HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】「量子コンピューターの最先端に躍り出た日本。産官学を交えた国家間の駆け引きが繰り広げられる」『タングル』

量子コンピューターの最先端に躍り出た東都大工学部の早乙女研究室。国を跨いだ産官学プロジェクトにシンガポールと日本の両政府とその恩恵に預かろうとする投資家、企業のそれぞれの思惑が交錯する。

この本のテーマである光量子コンピューターは、今注目されている次世代の技術で、量子コンピューターの中でも室温で動作し、小型化が期待できるため、現在世界中で激しい開発競争が繰り広げられている分野である。実際に今年に入って大きな前進があったらしく、この小説もフィクションではあるものの、その事実に沿ったかなり事実に近い内容になっている。

私がこの本を知ったきっかけは、Voicyの荒木博行のbook cafeでの『失敗する自由が超越を生む』という対談だが、そのエピソードを聞くとあなたも読みたくなるはずなのでぜひこちらも聞いて欲しい。
https://voicy.jp/channel/794/679505

主人公の一人であるで東都大の早乙女教授のモデルになっている東京大学工学部 吉澤教授のキャラクターはかなり近いらしく、本業はフリークライミングで研修は趣味といっているユニークな研究社で非常にアクティブで魅力あるれる人らしい。話の中でもフリークライミングの最中に新たな解決策を思いついたり、趣味と仕事が互いに良い効果をもたらしているとのことらしい。研究室の他のメンバーもゲームのプログラミングをしながら研究結果をまったりと趣味と研究を織り交ぜている様が面白い。

また、職人を口説き落とすまでの忍耐強いプロセスも実際の仕事でも役立ちそうなエピソードだなと感じた。

あとがきにあるが、この話のきっかけは、シンガポール政府からシンガポールを舞台にした小説を書いて欲しいというオファーが来たことがきっかけだったと書いてあるが、シンガポール政府観光局など現地の方々のサポートを主に制作され、シンガポールという国が抱える課題にも切り込み、現地の関係者にも好評だったという。

今まさに現在進行形で繰り広げられている次世代の技術競争なので、この小説を読んだことをきっかけに、今後の量子コンピューターの動向がますます気になり目が離せなくなった。日本がこの分野で世界を先駆けいち早く実用化して活躍することを期待したい。ここまで読んで気になったあなたは、ぜひこの小説を読んでみてください。

著者:真山 仁
発行所:株式会社小学館

 

 

【書評】『国宝(下) 花道篇』 - 壮大で孤独な芸術人生

皆さんこんにちは。下巻『花道篇』では、喜久雄が三代目花井半二郎として名を馳せてから晩年までの道のりを追います。彼は先代の実子である俊介との関係を再構築し、後進の育成にも尽力する中で、芸の完成度を極めていきます。しかし、彼の周囲で起こる悲しい出来事や彼自身が経験する精神的な孤独は、彼の芸をさらに磨き上げる要因となります。

シリーズを通じて、喜久雄の芸術的な成長と人間としての深い孤独が巧みに描かれています。彼が何を得て何を失ったのか、読者に想像の余地を与えています。物語の地の文は巧妙で、読者を引き込む力があります。それは、我々読者に静かに語りかけるように登場人物の心情を深く掘り下げ、彼らの選択が持つ重さを感じさせるからです。

さらに興味深いことに、『国宝』は2025年に映画化される予定であり、主演には人気俳優の吉沢亮が起用されています。吉沢亮がどのように喜久雄の複雑な内面と壮大でストイックな芸術的人生を表現するのか、多くのファンが期待しています。(美しさ、という点では心配いらないでしょう。)
映画化により、喜久雄の物語がより広い観客に届くことで、『国宝』シリーズの魅力が新たな形で再評価されることでしょう。私も公開が楽しみです。

 

 

【書評】40年読まれているマネージャー教科書『マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識』

マネージャー・管理職の名著と言われているものは多いが、その中でもなかなか長年読まれて続けている本の一つが本書だろう。マネージャーはどのような視点で仕事をするべきかが一冊でわかる名著だ。

