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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】こうして僕らは人間関係で「だまされ」るんです。『残酷すぎる人間法則 9割が間違える「対人関係のウソ」を科学する』

 さて、これをお読みの皆さんは、人間関係についてどのような考え、あるいは信念を持っているだろうか?そして、その信念は、どのように形成されてきたのだろうか?ちょっと振り返っていただきたい。よろしいだろうか?その信念を頭の片隅に持ちながら、この書評を読んでいただきたい。本書は、人間関係について多くの人間が犯しがちな「ミス」や「ウソ」をぶった切る本である(タイトル通り)。僕は、この本を読んで「は?」と思ったことが何か所もある。多くの本やインターネットサイトが勧めているあの行為が、実は自滅の足跡を残したり、多くの人がどれだけ人間関係で自分の能力を過信しているかがよくわかる。それを今回は紹介しよう。

 そもそも、前提として、僕たちは元来、相手の立場に立って考えることがかなり苦手な動物なのだ。どのくらい苦手かというと、人間の感情読み取り能力の精度は、何と20%~35%なのだ。まぁ、これは僕の感覚にも合致する。実際に僕は、人の感情なんて言ってもらわないと分からないと、前妻や元彼女に豪語して怒らせてきた人間だ。確かに、感情なんてわからない。実際に、パートナーの自尊感情を予測してもらう実験では、精度が44%となっている。しかし、人間がお粗末なのはここからで、自分の評価の正確性を自己評価してもらうと、何と多くの人が「82%正しい」と思っているのだ。なのに、実際の精度は、その半分ほど。相手の感情に関しては、40%もいかない。このような意味で、自分の能力を過信している。ちなみに、能力が低い人ほど、自分の能力を過信する心理効果として、「ダニング・クルーガー効果」があるので、これとも関係しているのだろう。何とまぁ、お粗末で恐ろしい。僕は、寒気がする。

 また、よく勧められるあの行為にも触れておきたい。「傾聴」である。多くの人は、人の話を丁寧に聞く傾聴が大切で、まずは相手の話を聞きましょうと教わるし、そのようにアドバイスされる。特に、夫婦関係だとそうだ。「傾聴しましょう」と勧められる。実は、この「傾聴」、何と家族には効果がないのだ。これは、本書の冒頭に書かれている。言い換えれば、傾聴が効果的なのは、誘拐犯やテロリストと話す交渉人や、相手の問題を第三者的にみられるカウンセラーなのだ。これを裏付けるデータも出ている。心理学者のゴッドマンは、夫婦セラピーを受けた人たちを追跡調査した。その結果、関係を修復できたカップルは、何と18%~25%に過ぎないというのだ。僕を含めて、多くの人が間違えているではないか!何てことだ!では、どうしてなのだろう?まず、傾聴は効果が短期的なのだという。つまり、一時はおさまっても、再び再燃する。言い換えれば、解決した気になっているのだ。また、次の推測もできる。傾聴は、相手の話を聞くという行為から、常に一方的なコミュニケーションとなってしまう。すると、片方の考えしか分からず、お互いの透明性が確保できない。基本的に、人間関係は、自己開示によって深まるという研究データも出ているので、それを鑑みると、傾聴が限定的なテクニックであることは容易に想像がつく。

 この本は、人間関係に悩んでいる人なら、うってつけの本だ。この書評には書ききれなかった、役立つ知識が、多く載せられている。この本に共通して言えるのは、「人生の幸福度を決めるのは、人間関係である」というメッセージが込められていることだ。ちなみに、この理論にも例外はあるのだけれど。著者のエリック・バーカーは、以前にも『残酷すぎる成功法則』という、科学低位な自己啓発本を書いた。論文に基づいているので、下手なサンプル数1の本を読むより、役に立つだろう。しかも、論文を使って常識を切り刻んでいくのが爽快だ。

 さて、最初の話に戻ろう。冒頭で思い出した、あなたの人間関係の信念は、どのように変化したのだろう。ちょっと変化した人は、本書を手に取ってみるといい。きっと、他にももっと多くの考えが変わるだろう。ピンとこなかった?なら、まずは本書の第1章を読んでみよう。それから自分の考えがどうなるか、観察してみると、何か起こるかもしれない。

