HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】一家に1冊!『難しいことはわかりませんが、老後のお金の作り方を教えてください』

 

 昨今は、つみたてNISAやiDeCoなど制度の後押しもあり、資産運用ポートフォリオに株式や投資信託を取り入れるようになった方も多いだろう。

 本書は一貫して、インデックス投資信託を中心に、どう長期的に資産形成していくかを解説している。これだけなら資産運用の他の初心者本とあまり変わりがないが、一つには、表やグラフを用いた説得力ある流れと、幅広い初心者の疑問、例えば高配当株はどうなのか、とか、纏まった資金がある時でも積立投資がいいのか、などに明快に歯切れよく答えているテンポがなかなかよい。

 そして、本書の中でも特にインパクトがあり、まさにここだけ見るだけでも価値があるのが巻末の表だ。それはズバリ、インフレ率を加味した複利計算表である。曰く、いまの100万円は、インフレ率2%とした場合福利計算で10年後には81万円、20年後には67万円の価値となる。しかし先進国株式型のインデックス投資信託で運用した場合、10年後は190万円、20年後は350万円という表になっている。ナスダック100ではさらに多い額だ。
 分かってはいても、そして単なる試算であって指数を入れ替えれば変わる表だと認識していても、こうも見える化されると、流石に焦燥感を感じずには居られない。

 この表やインデックス投資を理解した上で、資産上の株式の比率はどのくらいにしたらいいのか、シャープレシオとは、ナスダックは本当にいいのか、不動産リートは、高配当株は、個別株は、、と、初心者が迷うポイントについても、著者目線での明快な答えが書かれている。著者は、定年後に投資を勉強し直した70歳。もともと仕事として投資をしていた人ではないからこそ、等身大で初心者に分かりやすい本になっているとも言える。
 資産運用の見直しに、本書も参考にしてみてはいかがだろうか。

著者︰チンさん 凡人投資家
発行所︰自由国民社
発行日︰2022年11月30日

 

 

【書評】一家に1冊!『難しいことはわかりませんが、老後のお金の作り方を教えてください』

 

 昨今は、つみたてNISAやiDeCoなど制度の後押しもあり、資産運用ポートフォリオに株式や投資信託を取り入れるようになった方も多いだろう。

 本書は一貫して、インデックス投資信託を中心に、どう長期的に資産形成していくかを解説している。これだけなら資産運用の他の初心者本とあまり変わりがないが、一つには、表やグラフを用いた説得力ある流れと、幅広い初心者の疑問、例えば高配当株はどうなのか、とか、纏まった資金がある時でも積立投資がいいのか、などに明快に歯切れよく答えているテンポがなかなかよい。

 そして、本書の中でも特にインパクトがあり、まさにここだけ見るだけでも価値があるのが巻末の表だ。それはズバリ、インフレ率を加味した複利計算表である。曰く、いまの100万円は、インフレ率2%とした場合福利計算で10年後には81万円、20年後には67万円の価値となる。しかし先進国株式型のインデックス投資信託で運用した場合、10年後は190万円、20年後は350万円という表になっている。ナスダック100ではさらに多い額だ。
 分かってはいても、そして単なる試算であって指数を入れ替えれば変わる表だと認識していても、こうも見える化されると、流石に焦燥感を感じずには居られない。

 この表やインデックス投資を理解した上で、資産上の株式の比率はどのくらいにしたらいいのか、シャープレシオとは、ナスダックは本当にいいのか、不動産リートは、高配当株は、個別株は、、と、初心者が迷うポイントについても、著者目線での明快な答えが書かれている。著者は、定年後に投資を勉強し直した70歳。もともと仕事として投資をしていた人ではないからこそ、等身大で初心者に分かりやすい本になっているとも言える。
 資産運用の見直しに、本書も参考にしてみてはいかがだろうか。

著者︰チンさん 凡人投資家
発行所︰自由国民社
発行日︰2022年11月30日

 

 

【書評】結婚てなんなん?『もう別れてもいいですか』

田舎に住む58歳のパート主婦のもとに友人からの喪中はがきが届くところから物語は始まる。亡くなったのは友人の夫だった。「羨ましい・・」主人公に湧き上がる感情。「この小説はミステリーなのか?」と一瞬思わせるが、その後はごくふつうの主婦が離婚を成功させるためにひとつひとつ壁を乗り越え進んでいく様子を描いた小説だった。

