HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】冷たい社会への復讐と市民のための政治『社会の変え方 日本の政治をあきらめていたすべての人へ』

10年連続人口増加で様々な自治体から注目をされている明石市。その市長である泉氏の半生を綴った本である。彼は幼い頃に障がいを持って生まれてきた弟とその家族をとりまく冷たい境遇に強い憤りを感じ、これを原点として政治の道へと進んでいく。努力の末に東大に入り、テレビ局、故石井紘基氏との運命の出会いと選挙活動、弁護士、衆議院議員、そして明石市長として歩んできました。

泉氏にとっての初めての明石市長選では支援団体を一切持たずに戦い、わずか69票差で勝利し市民と共に勝利を勝ち取ったとして、さまざまな政策を進めていきます、子どもを中心として医療費・給食費など「5つの無料」政策を行い、市の中心部に図書館をつくるなど市民へ安心感を与えながら着実に人口が増える魅力ある街となっていきました。人口が増えることによるマンション建設や飲食店の出店など地元の産業や雇用にも大きく貢献していくという波及効果にも繋がりました。

市役所職員の活動や雇用も面白い取り組みをしており、困っている人と面着で対話する活動を基本としながら、全国から弁護士を募集し常勤職員として雇用することで、その人の専門職として活動や通常の一般職員との交流により組織全体を強くすることにも貢献する仕掛けをされています。こうした基盤もあったのでコロナ禍において、お金に困っている学生や商店にすぐに支給できる対策をとるなど、明石市独自の政策を次々に打ち出し、市民のための政治を積極的に行われました。

とはいえ万人に歓迎される政治はとても難しいということや、読者に政治を諦めないでほしいという強いメッセージも書かれているので、誰がやっても政治は同じだ!と諦めている人や選挙権があるのに選挙に行かない人に是非読んで頂きたい1冊です。

著者 :泉 房穂
出版社:ライツ社
発売日:2023年1月31日

 

 

【書評】冷たい社会への復讐と市民のための政治『社会の変え方 日本の政治をあきらめていたすべての人へ』

10年連続人口増加で様々な自治体から注目をされている明石市。その市長である泉氏の半生を綴った本である。彼は幼い頃に障がいを持って生まれてきた弟とその家族をとりまく冷たい境遇に強い憤りを感じ、これを原点として政治の道へと進んでいく。努力の末に東大に入り、テレビ局、故石井紘基氏との運命の出会いと選挙活動、弁護士、衆議院議員、そして明石市長として歩んできました。

泉氏にとっての初めての明石市長選では支援団体を一切持たずに戦い、わずか69票差で勝利し市民と共に勝利を勝ち取ったとして、さまざまな政策を進めていきます、子どもを中心として医療費・給食費など「5つの無料」政策を行い、市の中心部に図書館をつくるなど市民へ安心感を与えながら着実に人口が増える魅力ある街となっていきました。人口が増えることによるマンション建設や飲食店の出店など地元の産業や雇用にも大きく貢献していくという波及効果にも繋がりました。

市役所職員の活動や雇用も面白い取り組みをしており、困っている人と面着で対話する活動を基本としながら、全国から弁護士を募集し常勤職員として雇用することで、その人の専門職として活動や通常の一般職員との交流により組織全体を強くすることにも貢献する仕掛けをされています。こうした基盤もあったのでコロナ禍において、お金に困っている学生や商店にすぐに支給できる対策をとるなど、明石市独自の政策を次々に打ち出し、市民のための政治を積極的に行われました。

とはいえ万人に歓迎される政治はとても難しいということや、読者に政治を諦めないでほしいという強いメッセージも書かれているので、誰がやっても政治は同じだ!と諦めている人や選挙権があるのに選挙に行かない人に是非読んで頂きたい1冊です。

著者 :泉 房穂
出版社:ライツ社
発売日:2023年1月31日

 

 