参考文献
エリック・バーカー(2023)『残酷すぎる人間法則 9割が間違える「対人関係のウソ」を科学する』橘玲(監訳) 竹中てる実(訳) 飛鳥新社

 

 

【書評】商売人の気遣いが学べる 『ビジネスで大切なことはみんな吉祥寺の焼き鳥屋で教わった』

著者は、27歳まで定職につかなかったばかりか多重債務をこしらえた社会的落伍者。
そんな駄目人間は、結婚を機に心を入れ替えて不動産業界でがむしゃらに働きだした。
著者がこの業界を選らんだ理由は、不動産が好きだったからでも知識、知縁があったからでもない。
高収入を得られる業界を取捨選択した結果、残った業界だったからである。

高卒、資格も実績もない新入社員。新人に対して丁寧な指導がない業界で、先輩社員と上手に折り合いをつけて数年でトップ営業マンにのし上がった。
著者の大きな助けとなったのは、父親が営んでいた焼き鳥屋を手伝っていた経験だった。

飲食店がひしめき合う吉祥寺駅周辺。激戦地で父親が35年間繁盛店を維持できたのには理由があった。
提供する食品やドリンクの原価率の管理はもちろん、来店者が居心地いいと感じる雰囲気づくり。もしくは、来店して欲しくない人への見極め及びお断り。
常連さんをつなぎとめるに役立つ旅行や競馬場ツアー。年末の大掃除まで恒例イベントにすることで常連さんを巻き込みファンを獲得していた。

この本は、小さな駅前の焼き鳥屋の大将が店を繁盛させるために考え抜いた数々の接客ノウハウが書かれている。
著者が店の手伝いをしていたのは幼少期から中学生の頃。
当時は「そういうモノか?」と思っていたことだが、社会経験を重ねるにしたがい、大将の意図が見えてきた。大将が実践していた気遣いを顧客や同僚とのコミュニケーションに活用することで、収入を増やし社会的にも成功を収めることができた。

大将の商売人としての才覚、客への気遣いの奥深さに膝を打たずにはいられない。楽しく学べる良書である。

『ビジネスで大切なことはみんな吉祥寺の焼き鳥屋で教わった』
作  者:玉岡一央
発売日:2023年3月28日
メディア: 秀和システム

 

 

【書評】幸せの秘訣は「病院」より「美容院」、『百年人生を笑って過ごす生き方の知恵』

著者は80歳のおばあちゃん。
しかし、ただのおばあちゃんではない。営業時代の成績はトップ。
42歳で起業したPR会社は東証一部に上場。
重責を退いたあとは、“愛あるおせっかい”を日本に広めるために「おせっかい協会」を設立。自宅のタワマンから全国にFMラジオやクラブハウスで発信を行っている。
また、第一級障碍者手帳の持ち主であるが、講演依頼を受ければ日本全国は元より海外まで出向いて、おせっかいの素晴らしさを広めている。

順風満帆、完全な成功者に見える著者であるが、戦後の幼少期は一家心中直前までの不遇な経験をしている。また、営業の仕事で成果をあげた影でも多くの辛い思いを経験したという。
逆にいえば、「酸いも甘いも嚙み分ける」=「人生のフルコース」を味わってきたからこそ幸せに生きるノウハウに気付いたのである。

この本で気になった部分をいくつか抜粋したい。

「人生はなるようにしかならない、であるなら楽しむ」
そもそも、人生はコントロールできるものではない。
であるなら、面白いと感情が動くことに挑戦するのがよい。なぜなら、岐路に立たされてもワクワクした気持ちで困難に立ち向かうことができるから。

「石橋を叩く前に渡り切る」
著者は「お金がないのにPR会社を起業」、「無謀といわれる大会社に売り込み」、「経験もないのにTVドラマの脚本を手掛け」、「おせっかいを広めるために商業出版」。
立ち止まって熟考するより、さっさと渡ることをすすめている。
前に進むことで新しい景色が見えて思わぬ妙手を見出すきっかけを得られるという。

「恋人の値踏みはブーメラン」
相手を値踏みすると、感情が瞬時に伝わり、相手から自分が値踏みされる。
いわゆる「値踏みブーメラン」を食らうことになる。
ブーメランが飛び交う関係は疑心暗鬼を生み出し恋愛は破綻する。
そうならないためには無償の愛を相手に捧げることである。