読み始めると「果たして彼女は無事に離婚できるのか?」だけが気になって、一気読みしてしまった。「ちょっと夫をひどく描き過ぎでは?」とも思ったりもしたが、いや、現実にも大いに存在するキャラであることは間違いない。世の離婚したい妻の言いたいことを全部詰め込み、ある日突然に離婚されそうな夫の要素を容赦なく詰め込んでいる。小説というよりはエンターテインメントを見ているようでもあった。中身は深刻なのに時折「フフッ」と吹き出してしまうのだ。

主人公の旧友たちも多く登場する。彼女たちの会話の中に「根性」「我慢」「忍耐」「最悪」という単語が出てくる。これだけ聞くと気分が悪く、そんなに結婚が過酷なら放棄すればいいのにと思うが、できない理由がそこにはある。妻にとっては当然という潜在意識や世間体だ。彼女たちの辛い状況は、夫の存在だけが原因ではない。妻の意識が作っている。つまり、例えば家事や子育てをせずに優越に浸る夫とそれを実は当然のこととして承諾している妻という構図が根深く残っているのだ。それに気が付いた主人公はポジティブループに入っていくのだった。

結婚てなんなんだろうと再び考えさせられた。自分も育児と仕事で疲弊していた時は結婚を契約としてしか考えられなかったことを思い出した。物語のように我慢を重ねて結婚生活を何十年も続けることに意味があるのだろうか。本には田舎特有の世間体とかが色濃く出てくるので、都会の人には少し気味悪いかもしれないが、一度は離婚したいと思った人には共感できる部分も多いだろう。もしかしたら勇気をもらえるかも。

この本は妻目線で描かれている。完全に読み手が妻の味方になるような構成だ。著者に対する勝手な要求だが、スピンオフとして夫目線でこの物語を描いてほしい。きっと全く違う物語となるだろう。それぐらい夫と妻の感覚のズレが大きくなっていたということである。

『もう別れてもいいですか』
作者:垣谷美雨
発売日:2022年1月7日
メディア:中央公論新社

 

 

【書評】結婚てなんなん?『もう別れてもいいですか』

田舎に住む58歳のパート主婦のもとに友人からの喪中はがきが届くところから物語は始まる。亡くなったのは友人の夫だった。「羨ましい・・」主人公に湧き上がる感情。「この小説はミステリーなのか?」と一瞬思わせるが、その後はごくふつうの主婦が離婚を成功させるためにひとつひとつ壁を乗り越え進んでいく様子を描いた小説だった。

読み始めると「果たして彼女は無事に離婚できるのか?」だけが気になって、一気読みしてしまった。「ちょっと夫をひどく描き過ぎでは?」とも思ったりもしたが、いや、現実にも大いに存在するキャラであることは間違いない。世の離婚したい妻の言いたいことを全部詰め込み、ある日突然に離婚されそうな夫の要素を容赦なく詰め込んでいる。小説というよりはエンターテインメントを見ているようでもあった。中身は深刻なのに時折「フフッ」と吹き出してしまうのだ。

主人公の旧友たちも多く登場する。彼女たちの会話の中に「根性」「我慢」「忍耐」「最悪」という単語が出てくる。これだけ聞くと気分が悪く、そんなに結婚が過酷なら放棄すればいいのにと思うが、できない理由がそこにはある。妻にとっては当然という潜在意識や世間体だ。彼女たちの辛い状況は、夫の存在だけが原因ではない。妻の意識が作っている。つまり、例えば家事や子育てをせずに優越に浸る夫とそれを実は当然のこととして承諾している妻という構図が根深く残っているのだ。それに気が付いた主人公はポジティブループに入っていくのだった。

結婚てなんなんだろうと再び考えさせられた。自分も育児と仕事で疲弊していた時は結婚を契約としてしか考えられなかったことを思い出した。物語のように我慢を重ねて結婚生活を何十年も続けることに意味があるのだろうか。本には田舎特有の世間体とかが色濃く出てくるので、都会の人には少し気味悪いかもしれないが、一度は離婚したいと思った人には共感できる部分も多いだろう。もしかしたら勇気をもらえるかも。

この本は妻目線で描かれている。完全に読み手が妻の味方になるような構成だ。著者に対する勝手な要求だが、スピンオフとして夫目線でこの物語を描いてほしい。きっと全く違う物語となるだろう。それぐらい夫と妻の感覚のズレが大きくなっていたということである。

『もう別れてもいいですか』
作者:垣谷美雨
発売日:2022年1月7日
メディア:中央公論新社

 

 

【書評】結婚てなんなん?『もう別れてもいいですか』

田舎に住む58歳のパート主婦のもとに友人からの喪中はがきが届くところから物語は始まる。亡くなったのは友人の夫だった。「羨ましい・・」主人公に湧き上がる感情。「この小説はミステリーなのか?」と一瞬思わせるが、その後はごくふつうの主婦が離婚を成功させるためにひとつひとつ壁を乗り越え進んでいく様子を描いた小説だった。