【書評】こうして僕らは物を買っちゃうんです『影響力の武器』

 皆さんは、何かを買うとき、何を基準にして買うだろうか?どのような意思決定プロセスのもと、物を買うのだろう?僕は疑問に思っていた。それに、皆さんにはこのような疑問も投げかけたい。何故、「ポイントセール」などやるのだろう?「ポイントをつきますよ」と宣伝するくらいなら、単純に値下げをして売ればよいのに。しかし、本書を読むと、企業が、如何に皆さんに買わせようと思わせているのかが見えてくる。そして、何故詐欺で多くの人が騙されるのかも、この本を読めば、容易に把握できる。まさに、人間心理の法則書、といってもいいくらいの本だ。そして、何より、この本は僕の好奇心をかなり刺激した本でもある。しっかり科学的に書かれており、信憑性も高い。自己啓発本や下手なビジネス書を読むより、この本一冊で事足りるくらいだ。では、どこが面白いのだろう。今回はそれを書いていく。僕の好奇心が爆発した本でもあるからだ。

 まず、この本では、6つの心理傾向が解説されている。が、その6つに共通する心理が解説されている。この前提を最初に把握すれば、人間がいかに、単純な部分を持っているかがよくわかる。人間は、多くの場合において、自動的反応をしている。つまり、何かトリガーがあると、何も考えずに自動的に行動するのだ。まずこれが面白い。人間を動物としてみると、如何に人間が数万年前の原始時代の脳のまま生活しているかがよくわかる。そして、この自動反応を著者は「カチッ・サー反応」なんて名前も付けている。なんと単純明快で分かりやすい言葉だろうと僕は思った。更に著者は本書の中で「自動操縦」とも言っている。実にユーモアと皮肉が効いている。このように、楽しみながら学べる本なのだ。

 また、この本をもとにしてスーパーのポイントセールを分析してみると、面白いことが分かる。このポイントセール、毎日やっているわけではないことに注目してほしい。週1日などのペースで実施しているだろう。もうすでに、この設定が「罠」なのだ。これは「希少性」という概念を使っている。人間はわずかなものに価値を感じるようにできていて、たとえそれが欲しくないものでも、価値を感じるようにできているのだ。つまり、「今日限定ですよ」というメッセージを込めることで、客の購買意欲を煽っているのだ。多くの人がこれに気付いていない。これは僕の推測だが、狩猟採集民時代は、如何に食べ物を多く持っているかが生き残るうえで欠かせなかった。ということは、者が少ないときに価値を感じるのもある種当然のことといえよう。なので、売る側は、この希少性を使って、僕たちの財布のひもを緩ませるのだ。このことを知ったとき、僕は身震いした。

 本書を書いたのは、ロバート・チャルディーニという元アリゾナ州立大学の先生である。現在は会社を立ち上げ、講演を行っている。この本は1984年に発売されたが、今なお絶大な人気を誇っている。メンタリストDaiGoさんも読んだ本だ。本書は、実に300万部以上も売れた、大ベストセラーの本だ。

 本書は、人間の心理という見えない領域を扱っている。ここには書ききれない、もっと面白いことが山ほどある、まさに宝物だ。ぜひ、読んでみてほしい。

参考文献
ロバート・B・チャルディーニ(2014~2022)『影響力の武器[第三版]―なぜ人は動かされるのか―』社会行動研究会(訳) 誠信書房

 

 

【書評】こうして僕らは物を買っちゃうんです『影響力の武器』

 皆さんは、何かを買うとき、何を基準にして買うだろうか?どのような意思決定プロセスのもと、物を買うのだろう?僕は疑問に思っていた。それに、皆さんにはこのような疑問も投げかけたい。何故、「ポイントセール」などやるのだろう?「ポイントをつきますよ」と宣伝するくらいなら、単純に値下げをして売ればよいのに。しかし、本書を読むと、企業が、如何に皆さんに買わせようと思わせているのかが見えてくる。そして、何故詐欺で多くの人が騙されるのかも、この本を読めば、容易に把握できる。まさに、人間心理の法則書、といってもいいくらいの本だ。そして、何より、この本は僕の好奇心をかなり刺激した本でもある。しっかり科学的に書かれており、信憑性も高い。自己啓発本や下手なビジネス書を読むより、この本一冊で事足りるくらいだ。では、どこが面白いのだろう。今回はそれを書いていく。僕の好奇心が爆発した本でもあるからだ。