この書籍は、営業やビジネスだけでなく、恋愛、夫婦、親子関係など、章ごとに「幸せになる解釈の仕方」「考え方」が記されている。
辞書で「おせっかい」と引くと「迷惑になるようなさま」、「余計なお世話」とネガティブな意味が書かれている。
しかし、古き良き時代の日本では「助け合い」、「人情」といったいい意味で使われていたと考える。
著者が、おせっかいで人生を好転させたように、おせっかいを上手に使って、人生を好転させていきたいものである。

『百年人生を笑って過ごす生き方の知恵』
作  者:高橋 恵
発売日:2023年1月30日
メディア:致知出版社

 

 

【書評】幸せの秘訣は「病院」より「美容院」、『百年人生を笑って過ごす生き方の知恵』

著者は80歳のおばあちゃん。
しかし、ただのおばあちゃんではない。営業時代の成績はトップ。
42歳で起業したPR会社は東証一部に上場。
重責を退いたあとは、“愛あるおせっかい”を日本に広めるために「おせっかい協会」を設立。自宅のタワマンから全国にFMラジオやクラブハウスで発信を行っている。
また、第一級障碍者手帳の持ち主であるが、講演依頼を受ければ日本全国は元より海外まで出向いて、おせっかいの素晴らしさを広めている。

順風満帆、完全な成功者に見える著者であるが、戦後の幼少期は一家心中直前までの不遇な経験をしている。また、営業の仕事で成果をあげた影でも多くの辛い思いを経験したという。
逆にいえば、「酸いも甘いも嚙み分ける」=「人生のフルコース」を味わってきたからこそ幸せに生きるノウハウに気付いたのである。

この本で気になった部分をいくつか抜粋したい。

「人生はなるようにしかならない、であるなら楽しむ」
そもそも、人生はコントロールできるものではない。
であるなら、面白いと感情が動くことに挑戦するのがよい。なぜなら、岐路に立たされてもワクワクした気持ちで困難に立ち向かうことができるから。

「石橋を叩く前に渡り切る」
著者は「お金がないのにPR会社を起業」、「無謀といわれる大会社に売り込み」、「経験もないのにTVドラマの脚本を手掛け」、「おせっかいを広めるために商業出版」。
立ち止まって熟考するより、さっさと渡ることをすすめている。
前に進むことで新しい景色が見えて思わぬ妙手を見出すきっかけを得られるという。

「恋人の値踏みはブーメラン」
相手を値踏みすると、感情が瞬時に伝わり、相手から自分が値踏みされる。
いわゆる「値踏みブーメラン」を食らうことになる。
ブーメランが飛び交う関係は疑心暗鬼を生み出し恋愛は破綻する。
そうならないためには無償の愛を相手に捧げることである。

この書籍は、営業やビジネスだけでなく、恋愛、夫婦、親子関係など、章ごとに「幸せになる解釈の仕方」「考え方」が記されている。
辞書で「おせっかい」と引くと「迷惑になるようなさま」、「余計なお世話」とネガティブな意味が書かれている。
しかし、古き良き時代の日本では「助け合い」、「人情」といったいい意味で使われていたと考える。
著者が、おせっかいで人生を好転させたように、おせっかいを上手に使って、人生を好転させていきたいものである。

『百年人生を笑って過ごす生き方の知恵』
作  者:高橋 恵
発売日:2023年1月30日
メディア:致知出版社

 

 

【書評】付加価値とは何か?をキーエンスから学ぶ!『付加価値のつくりかた』

人生において付加価値という言葉がこれからより重要になる思っている私が、改めて「付加価値」という言葉をより深く考えるきっかけを得るために読んだ本である。そのきっかけを日本の企業でありながら、平均年収2000万円、営業利益率50%以上、かつ自社工場を持たない「キーエンス」に求める事にしました。

著者はキーエンスでの勤務経験を踏まえ、現在コンサルティングをしている田尻氏である。田尻氏の考える価値とは「お客様が感じて決めるもの」であり、さらに付加価値とは「ニーズが源泉である」と定義し、物事に価値があるかどうかは以下3つの質問のどれかに当てはまれば価値があるという事である。

①お客様が買うという意思決定に影響を与えているか? 
②商品やサービスを買った後、ほんとに使っているか?
③それを使ったら役に立つか?