読み始めると「果たして彼女は無事に離婚できるのか?」だけが気になって、一気読みしてしまった。「ちょっと夫をひどく描き過ぎでは?」とも思ったりもしたが、いや、現実にも大いに存在するキャラであることは間違いない。世の離婚したい妻の言いたいことを全部詰め込み、ある日突然に離婚されそうな夫の要素を容赦なく詰め込んでいる。小説というよりはエンターテインメントを見ているようでもあった。中身は深刻なのに時折「フフッ」と吹き出してしまうのだ。

主人公の旧友たちも多く登場する。彼女たちの会話の中に「根性」「我慢」「忍耐」「最悪」という単語が出てくる。これだけ聞くと気分が悪く、そんなに結婚が過酷なら放棄すればいいのにと思うが、できない理由がそこにはある。妻にとっては当然という潜在意識や世間体だ。彼女たちの辛い状況は、夫の存在だけが原因ではない。妻の意識が作っている。つまり、例えば家事や子育てをせずに優越に浸る夫とそれを実は当然のこととして承諾している妻という構図が根深く残っているのだ。それに気が付いた主人公はポジティブループに入っていくのだった。

結婚てなんなんだろうと再び考えさせられた。自分も育児と仕事で疲弊していた時は結婚を契約としてしか考えられなかったことを思い出した。物語のように我慢を重ねて結婚生活を何十年も続けることに意味があるのだろうか。本には田舎特有の世間体とかが色濃く出てくるので、都会の人には少し気味悪いかもしれないが、一度は離婚したいと思った人には共感できる部分も多いだろう。もしかしたら勇気をもらえるかも。

この本は妻目線で描かれている。完全に読み手が妻の味方になるような構成だ。著者に対する勝手な要求だが、スピンオフとして夫目線でこの物語を描いてほしい。きっと全く違う物語となるだろう。それぐらい夫と妻の感覚のズレが大きくなっていたということである。

『もう別れてもいいですか』
作者:垣谷美雨
発売日:2022年1月7日
メディア:中央公論新社

 

 

【書評】口下手さん必見!『知的な雑談力の磨き方』

 何を隠そう私(評者)は雑談下手である。どちらかというとこの書評のように字を書いている方が気が楽だ。でも世間は人間関係で出来ているので、雑談力があるに越したことはない。もし自分の雑談力がアップすれば、便利だし人から好かれるだろうし、きっとビジネス上も良いことこの上ない。ただそれは自分にはない性質だから諦めるしかないかな。
 これが日頃の私である。きっと世の中の半分くらいは私と同じように、専門力で生きてきてオールラウンドな社交タイプではないな、そんなことを思ってるのではないだろうか。しかしそんなあなたこそ是非、ページをめくってもらいたい。

 本書は雑談力、しかも知的な雑談力の磨き方が50連発の構成となっている。口下手必見、まずは話のとっかかりのテクニック論。例えば「木戸に立てかけし衣食住」。順に着物、道楽、ニュース、旅、天気、、と頭文字を憶えおけば話題にことかかない。営業のイロハかもしれないが、改めて侮れない武器である。
 また「オープン質問、クローズド質問を自由に駆使する」。YesとNoで答えられるクローズド質問でまず「休日は土日ですか」と聞いてから、「休日はどんなことをしているんですか」とオープンな質問に移り会話を広げていく。
 
 そして本書が「知的な」雑談力を磨くという肝は、雑談の掴みだけでなく発展のさせ方である。相手の話に応じた質問力で話を広げること、そのための幅広い知識教養がいかに大切か、そしてその集め方について本書は多くを割いている。
 曰く、複数のニュースサイトチェック、最新の技術に一度は触れてみる、隙間時間は一分でも無駄にせずSNSチェックなど、、。

 また、著者が学習をしようと思ったきっかけの1つ、父親の言葉が胸にささる。「知識は円のようなものだ。円が大きくなるほどその縁は外部と多く接する。学べば学ぶほど、知らないことが沢山あるのに気づくよ」とのことだ。
 雑談力と知識教養を高めることに1つも損はない。是非本書を手にとってほしい。

『知的な雑談力の磨き方』
作  者:すあし社長
発売日:2022年9月1日
メディア:㈱クロスメディア・パブリッシング

 

 