 まず、この本では、6つの心理傾向が解説されている。が、その6つに共通する心理が解説されている。この前提を最初に把握すれば、人間がいかに、単純な部分を持っているかがよくわかる。人間は、多くの場合において、自動的反応をしている。つまり、何かトリガーがあると、何も考えずに自動的に行動するのだ。まずこれが面白い。人間を動物としてみると、如何に人間が数万年前の原始時代の脳のまま生活しているかがよくわかる。そして、この自動反応を著者は「カチッ・サー反応」なんて名前も付けている。なんと単純明快で分かりやすい言葉だろうと僕は思った。更に著者は本書の中で「自動操縦」とも言っている。実にユーモアと皮肉が効いている。このように、楽しみながら学べる本なのだ。

 また、この本をもとにしてスーパーのポイントセールを分析してみると、面白いことが分かる。このポイントセール、毎日やっているわけではないことに注目してほしい。週1日などのペースで実施しているだろう。もうすでに、この設定が「罠」なのだ。これは「希少性」という概念を使っている。人間はわずかなものに価値を感じるようにできていて、たとえそれが欲しくないものでも、価値を感じるようにできているのだ。つまり、「今日限定ですよ」というメッセージを込めることで、客の購買意欲を煽っているのだ。多くの人がこれに気付いていない。これは僕の推測だが、狩猟採集民時代は、如何に食べ物を多く持っているかが生き残るうえで欠かせなかった。ということは、者が少ないときに価値を感じるのもある種当然のことといえよう。なので、売る側は、この希少性を使って、僕たちの財布のひもを緩ませるのだ。このことを知ったとき、僕は身震いした。

 本書を書いたのは、ロバート・チャルディーニという元アリゾナ州立大学の先生である。現在は会社を立ち上げ、講演を行っている。この本は1984年に発売されたが、今なお絶大な人気を誇っている。メンタリストDaiGoさんも読んだ本だ。本書は、実に300万部以上も売れた、大ベストセラーの本だ。

 本書は、人間の心理という見えない領域を扱っている。ここには書ききれない、もっと面白いことが山ほどある、まさに宝物だ。ぜひ、読んでみてほしい。

参考文献
ロバート・B・チャルディーニ(2014~2022)『影響力の武器[第三版]―なぜ人は動かされるのか―』社会行動研究会(訳) 誠信書房

 

 

【書評】アドラー心理学を身近な例から学ぼう!『もしアドラーが上司だったら』

フロイトユングアドラーといえば心理学を学ぶ上で誰もが知っている三大巨匠であり、昨今『嫌われる勇気』で有名になったアドラーですが、分かりやすいアドラー心理学を学べる本がないかと探していたら、本書に出会いました。

都内の広告代理店で働く主人公であるリョウ君は、ある朝皇居の周りをランニングをしていた。その時に追い抜いた小柄な男性から声をかけられ、立ち止まって軽く話をする。リョウ君は「不思議な人だなあ。」と思い会社に出社すると、その人がアメリカ帰りで同じ職場で働くことになった「ドラさん」であった。本書はアドラー心理学を学びながらドラさんとリョウくんがお互いに成長していくコミカルな物語である。

本書におけるアドラー心理学の特徴は「勇気」と「共同体意識」の2点が大きなポイントであり、前半は「勇気」後半は「共同体意識」をテーマにして、この組み合わせることにより豊かな人生を送れることに気づいていく物語である。例えば悪い面だけ見ないこと、見返りを求めない事、相手と自分の領域を見極める事であり、最も大事なのは人間の行動価値と存在価値の違いを明確化、存在価値を大切にする事であると説いております。