この定義をもとに、キーエンスの社内では全ての項目を数値化しており、その前提でどのような構造や取り組みがされているか?法人向けの営業において、どのようなやり取りをしているのか?具体的な例が示されています。興味深い点として彼らは自社での研究よりも、お客様が必要とするものを世の中の技術から組み合わせて世界初をつくりだす方法をとっている事である。(これは任天堂の開発思想「枯れた技術の水平展開」に似ている)

営業以外でもマーケティング部門や、全体の流れを見てどの部分にどのようなことで効率化ができるか考え、実践することでどんな部署でも付加価値は産めると著者は主張しています。一方で人生の生きづらさを感じるのは付加価値が産めないからではないか?と考えておりますので、その点も考慮しながら読んで頂きたい1冊です。

著者 :田尻 望
出版社:かんき出版
発売日:2022/11/9

 

 

【書評】共感しすぎて疲れやすい人が無理せずに生活する方法『LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』

 皆さんの周りに、時々こういう人がいないだろうか?人混みに行くだけで気分が悪くなる、すぐに泣く、いつも恋愛では変な人と付き合っている、自分の感情を言ってもいないのにドンピシャで当ててくる、という人である。僕の知り合いにこのような人がいた。感情を読み取る能力が文字通り高く、多くの人に話しかけられる人だった。今はその人とは連絡を取っていないが、話していたころは「なぜ手に取るようにわかるの」と常々疑問を持っていた。本書を読むまでは。この本は、上記のように、共感力がやたら強く、感受性もずば抜けて高い人について、精神科の先生が書いた本だ。筆者であるジュディス・オルロフは、このような人々に「エンパス」と名前を付け、エンパスの人が行きやすくなるにはどうすればいいのかを探している。エンパスは、まだまだ研究が始まったばかりの分野で、分かっていないことも多いという。しかし、エンパスの傾向を持っている人たちは、彼らなりの苦労を抱えている。そして、同時に「とても想像力豊か」という強みも持っている。本書は、そのようなエンパスの特徴と対策法をふんだんに盛り込んだ、バイブルのようなものだ。今回は、本書を読み、思ったことを書いていく。

 まず、共感しすぎることがメリットであることが多い、ということが挙げられる。共感力が高ければ、相手の感情を理解できるし、コミュニケーションもスムーズに行く。共感力があるため、優しく、相手の言うこともきちんと聞く傾向がある。それは、感受性が高いことによる恩恵ではないのか。実際に、人間関係が人生の幸福度を決めるというデータも出ている。なので、人さえ選べば、エンパスは人間関係で幸せになれるのである。故に、周囲からみて「気にしすぎ」だと言いたくなる特性は、ずば抜けて高い感受性と共感力の裏返しだ、とわかる。なのであれば、弱いということにはならない。その強みを上手に使えば、うまく今の刺激過多の世界でも、難なく暮らしていくことができる。そのことを本書は教えてくれるので、かなり心強いだろう。僕はエンパスというよりはASD傾向のほうが強いが、この本の知識を実践している。例えば、運動や瞑想だ。僕もエンパス傾向の人同様、緊張しやすい。それを暮らしやすい程度まで改善するために、体を鍛えたり、内面を見つめたり、ということを毎日やっている。おかげで、今では、難なく生活できている。

 もう一つ、これは上記のこととも関わってくるのだが、本書から「自分の傾向はある程度把握しておく必要がある」ということを改めて学んだ。人間は確かに自分のことについて、わずか10%ほどしか理解していない、というデータは存在するものの、自分をある程度把握する行為というのは無駄にはならないだろう。例えば、人混みに行って頭痛を催しやすいことが分かったら、「人混みを見つけたら、回り道をする」というルールを設定してもいいだろう。このような対策は、自分の特性をある程度把握していないと、設定することもできないし、実際に行動するのも難しくなってくる。故に、ビッグ5(科学的に最も信憑性の高い性格診断)を使ってみたり、自分の感受性などを分析するのが欠かせない。例えば僕の場合は、緊張したらその緊張に意味を考える、という行動を設定している。緊張するということは、要は体が問題の解決に向けて反応しているということになるからだ。このように、自分の関わっている特性について知っておくことは、とても重要だ。

