著者が、三年に一度開かれるピアノコンクールに4度も取材をし、12年もの歳月を掛け書き上げたとされるこの作品。
ピアノを愛する人、いえ音楽を愛する全ての人の心を打つ物語だ。
書店でこの本を手に取るとその分厚さに躊躇するが、一旦読み出すと、頭の中に音楽が流れ、自分が審査員となりその場にいるような錯覚に陥る。
文章が音を奏でられるのだということを、この作品が証明してくれている。
そして、もっと聞きたい(読みたい)という思い駆られ、分厚さが物足らなくなるほど、あっという間に読み進められる。
自分の奥底に眠っている感性が、文章とともに蘇る感覚が心地良い。
装丁も美しく、本棚にある宝物となる一冊だ。