一方で仕事やコミュニケーションにおいては信頼よりも信用が重視されるため、存在価値と行動価値の切り分けや理解が大事だということも具体例を用いて書かれて、この部分も非常に面白い捉え方だと思いました。ドラさんとリョウ君のストーリーを楽しみながら、アドラー心理学を考えさせられる面白い本となっております。

著者名:  小倉 広
出版社 ‏ : プレジデント社
発売日 ‏ : 2017/3/13

 

 

【書評】やっぱこれがオレの好きな鬼太郎なのよ。『決定版-ゲゲゲの鬼太郎1-妖怪大戦争・大海獣』

本書は、1965年に『週刊少年マガジン』でメジャー化してからの鬼太郎のお話バージョンである。
メジャー化とは言っても、テレビアニメ第3シリーズ(1985年〜1988年、全108回)以降のイメージしかない方がこの原作を読んだら、違和感バリバリであろうと思う。
まず鬼太郎自体があんな正義感溢れるナイスガイでもないし、よく敵さんの妖怪におかしな生き物に変えられたりもするし、水木しげるの作風がまた、おどろおどろしくも淡々とし、且つ変なユーモアがあって、なんとも珍しいものなのだ。

さて、その原作だが、当初は『墓場の鬼太郎』というタイトルであった。テレビアニメ化に際して、いくらなんでも『墓場』はまずかろうと、テレビ局と相談の上改題された。
アニメ版は、白黒の第1シリーズ(1968年〜1969年、全65回)と、第2シリーズ(1971〜1972年、全45回)の、鬼太郎を野沢雅子が、ねずみ男大塚周夫が声を当てていた頃までは、作風も原作と通じるものがあったのだが、なんだか鬼太郎が良いヤツ過ぎるし、目玉おやじ以外は声優が一新されてしまった第3シリーズ以降は、どうもあんまりしっくりこないなぁというのが個人的な感想だ。
やはり、子供の頃に読み返していた漫画の記憶というのは強烈なものがある。現代と比べれば、なんといっても情報量がケタ違いに少ない頃だ。刷り込み具合が異なるのである。
なんかものすごく強い妖怪との対戦で、武器の一つである髪の毛針を放ち尽くして、鬼太郎がつるっぱげになったり、ビビビのねずみ男が、鬼太郎の絶体絶命の危機を自らの得意分野で救ったりと、部分部分を覚えているエピソードも幾つかある。
しかし、実は上京後に実家の親が勝手に処分してしまい、鬼太郎の漫画を読むことが長年無かった為に、その記憶も遠のいて久しい。
「いつか原作の鬼太郎をちゃんと読み返したいなぁ」
というのが、私にとっては結構な前からの気掛かりであったのである。
そして、先日ふと本屋に立ち寄ってみれば、「はじめて一挙掲載する文庫の決定版、刊行開始!」と、中公文庫から第2巻まで発売されているではないか。
どうやら2023年1月から毎月1冊ずつ刊行中で、全10巻の予定らしい。
流石は、水木しげる 生誕100周年!
これまでにも復刻版の全集が何種類か発刊されていることも知ってはいるが、これはなんとも丁度良いタイミングだ!
ここは10ヶ月かけてちまちま読み進めてみようじゃないか。

ということで、まずは第1巻をゲット。早速読んだ覚えのある話も出てきて嬉しい限りだ。

決定版-ゲゲゲの鬼太郎1-妖怪大戦争・大海獣
作者: 水木しげる
発売日:2023年1月日
メディア:文庫本

 

 