 この本は、タイトル通り、共感しすぎて疲れる人に向けた本である。他人の感情の影響を受けすぎるという人や、周りの音やにおいに敏感という人にはうってつけの本だろう。エンパスではない僕にも学べることがあるのだから、エンパス傾向を持っている人には必読と言えよう。また、この分野は研究が進んでいないので、現時点ではもっとも頼りになる本である。

 僕自身、感受性が高く敏感で、更に不安になりやすく落ち込みやすいという、一般的に見ると生きづらいような特性を持っている。しかし、そんな僕でも、対策すれば暮らしていける。エンパスについても知れる本なので、多くの人に読んで欲しい本だ。

参考文献
ジュディス・オルロフ(2019~2020)『LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』桜田直美(訳) SBクリエイティブ

 

 

【書評】共感しすぎて疲れやすい人が無理せずに生活する方法『LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』

 皆さんの周りに、時々こういう人がいないだろうか?人混みに行くだけで気分が悪くなる、すぐに泣く、いつも恋愛では変な人と付き合っている、自分の感情を言ってもいないのにドンピシャで当ててくる、という人である。僕の知り合いにこのような人がいた。感情を読み取る能力が文字通り高く、多くの人に話しかけられる人だった。今はその人とは連絡を取っていないが、話していたころは「なぜ手に取るようにわかるの」と常々疑問を持っていた。本書を読むまでは。この本は、上記のように、共感力がやたら強く、感受性もずば抜けて高い人について、精神科の先生が書いた本だ。筆者であるジュディス・オルロフは、このような人々に「エンパス」と名前を付け、エンパスの人が行きやすくなるにはどうすればいいのかを探している。エンパスは、まだまだ研究が始まったばかりの分野で、分かっていないことも多いという。しかし、エンパスの傾向を持っている人たちは、彼らなりの苦労を抱えている。そして、同時に「とても想像力豊か」という強みも持っている。本書は、そのようなエンパスの特徴と対策法をふんだんに盛り込んだ、バイブルのようなものだ。今回は、本書を読み、思ったことを書いていく。

 まず、共感しすぎることがメリットであることが多い、ということが挙げられる。共感力が高ければ、相手の感情を理解できるし、コミュニケーションもスムーズに行く。共感力があるため、優しく、相手の言うこともきちんと聞く傾向がある。それは、感受性が高いことによる恩恵ではないのか。実際に、人間関係が人生の幸福度を決めるというデータも出ている。なので、人さえ選べば、エンパスは人間関係で幸せになれるのである。故に、周囲からみて「気にしすぎ」だと言いたくなる特性は、ずば抜けて高い感受性と共感力の裏返しだ、とわかる。なのであれば、弱いということにはならない。その強みを上手に使えば、うまく今の刺激過多の世界でも、難なく暮らしていくことができる。そのことを本書は教えてくれるので、かなり心強いだろう。僕はエンパスというよりはASD傾向のほうが強いが、この本の知識を実践している。例えば、運動や瞑想だ。僕もエンパス傾向の人同様、緊張しやすい。それを暮らしやすい程度まで改善するために、体を鍛えたり、内面を見つめたり、ということを毎日やっている。おかげで、今では、難なく生活できている。

 もう一つ、これは上記のこととも関わってくるのだが、本書から「自分の傾向はある程度把握しておく必要がある」ということを改めて学んだ。人間は確かに自分のことについて、わずか10%ほどしか理解していない、というデータは存在するものの、自分をある程度把握する行為というのは無駄にはならないだろう。例えば、人混みに行って頭痛を催しやすいことが分かったら、「人混みを見つけたら、回り道をする」というルールを設定してもいいだろう。このような対策は、自分の特性をある程度把握していないと、設定することもできないし、実際に行動するのも難しくなってくる。故に、ビッグ5(科学的に最も信憑性の高い性格診断)を使ってみたり、自分の感受性などを分析するのが欠かせない。例えば僕の場合は、緊張したらその緊張に意味を考える、という行動を設定している。緊張するということは、要は体が問題の解決に向けて反応しているということになるからだ。このように、自分の関わっている特性について知っておくことは、とても重要だ。

 この本は、タイトル通り、共感しすぎて疲れる人に向けた本である。他人の感情の影響を受けすぎるという人や、周りの音やにおいに敏感という人にはうってつけの本だろう。エンパスではない僕にも学べることがあるのだから、エンパス傾向を持っている人には必読と言えよう。また、この分野は研究が進んでいないので、現時点ではもっとも頼りになる本である。

