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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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居酒屋にジム、露天風呂まである!!『南極建築1957-2016』

『南極建築1957-2016』石沢賢二, 半貫敏夫, 笹原克, 白石和行, モリナガ・ヨウ
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最低気温記録は-89.2℃、97%は氷に覆われている南極大陸
そんな過酷な環境で建築はどのように行われるのか、また人々はどんな生活をしているのか。
本書は、日本初の南極建築が誕生した1957年から2016年までの建築、住環境を紹介した南極本である。

日本初の南極建築では多くの問題点があった。
建築規模は物資を運ぶ船の大きさで決まる。また、素人が夏の期間(2か月間)で建築しなくてはならない。さらに、南極の環境での建築データがなく、建築地の気温、風速、積雪量、建築場所が氷上なのか、地上なのか雪上なのか、岩盤上なのか、全く情報がない状態だった。
そんな中選ばれたのが、プレファブ建築だ。
プレファブ建築で作られた一人2畳の個室で第一観測隊の南極観測は始まったのだった。

そして、2016年現代の南極建築は大きく進化している。
最も大きく生活が変わったことは水が手に入るようになったことだ。
従来、南極には雪はあるが水はなかった。
しかし、今では二つのダムがあり、ダムの中に積もった雪を溶かして使用している。
そして、24時間入れる男女別の大浴場までできた。
ストレスがたまる生活で、まず風呂を作るというのが非常に日本人らしいと思う。
また、日本人らしさといえば、観測隊は毎年、廃材(ドラム缶、ボンベなど)を使って除夜の鐘を手作りするそうだ。
日本から遠く離れた地であるからこそイベントごとは大事だという。

本書で、最も面白いことは、とにかく試行錯誤し、何でも自分たちでやり、何でも自分たちで作ることだ。
現場での建築では、配合が上手そうだという理由で医者がコンクリートと水を配合し、地質学者がくぎを打つ。露天風呂に入りたいと思えば、ビニールシートで外に風呂を作る。
助け合い、生活をするために仕事をする。
ここに、人間の営みの根源的な面白さがあるのではないだろうか。