われていたが消えて行った言葉である。本書はこれまでに失われて来た俗語をまとめた辞典である。
なう、おこ、それな、ワンチャン、すこ、りょ、あーね、とりま、かまちょ、エモい。現在よく使われている俗語はこのようなところだろうか。俗語とは改まった場では使えない、話し言葉であり、隠語などを目的として作られる。
また、俗語は時代とともに大きく変化することがある。1つ例をあげよう。
H(エッチ、エイチ)
①男同士の疑似性行為
②夫(husbandの頭文字)
③変態(hentaiの頭文字)
④性交
現在では主に④の意味でしか使われないであろう。しかし、もともとは①の意味から始まり、「私のH(夫)は〜」などと、日常的に使用されていた。タイムスリップすると大変なことになるだろう。
また、現在の俗語と比べて消えた俗語は知的な様子もかなり感じられる。以下の会話を引用してみよう。
「あいつの講義ピーマンで、全くいやんなっちゃうよな」
「そうそう、おまけにキュウリだろ」
「ほんと、トマトもいいとこ。ボクたちの方がよっぽどセロリだよナー」
説明しよう!。
話がピーマン→話に中身がない。
話がキュウリ→話が長い。
話がトマト→中身がぐちゃぐちゃ。
話がセロリ→話の筋が通っている。
この時代の俗語の知的さが感じられるだろう。ドイツ語やフランス語などからもじったり、知的な俗語が大量に作られている。評者が使っていた思いつく限りの知的な俗語は「与謝野っている(髪が乱れている)」くらいしか思い出せない。
さて、本書は俗語の辞典であるが、全ての言葉に語源、言葉の移り変わりが記載されていて、その時代の若者文化を垣間見ることができる。また、俗語の成り立ちについても分類考察がなされている。是非、読みながら√8(=2.828…)していただきたい。ではキュウリでトマトでピーマンな書評を終えさせていただこう。