 

本作はマネージャーのための本で、アメリカで書かれたものだ。そのため、内容としては少し日本と異なるところもある。例えば、従業員をクビにするかどうかという話も出てくるからだ。それを抜きにしても本書は名著だ。

 

どこにでも存在するマネージャーがぶち当たる問題が、一通り乗っているのが特徴だ。プレイヤーからマネージャーに変わった時には、自分が元々やっていた仕事に力を入れてしまうこと、友達が部下になった時、擦り寄ってくるもの、足を引っ張るもの。マネージャーにはいろんな問題が起こるだろう。そんな時に参考になることが載っている定期的に読み返すとその時に応じた発見もあるだろう。

 

マネージャーというのは業界や世界関係なく普遍な業務内容だ。海を超えて来た名著是非読んでおこう。

 

 

【書評】吉田修一『国宝(上) 青春篇』 - 挑戦と成長の物語

皆さんこんにちは。吉田修一の『国宝(上) 青春篇』は、歌舞伎という伝統芸能の世界を背景に繰り広げられる、若き歌舞伎役者・喜久雄の成長物語です。物語は長崎でのヤクザたちの新年会で組長が亡くなる事件から始まります。この事件で父を失った主人公・喜久雄は、その場に居合わせた人気歌舞伎役者・花井半二郎の元で面倒を見てもらうことになり、彼のもとで歌舞伎役者としての厳しい修行を積むことになります。

喜久雄は才能を開花させ、半二郎が怪我で舞台に立てなくなった際、彼の代役として選ばれます。しかし、この出来事がきっかけで、半二郎の実子である俊介が行方不明になるという大きな転換点を迎えます。その後、喜久雄にも不遇の時期が訪れ、半二郎の死去や支えてくれた梅木社長の失脚など、彼を取り巻く環境が一変します。

この物語は、喜久雄がどのようにして自己のアイデンティティを確立し、逆境を乗り越えるかを描いています。10年ぶりに俊介との再会を果たした喜久雄が、「ここから這い上がるんだ」と決意を新たにするシーンは、彼の精神的な成長が大いに感じられる瞬間でした。

まだ読んでいませんが、『国宝(下) 花道篇』では、襲名を終えた三代目半二郎としての喜久雄が再び歌舞伎界のスターダムを駆け上がる姿を期待します。彼のこれからの旅は、まさに「這い上がる」物語の具現化となるでしょう。

 

 

【書評】21分で読む橋本佐内の哲学 - 『いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ21『啓発録』』

皆さんこんにちは。「いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ21『啓発録』」は、幕末の志士である橋本左内が15歳の時に著した『啓発録』を現代語に訳したものです。橋本左内吉田松陰西郷隆盛など、幕末の志士にも多大な影響を与えた英傑であり、その思想と行動は日本の近代化に大きな影響を与えました。しかし彼の生涯は26歳という若さで終わりました。その短い生涯の中で彼が残した『啓発録』は、その思想と哲学を今に伝える重要な資料となっています。

『啓発録』は人生をどう生きるべきかの根本となる内容が書かれています。これは、自己啓発や人生観を深めるための一冊として、多くの読者にとって価値ある読み物となるでしょう。また、橋本左内が幕末の志士に与えた影響を考えると、その思想は日本の近代化にも寄与しています。その意味でも、この本は日本の歴史や文化を理解する上でも重要な一冊と言えるでしょう。

さらにこの本は全文をとことん読みやすくし、『啓発録』を21分で読むことができます(20代30代10人平均値)。このような読みやすさは、現代の忙しい生活の中でも手軽に読むことができ、日々の生活の中で少しずつでも人生観を深めるきっかけになります。また、古文を現代語に訳すことで、橋本左内の思想をより直感的に理解することができます。

 

 

【書評】「そこら辺のオトコよりオトコマエ!!」『成瀬は天下を取りに行く』

周りに左右されることなく、自分を貫いて我が道を行く。そんな男顔負け、オトコマエな女子、成瀬に男も女もホレる!