【書評】かなりエグかった頃の鬼太郎。『墓場鬼太郎 貸本まんが復刻版』

言わずと知れた水木しげるの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』は、もう何度もアニメ化され、すっかり世の中的には「鬼太郎 = いい感じのヤツ」になっているが、原作では妙に飄々とした案外とすっとぼけたあんちゃんだ。
1954年の紙芝居から始まり、貸本漫画に居所を変え、『幽霊一家』、続いて『墓場鬼太郎』というタイトルで連載開始された頃に遡ってみての鬼太郎は、すっとぼけたあんちゃんどころか、ううん、ちょっとキモい、あんまりお友達にはなりたくない様なタイプで、人間の味方でもない。いや、むしろ関わった人々に怪奇をもたらす不穏な小僧であった。
1965年には『週刊少年マガジン』で『墓場の鬼太郎』としてメジャー化し、内容も妖怪退治モノに変わった。さらに、テレビアニメ化に際してタイトルから不吉な『墓場』を差し替えて『ゲゲゲの鬼太郎』となった。そして、以後ヒーロー化していくのだ。
本書は、貸本漫画の復刻版だ。怪奇物語らしく、その後の作品とは画風も異なる。人物画も後に見られる様なおとぼけキャラ達ではなく、かなりリアルタッチだ。カラーページを見ると、なんとなく昔のアメコミ風にも見える。

で、鬼太郎の誕生編がまず非道い。
最後の生き残りだった幽霊族の夫婦は、不治の病であえなく死んでしまう。妻は子を宿していたが、その子供は自ら母親の腹を破って、墓の下から土を掘り起こして生まれてきた。それが鬼太郎だ。
目玉おやじとして知られている鬼太郎の父親はどうしたのか。
実は元々は大男であったおやじだが、生後間もない一人息子を案じるあまり、ドロドロに腐った死体から左の目玉だけがボトリと落ちると、そいつに手足が生えて蘇ったのがあの姿なのだった。
鬼太郎は生まれつき隻眼、つまり左目が無く、目玉おやじは丁度良いとばかりに鬼太郎の左目に入って隠れるという手段を度々取ったが、いつしかそれは行なわなくなった。多分気色悪いので。
鬼太郎の片目の姿もあんまり具合が宜しくなかろうと、やがて鬼太郎は髪を伸ばしだし、目出たくご存じのあのスタイルになったのだ。

尚、本作は2008年1月11日から3月21日までで全11話がテレビアニメ化された。なんと、『ゲゲゲの鬼太郎』第5シリーズの放送中にである。

う〜ん。悪趣味だ(笑)。

墓場鬼太郎 貸本まんが復刻版』
作者: 水木しげる
発売日:2006年8月25日
メディア:文庫本

 

 

【書評】4人の少年は戦国時代に世界帝国を見た!『クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国』

16世紀の大航海時代(日本では戦国時代の真っ只中)、キリスト教の世界布教によりフランシスコ・ザビエル種子島に来日し、それから日本での布教活動が広がっていく。その後イエズス会のヴァリアーノ氏の提案により日本人で洗礼を受けた4人の少年(クアトロ・ラガツィイ)の欧州派遣を計画、それが「天正少年使節」である。彼らは8年かけて戦国時代に海を渡り、ポルトガルやローマを訪問し日本へ帰国。その後を描いた歴史物語である。本書の特徴としては、日本側と欧州側にある資料を作者が丁寧に読み込み、事実に近いものだけを厳選して描かれているので、非常に分かりやすく描かれております。

一方で4人の少年の生きた時代は、織田信長豊臣秀吉徳川家康といった日本側の権力者変更によるキリスト教に対する思想(共存→弾圧)変化が著しい時期であり、当時世界帝国であったポルトガル・スペインからイギリス・オランダへと世界の中心が移っていく時代であった。そのため4人の少年だけを中心に描くというよりは、その当時の世界・日本の歴史も併せて描かれているので、大変興味深い内容となっています。

ちなみに主役である4人の少年は、欧州で熱烈な歓迎を受け当時多くの権力者に会い、日本初の活版印刷機を持ち帰り、日本に戻ってからも豊臣秀吉から直接家来にならないか?と誘われるほどになる。日本人がどのように欧州で受け入れられ、何を感じてどのようなものを持ち帰ったのか?また彼らの最後はどうなったのか?当時の世界と日本を取り巻く環境を学びながら読んで頂きたい一冊である。

著者  

 

 


出版社 集英社
発行日 2008年3月19日

 