【書評】先見の明を得る思考とは?『未来に先回りする思考法』

人類にとって将来起こる事を正確に知ることは難しい。ライト兄弟が人類で初めて空を飛んだ数週間前のニューヨークタイムズの記事は「実際に空を飛ぶ機械が、数学者と機械工の協力と不断の努力によって発明されるまでには、1万年かかるだろう」であり、iphoneFacebookを見た当時の人は日本では普及しないと言われました。

しかしながら、一部の人は先見の明を発揮し社会へ大きな影響を与えています。この本は著者の体験を通して、「未来を見通せる汎用的な思考体形」を提案しています。

著書には色々と書かれていますが、私の理解した上記思考体形としては
①未来を見るには点ではなく、線で見る事。
②新技術の原理を知り、困りごとを解決するニーズと一致すると時代にマッチする事。
であり、当たり前かもしれませんが、意識するとしないとでは大きな差が生まれると感じました。

かの有名な「業務の20%は好きなことをしても良い」というGoogle社内のルールも
「人間の判断は間違える!」という前提で成り立つ制度というエピソードも興味深い内容でした。佐藤氏はこの視点を踏まえて『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』という本も出しており、こちらも興味深い本となっておりますので、興味ある方は読んでみてください。

著者 :佐藤 航陽
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版日:2015年8月27日

 

 

【書評】エルメスになってください。『コンテンツ・ボーダーレス』

「コンテンツひとつで全世界を飛び回ることが出来る、無限の可能性が広がる時代なのです」
そう言う著者は、韓国ソウル出身。2001年に来日し、国際社会文化学者として韓国や日本など東アジアのコンテンツを様々な角度から研究してきた。また、タレントとしてメディアにも登場している女性だ。
彼女が思うに、「コンテンツ」というものは、どの国のものにもそれぞれ個性があり、歴史がある。その為コンテンツを作るうえで最も大事なのは、自分らしいアイデンティティーを持つことであると言うのである。
日本のコンテンツには「余白の美しさ」がある。
そう訴える著者は、日本のコンテンツはこれからどうすれば良いと思うか? という問いに対して、「エルメスになってください」と答えた。

2010年以降は、YouTubeNetflixAmazon PrimeSpotifyTikTokなどのプラットフォームが次々と登場し、世界中のユーザーをどのプラットフォームが一番獲得出来るかということにしのぎを削った。
だが、現在。2022年は「プラットフォームの時代」から「コンテンツの時代」への転換期だとも著者は訴える。
プラットフォームがコンテンツより力を持っていた時代は終焉を向かえ、今やコンテンツがプラットフォームを選ぶことが出来る様になった。
著者との対談コーナーで明石ガクト氏も、今、プラットフォームがコンテンツのボーダーを無くしている、と言っている通り、スマートフォンの普及とSNS時代の到来によって、誰もがコンテンツを発信出来る様になった。
また、アメリカから火がついて、段階的にグローバルヒットに至るなどといったかつての環境すらも、インターネットによって全世界的に同時多発的なムーブメントを起こせる世界がやってきているのだ。

「コンテンツやカルチャーがグローバルビジネスになる」
1990年代末頃から韓国はコンテンツ・ボーダーレスの可能性を実感していた。韓国は早めにコンテンツをパッケージ化して売り易い形にし、中華圏への輸出を始めたのだ。
そして、隣国である日本へも本格的に進出を始めた。
2001年にBoAが日本デビュー、2003年にはドラマ『冬のソナタ』がNHKで放送された。韓流ブームの到来である。
人口数からし国内需要に限りがある韓国は、1997年の国内金融危機以来、海外からのマネー確保を図ることを進める以外に選択肢は無かったと言える。
少子高齢化が叫ばれて久しい我が日本に於いても、外貨獲得は当然ながら最優先課題であろう。
そんな、境界のない時代の新しいコンテンツ戦略は、間違いなく学ぶべきことなのだ。
国境も、言語も、クリエイターと消費者という枠組みさえ、あらゆるボーダーは無くなった今、どう生き抜くか。
その答えは「自分らしさ」にこそあるのかもしれない。
そして、何十年経とうが変わらぬコンテンツの本質とは、「感動」と「共感」を与えることなのだ。

コンテンツ・ボーダーレス
作者: カン・ハンナ
発売日:2022年7月1日
メディア:単行本

 

 

【書評】エルメスになってください。『コンテンツ・ボーダーレス』

「コンテンツひとつで全世界を飛び回ることが出来る、無限の可能性が広がる時代なのです」
そう言う著者は、韓国ソウル出身。2001年に来日し、国際社会文化学者として韓国や日本など東アジアのコンテンツを様々な角度から研究してきた。また、タレントとしてメディアにも登場している女性だ。
彼女が思うに、「コンテンツ」というものは、どの国のものにもそれぞれ個性があり、歴史がある。その為コンテンツを作るうえで最も大事なのは、自分らしいアイデンティティーを持つことであると言うのである。
日本のコンテンツには「余白の美しさ」がある。
そう訴える著者は、日本のコンテンツはこれからどうすれば良いと思うか? という問いに対して、「エルメスになってください」と答えた。