幼馴染で変わり者の成瀬が「島崎!私はこの夏を西武に捧げようと思う!」と突然変なことを言い出したのをきっかけにストーリーが始まり、
成瀬の幼馴染、同級生など周辺の人たちのそれぞれのストーリーが互いに西武大津店という接点を軸に展開していく。
どのエピソードにおいても圧倒的な異彩を放つ成瀬あかりの存在感が半端ない。

成瀬を応援する人、憧れる人、好意を持つ人、関わりを避け、距離を置こうとする人、それぞれが、否応なく破天荒な成瀬に巻き込まれていく。

自分の地元にも西武百貨店があったことや百貨店の閉店という時代の変遷にノスタルジーを感じ、もしかしたら自分の周りでも成瀬みたいな人が居たのだろうかと思いを巡らせた。
自分にはとてもマネできないなと思いつつ、もし自分が成瀬あかりようなブレない人だったらどんなだろうかと想像し、色々考えてしまった。

それぞれのエピソードもどことなく懐かしく、親しみの持てる感じがして一気に引き込まれた。
小説を読む機会があまりない人でも面白くて読みやすいストーリーだと思うのでぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。おススメです--

出版社 ‏ : 新潮社 
発売日 ‏ : 2023/3/17
著者 :宮島 未奈

 

 

【書評】テクノロジーからライフスタイルまで - 『2040年の未来予測』

皆さんこんにちは。成毛眞さんの「2040年の未来予測」は、独自の視点でテクノロジー、経済、衣食住など、さまざまな側面から2040年の未来を探求しています。章が細かく分かれているため、非常に読みやすく、各トピックに対して深く掘り下げることができます。

成毛さんは、5G、空飛ぶクルマ、ゲノム編集技術など、未来のテクノロジーがどのように私たちの生活に影響を与えるかを詳細に描写しています。これらの技術が進展することで、私たちの生活はどう変わるのか、興味深い洞察が提供されています。

一方で、この本は気候変動や少子高齢化などの避けられない課題にも目を向けています。これらの問題が未来の経済にどう影響するのか、そしてどう対処すべきなのかについて、深い議論が展開されています。

未来のライフスタイルにおける衣食住の変化も考察されています。持続可能な食料生産や、マンション価値の下落、ハザードマップの重要性などが取り上げられています。
また、アフリカがファッションの目玉になるという予測は、世界のファッション業界における新しい動向を示しています。

「2040年の未来予測」は、未来への楽観的なビジョンと現実的な警鐘のバランスが取れた一冊です。(成毛眞さん自身は、「結構暗い内容」と語っていますがテクノロジーの未来予測にはワクワクさせられました。)
未来は不確実ですが、この本を通して、未来の可能性と課題について深く考える機会を得ることができるので、ぜひお読みいただきたいと思います。

 

 

【書評】ビル・キャンベルの遺産 - 『一兆ドルコーチ』

皆さんこんにちは。
僕の好きな漫画の一つに「トリリオン・ゲーム」があります。今日はそっちではなく「1兆ドルコーチ」という本について記事を書きます。原題は「Trillion Doller Coach」。

ビル・キャンベルは、AppleGoogleIntuitなど、シリコンバレーの巨人たちを指導したことで知られるビジネスのコーチです。彼の影響は非常に大きく、その価値は一兆ドル以上とされています。本「1兆ドルコーチ」は、彼のコーチング哲学とリーダーシップ原則をまとめたものです。この記事では、ビル・キャンベルの考え方と、それが現実のビジネス世界でどのように役立つかを探ります。

キャンベルは、「ポジティブな人間の価値観はポジティブなビジネスの成果を生み出す」という考えを持っていました。彼はリーダーが従業員を大切にし、尊重し、自己実現するための環境を提供することで、従業員はより一生懸命働き、新しいアイデアを生み出し、仕事に満足感を得ると考えていました。

