本書は、「人を動かす力を持つ文章を書く」
ことを目的とした本であり、文章を読んだ者が物の見方を変えたり、インスパイアされるような文章を最終目標としている。また、本書では、文章が上手いか下手かは関係なく、人を動かすことができる文章か否かが重要だとしている。
著者は、ベストセラー『声に出して読みたい日本語』、『雑談力が上がる話し方』の著者で、明治大学文学部教授の斎藤孝氏だ。
本書の前半で「これは使える!」と思ったのは、他者の文脈をつなぐ訓練である。大学の先生やテレビの解説者などの話をメモし、その後文章にまとめるといった訓練だ。これだけだと文字起こしを想像するが、そうではなく、順番を入れ替えて論理的にスッキリさせたり、本題と関係ない部分を削ったりして文章にしていくのである。
この訓練を行うことで、ある程度の量や内容のある文章を書けるようになる。普段あまり文章を書き慣れていない方は、ここから始めると良いだろう。
次に面白いと思ったのは、ネタ出しとキーワードを整理した後、最初から文章を書き始めるのではなく、ゴールから書き始める、つまり、最後の文章を決めるというところだ。私も文章を書いていて、文章の流れがあっちに行ったり、こっちに行ったりで、何を書いているのか分からなくなってしまうことが多々ある。しかし、最後の文章を決めてしまえば、少しくらいフラついても、あらかじめ結論が分かっているのだから、書き進めることができるようになる。
ところで文章を書く場面にはどういったものがあるだろうか。会社や学校で必要に迫られてということがほとんどだろう。仕事における文書やメール、学校に提出する感想文や小論文などだ。
これらに関連するところでは、本書の第3章から第5章で、企画書や稟議書、あまり書きたくないが謝罪文や始末書、小論文、就活の自己アピール文、さらには伝わるメールなど、ビジネスマンや学生向けの文章術の説明がある。
現代においては、文章力が日々求められている。私の場合、仕事でメールを書くことが多いのだが、文章を書くのが苦手で、自分の文章力のなさに悩んできた。しかし、本書を読んで以降、人を動かす文章はまだ書けないが、見聞きした話をメモして新たに流れを構築し、独自の視点で文章にする力が少し身に付いたと思っている。
そういった私の経験から、今まで文章を書くことが苦手だったが、これから自らのアウトプットのために文章を書いてみたいという方に本書をおすすめしたい。上で説明した他者の文脈をつなぐ訓練が役立つはずだ。もちろん、人を動かす文章を書くために、独自の視点や文章の思考法など、ワンランク上の文章力を身に付けたい方にもおすすめしたい一冊である。