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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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今までの常識をくつがえす 『子育て支援と経済成長』 著者 柴田 悠 (朝日新書、2017/2/13)

社会保障は国の財政にとってはお荷物であり、経済成長にとっては足かせになる。これが今まで、暗黙の前提であり、常識とされたものだった。しかし、本書によって、その常識もくつがえされるのかもしれない、特に子育て支援においては。

本書は、2016年に勁草書房から出版された『子育て支援が日本を救う』を、最新の知見を新たに紹介しながら、分かりやすく噛み砕いた本である。著者は、京都大学准教授の柴田悠氏だ。通常、子育て支援の分析というと、子どもの健全な発達、親の健全な子育てに対して、親への支援を含む保育サービスなどの子育て支援政策が、どのような効果を持っているか分析するところだが、本書の面白いところは、子育て支援の副次的な効果を分析したところにある。

著者によると、「子どもの健全な発達を支援し、またそのために、親の健全な子育てを支援する」といった子育て支援本来の目的を前提に、「子育て支援がどのような経済効果をもたらすのか」や「政府の財政にどのような影響があるのか」といった子育て支援の副次的な効果を分析したとのことだ。そして、どのような分析結果が得られたのかというと、何と、今までの常識をくつがえしうる分析結果が得られたのである。

社会保障の政策の一部、特に子育て支援は、経済成長率を引き上げたり、財政を改善したりするという可能性が見えてきたのだ。さらには経済成長だけではなく、労働生産性を上げる、子どもの貧困を減らす、自殺を減らすなどの分析結果も得られたのである。

社会保障がお荷物扱いされることがなくなり、困っている人たちを助けるための政策が、国の財政を良くする。本書は、常識によって見えなくなってしまった日本の未来を、もう一度、想像するために必要な一冊だと言える。