彼の哲学の中核は、組織の基本的な構成要素は個々の人間ではなくチームであるという信念です。キャンベルは、リーダーがコーチのように行動し、チームを強化することで、組織はより生産的で革新的になり、従業員は幸せになると主張しています。そしてリーダーシップを自己中心的なものではなく、チームへのサービスと捉えています。

さらにキャンベルは信頼を成功の基盤として強調しています。彼は「心理的安全性」という概念を用いて、従業員がリスクを取り、新たなアイデアを生み出すことができる環境を提供する重要性を説明しています。彼は、従業員が互いに信頼し、サポートし合える環境があれば、生産的な議論が行われ、より良い意思決定が可能になると信じていました。ビル・キャンベルは2016年に亡くなりましたが、彼の管理原則はGoogleなどで引き続き教えられています。

シンプルに言えば、ビル・キャンベルの哲学は、人々を大切にし、チームを重視し、信頼を築くことで、組織が成功を収め、従業員が満足する職場を築くことができるというものでしょう。

 

 

【書評】練習嫌いの人必見!『練習ナシで「100切り」達成!ゴルフの練習は無駄!!〜「知識でハック」するゴルフ術〜』

本書は、ムダを徹底的に嫌う超合理主義者の堀江 貴文氏が、プロゴルファーの武市 悦宏氏と共に書き上げた、タイトルからして攻めたゴルフ上達本である。果たして本当に練習しなくてもゴルフが上手くなるのだろうか?

私も職場の付き合いで少しゴルフをやるのだが、ゴルフ上達のコツと言えば、鉄板のものは幾つかあるものの、人によって言うことが全く違うので、迷走した経験がある人は多いだろう。
クラブの握り方やスイングのフォームなど、どれを選択するかは人によって相性があるのも事実である。本書に書かれた内容も、それら数ある説の中の一つとして捉えるくらいで読み始めるのが良いかもしれない。

「ひたすら反復練習を繰り返さなければ上手くはならない」。そんな常識を疑うところから本書は生まれたという。
本書では、間違った知識で闇雲に反復練習をするよりも、しっかりした論理と知識を座学で学び、それらを実践することを推奨している。

具体的なコツの詳細までは敢えてここでは記述はしないが、自分に合った道具の選び方から、知っているだけでスコアが変わる、ラウンドですぐに使える知識や、飛躍的に飛距離を伸ばせる「ツイスト打法」の打ち方など、思わず実践したくなる内容ばかりである。

しかも、写真と図解で分かりやすく解説していることに加えて、解説動画が視聴できるQRコードも掲載されている。う〜ん、親切である。

自分のスコアに不満があり伸び悩んでいる方は、Kindle Unlimitedの読み放題でも読むことができるので、練習ゼロでもスイングを上達させる!と豪語する本書を一度試してみるのも良いのではないだろうか。

 

 

【書評】日本酒を海外で流行らしに『社外取締役 島耕作(4)』

課長、部長、取締役、常務、専務、社長、会長、相談役、社外取締役となった島耕作シリーズ。現在は数社の社外取締役を行なっている島耕作だが、今回は日本酒を広めにニューヨークまで行った。かなりの年齢だがまだまだ働く島耕作だ。

 

喝采という名の日本酒を広めるためにニューヨークまで行った島耕作。さすがなところは偶然現地の大きな飲食チェーンの社長の目に留まり、社長が主催する業界のパーティに喝采を振る舞わせてもらえることになる。

 

アメリカではアルコールのうち0.5%しか日本酒は飲まれていない。高所得者は知的好奇心が高くなんでも試すが、そうでない人は飲むことがない。日本酒は香りが控えめだし、味も薄い、アルコールは高い、好まれない。

 

そこでまずはブランディングを高く富裕層向けに売り出す。日本酒専用セラーをプレゼントすることでリピートさせるやり方は勉強になった。

 

島耕作もなかなかの年齢だ。しかも作者と同い年の設定だ。いったいいつまで働くのだろうか。