 僕自身、感受性が高く敏感で、更に不安になりやすく落ち込みやすいという、一般的に見ると生きづらいような特性を持っている。しかし、そんな僕でも、対策すれば暮らしていける。エンパスについても知れる本なので、多くの人に読んで欲しい本だ。

参考文献
ジュディス・オルロフ(2019~2020)『LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』桜田直美(訳) SBクリエイティブ

 

 

【書評】何故天文学者は徹夜で観測するの?『暗闇のなかの光 ―ブラックホール、宇宙、そして私たち』

 

 皆さんは、どのように天体を観測するのか、ご存じだろうか?多くの方は「望遠鏡で観測している」ということは、イメージがつくだろう。地球の周りには、ハッブル宇宙望遠鏡もある。では、ここから5500万光年の距離にある、ブラックホールを観測するにはどうすればよいかと聞かれたら、皆さんは、どのように考えるだろうか?まず、「5500万光年」という距離が、途方もなさすぎる。地球から光の速さでも5500万年かかるのが、想像つかない。更に、そこにあるブラックホールを観測するなんて不可能だと思うだろう。何と、それをやり遂げた人物がいる。その人物こそ、本書の著者であるハイノー・ファルケである。彼は、オランダにあるラドバウド大学の教授を務める、宇宙物理学者だ。本書は、ファルケ教授が同僚とともに、どのように途方もない距離にあるブラックホールを観測したのかを書いている、回想録である。専門用語も出てくるが、実に読み応えのある本である。今回の書評では、本書のどこが面白かったのか、そして、どのようなことを学んだのかを、書いていく。

 本書の何が面白いかというと、そもそもブラックホールの存在を証明しようと、徹夜で観測に挑んだ天文学者がいる、という事実である。僕は、何故そこまでして観測するのか、かなり疑問だった。徹夜は、文字を見るからに体に悪い。睡眠不足は、アルコールを体に入れたのと同じくらいの判断能力に低下させる。また、睡眠不足では、僕たちの魅力は30%も減少する。つまり、彼らは、「ブラックホールの存在証明」という人類の快挙に、自分の身を削ってまで挑んだ、猛者中の猛者、ということになる。では、そこまでして観測した理由は、一体何だったのであろうか?その答えも実にシンプルである。「ブラックホールについて知りたい」という好奇心である。詳しところは本書に譲るが、著者曰く「今まで私たちは、ブラックホールの存在を状況証拠で説明してきた。私は、ブラックホールが、犯行を犯している、つまり直接星を飲み込んでいる証拠を掴みたかったのだ」という。実に、頭が下がる。

 更に、本書の結論が、実にシンプルなのだ。本書の終わりには、著者であるファルケ教授が大切にしていることが書かれている。その結論とは、「我々人間は、常に疑問を持ち、探求し続けるべきである」なのだ。実にシンプルかつ、分かりやすい結論だ。しかし、ここにも重要な意味が込められていると、僕は考える。疑問を持ち続けるということは、つまるところ「僕たち人間には限界がある」ということだ。そもそも、完璧ならば、疑問何て持つ必要がない。しかし、現に人間は、多くのミスを犯す。なので、人間の知性は、有限なのだ。にもかかわらず、何故筆者はこの結論にしたのだろう。僕の想像だが、あまりに多くの人間が、この限界に気付いていないからだ。実際に「90%の人間は、自分は全体人類の半分より頭がいいと評価する」というデータも出ている。90%の人間が、全体人類の半分より頭がいいことなんて統計上ありえない。なので、このデータからも、如何に人間が思い込みに支配されやすいかが分かる。筆者は、そのことを理解しているからこそ、この結論にしたのだと思う。

 本書は、ラドバウド大学の教授である。ハイノー・ファルケ教授によって書かれた、回想録である。2019年にブラックホールの写真が公開されたが、あのブラックホールの撮影に関わっている人物の一人である。宇宙物理学者で、子供のころから好奇心が強かったらしい。彼が小さいころ、自宅のアパートの向こうにある世界を知りたくて、釘で穴をあけ続けたというエピソードも載っている。ちなみに、穴は結局あかなかったそうだ。