【書評】老いと成熟の差は毎日の小さな変化?!『成熟スイッチ』

 作家・林真理子氏の、今現在を投影したエッセイ集である。皆、人生の節目節目で、「昔、正岡子規はこの年で亡くなったんだ」とか「新撰組近藤誠は自分の今の年では、、」などと、熟しきった先人と同じ年の今の自分の未熟さを憂いた事があるのではないか。体と気持ちはアンチエイジングで若くありたいが、経験に応じたよい年齢を重ねた大人でいたい、そんな塾年世代に向けたこのタイトル。数々の文学賞紫綬褒章の受賞に現在は日本文藝家協会の理事長で、日本大学の理事長を務めている、自分でも「大御所っぽく収まった」といった林氏から何某かのヒントが得られるかと頁をめくる。

 「人間関係の心得」や「お金を味方につける」「読書の快楽」の章と人生訓も諸々。そして所々に垣間見える、彼女のきらびやかな交友関係。しかしこの林氏が、いやこの林氏もやはり、ああ絶え間なく努力してきたのだ、と諭されるのが「私の成熟スイッチ・生き残るのは変化するもの」の章だ。
 即ち、変化を厭わない、いや寧ろ変化しようしようと挑戦し続けたことが綴られている。

〜(引用)私の人生訓の一つが、「生き残るものは大きなものでも強いものでもない。変化していくものだ。」です。
〜中略〜 
「書く私」という幹から「○○を書く私」が何本も枝のように生えていたのです。
〜中略〜 
私の「素直さ」と「真面目さ」、同じようなものは書きたくないという「意地」の三本柱があってこそと思います。〜

 確かに、直木賞を取った「最終便に間に合えば」「京都まで」の女心の心理描写や恋愛もの。大河ドラマにもなった「西郷どん!」などの歴史小説。そして同一雑誌最多掲載ギネス記録認定もある得意のエッセイ。多様なジャンルの著作は、最初に売れた後に自身を「完全にキワモノとして認知されていきました。」と冷静に俯瞰しつつ、ジャンルを選ばず寧ろ変えよう変えようと努力して書いていった結果がここにあるのか、ととても納得する。
 成熟と変化は一見して寄り添わない概念のように見える。しかし、一つの幹の中、一つところに留まらない所々の枝葉を生やすイメージで、新しいことへの挑戦が大樹を生み出したのだと腑に落ちる。

 ほかにも、占いが好きで、とにかく誰かに強運だ、大丈夫だと言われたい不安定な作家の立場の記述。尊敬から憐憫へと熟した夫婦関係をふりかえった文章。大御所、の林氏の細かな努力がやはり垣間見れる。
 読む者の立場により刺さる部分は違うかもしれない。しかし人生幾つになりどんなステージになっても、毎日を充実した能動的な生き方としていく、そのヒントが得られる1冊であろう。

講談社現代新書
林真理子
2022年11月20日

 

 

【書評】知財部とのやりとりの仕方がわかる!『技術者・研究者のための 特許の知識と実務』

研究を行い良いものが開発できた。特許を取ろう。そんなときに特許はとれるのか、特許を取るために必要な情報は何か。知財部にどんなふうに相談したらいいのか。それがわかるのが本書だ。

タイトルの通り本書は技術者・研究者のための本だ。知財部向け、弁理士向けなどの本はよくあるが、特許に関わる人間で一番多いのは技術者・研究者であろう。研究者はどの程度まで関わり知財部にどこからを任せればいいかがよくわかる。

特許というのは新規性と進歩性が必要だ。特許について学ぶとまず初めに知る言葉だ。新規性はこれまでの技術と比べ何が新しいか。進歩性はそれを思いつくのが難しいか。研究者はまず新規性だけを考えて、進歩性は特許部に任せよう。

また、本書では知財部に向けて、発明を提案する書類のテンプレートも載っている。知財部に説明するための情報をまとめたものだ。非常にありがたい。

さて、その他にも技術調査のやり方など、とにかく技術者・研究者に必要な情報がまとまっている。非常に丁度良い本だ。