 僕は、このような偉大な人の本を読めたのだ。かなり、ありがたいことである。本書は、専門用語も多少出てくるが、如何に人類の進歩が成し遂げられたかを知れる、貴重な本である。ぜひ、手に取っていただきたい。

参考文献
ハイノー・ファルケ、イェルク・レーマー(2022)『暗闇のなかの光 ―ブラックホール、宇宙、そして私たち』吉田三知世(訳) 亜紀書房

 

 

【書評】 やさしいお供でお金のセルフコーチング『こわいがなくなる投資1年生の教科書』

象徴的な図がある。それは証券投資全般のイメージのアンケート結果で、一位は「難しい」、二位以下「資産を増やす」「ギャンブルのようなもの」「なんとなく怖い」と続く。投資はよいイメージよりも一般的にはこわいと思われているのだ。本書はそこを丁寧に克服しつつ、より深く投資の世界を学びたい人にもうってつけの初心者向け投資ガイドである。

 投資経験により大きく3つに分かれて説明がなされている。学び、資産形成、楽しみの順だ。学びの投資の段階では、例えばスマホで手軽にに試すことができる「ポイント」での投資運用が、楽天ポイントを例に図付きで書かれている。元手もポイントなのだから、という心理で大変入りやすい。今更やり方を聞けない、株の上下が心配だ、という初心者にはうってつけだ。

 さらにもう少し進み、資産形成の投資の段階は、iDeCoやつみたてNISAの仕組みや口座開設の仕方から、投資先の見極めポイント、さらにはリスク管理の考え方なども載っている。手堅いインデックス積立の投資信託中心の章だ。

自分のステージはさらに上、という方向けには楽しむ投資の章がフォローする。大きな値上がりを狙ったり、株主優待を楽しんだり。損切り基準をはっきりさせるなど、証券会社出身の著者の考えも読み取っていこう。

そして印象に残ったのは「目的地なくして交通手段を飛行機か新幹線かと選ぶ人はいない。しかし投資はいきなり銘柄を選びがちである。投資も目的や目標金額を定めて計画的に行うべきだ」というくだりである。なかなか鋭い指摘だ。商品選びに夢中で目的地がはっきりしていないのでは?と自分を振り返る。

知識ゼロからのステップアップ型投資法。もうこわくなく、金融リテラシーアップのセルフコーチングができるだろう。

発行所 ㈱自由国民社
著者  佐藤彰
発行日 2023年1月6日

 

 

【書評】 やさしいお供でお金のセルフコーチング『こわいがなくなる投資1年生の教科書』

象徴的な図がある。それは証券投資全般のイメージのアンケート結果で、一位は「難しい」、二位以下「資産を増やす」「ギャンブルのようなもの」「なんとなく怖い」と続く。投資はよいイメージよりも一般的にはこわいと思われているのだ。本書はそこを丁寧に克服しつつ、より深く投資の世界を学びたい人にもうってつけの初心者向け投資ガイドである。

 投資経験により大きく3つに分かれて説明がなされている。学び、資産形成、楽しみの順だ。学びの投資の段階では、例えばスマホで手軽にに試すことができる「ポイント」での投資運用が、楽天ポイントを例に図付きで書かれている。元手もポイントなのだから、という心理で大変入りやすい。今更やり方を聞けない、株の上下が心配だ、という初心者にはうってつけだ。

 さらにもう少し進み、資産形成の投資の段階は、iDeCoやつみたてNISAの仕組みや口座開設の仕方から、投資先の見極めポイント、さらにはリスク管理の考え方なども載っている。手堅いインデックス積立の投資信託中心の章だ。

自分のステージはさらに上、という方向けには楽しむ投資の章がフォローする。大きな値上がりを狙ったり、株主優待を楽しんだり。損切り基準をはっきりさせるなど、証券会社出身の著者の考えも読み取っていこう。

そして印象に残ったのは「目的地なくして交通手段を飛行機か新幹線かと選ぶ人はいない。しかし投資はいきなり銘柄を選びがちである。投資も目的や目標金額を定めて計画的に行うべきだ」というくだりである。なかなか鋭い指摘だ。商品選びに夢中で目的地がはっきりしていないのでは?と自分を振り返る。

知識ゼロからのステップアップ型投資法。もうこわくなく、金融リテラシーアップのセルフコーチングができるだろう。

発行所 ㈱自由国民社
著者  佐藤彰
発行日 2023年1月6日