2010年以降は、YouTubeNetflixAmazon PrimeSpotifyTikTokなどのプラットフォームが次々と登場し、世界中のユーザーをどのプラットフォームが一番獲得出来るかということにしのぎを削った。
だが、現在。2022年は「プラットフォームの時代」から「コンテンツの時代」への転換期だとも著者は訴える。
プラットフォームがコンテンツより力を持っていた時代は終焉を向かえ、今やコンテンツがプラットフォームを選ぶことが出来る様になった。
著者との対談コーナーで明石ガクト氏も、今、プラットフォームがコンテンツのボーダーを無くしている、と言っている通り、スマートフォンの普及とSNS時代の到来によって、誰もがコンテンツを発信出来る様になった。
また、アメリカから火がついて、段階的にグローバルヒットに至るなどといったかつての環境すらも、インターネットによって全世界的に同時多発的なムーブメントを起こせる世界がやってきているのだ。

「コンテンツやカルチャーがグローバルビジネスになる」
1990年代末頃から韓国はコンテンツ・ボーダーレスの可能性を実感していた。韓国は早めにコンテンツをパッケージ化して売り易い形にし、中華圏への輸出を始めたのだ。
そして、隣国である日本へも本格的に進出を始めた。
2001年にBoAが日本デビュー、2003年にはドラマ『冬のソナタ』がNHKで放送された。韓流ブームの到来である。
人口数からし国内需要に限りがある韓国は、1997年の国内金融危機以来、海外からのマネー確保を図ることを進める以外に選択肢は無かったと言える。
少子高齢化が叫ばれて久しい我が日本に於いても、外貨獲得は当然ながら最優先課題であろう。
そんな、境界のない時代の新しいコンテンツ戦略は、間違いなく学ぶべきことなのだ。
国境も、言語も、クリエイターと消費者という枠組みさえ、あらゆるボーダーは無くなった今、どう生き抜くか。
その答えは「自分らしさ」にこそあるのかもしれない。
そして、何十年経とうが変わらぬコンテンツの本質とは、「感動」と「共感」を与えることなのだ。

コンテンツ・ボーダーレス
作者: カン・ハンナ
発売日:2022年7月1日
メディア:単行本

 

 

【書評】記憶の中から、星のように美しい記憶を辿る『星を掬う』

 

元夫から、
命の危険を感じる程のDVを受ける主人公の千鶴。
千鶴は偶然にも、
小さい時に自分を捨て、出ていった母 聖子の居場所を
知る。頼るあてのない千鶴は、母と共に生活をすることに。
そこには、
母 聖子以外に、娘に逆に捨てられた彩子と、聖子をママと呼び慕う恵真の3人が暮らしていた。
3人に千鶴を加えた、女性4人の共同生活が始まる。

千鶴は元夫から受けた恐怖のトラウマのあまり、家の外に出られない。
母の聖子は40代で、若年性認知症を発症。
彩子は娘のためにせっせと働きに出ていたのだが、
旦那・旦那の両親・娘本人からも母親失格として貶められる。
美人で、ぷちインフルエンサーの恵真は、小学生の時、頼った男性の担任から逆に性的ないやがらせを受け、それから男性不信に。

というように、町田そのこさん作品あるあるの、登場人物全員が幸薄い設定。

3人で協力し、聖子を介護しながら、
なんとか支え合う共同生活だが、共同生活での安らぎの時間はほとんど続かない。

①母 聖子の病(若年性認知症)が徐々に、しかし確実に進行
・夜の徘徊
・トイレできなくなる
・人が誰だか分からなくなる 
・調子悪い時間が長くなるetc...

②音沙汰なかった彩子の娘の電撃訪問 
 さらに娘は妊娠しており、彩子に親としての最低限の責任を持って償えと、甘えてくる

③千鶴のDV元夫が、千鶴の居場所をみつけ、4人で暮らす家に乗り込んでくる

といった悲劇が重なる。

本作品で印象に残ったセリフは、ほぼ全て母 聖子のセリフ
『わたしの人生は、わたしだけのものだ』

『「自分の手でやることを美徳だと思うな。寄り添いあうのを当然だと思うな。ひとにはそれぞれ人生がある。母だろうが親だろうが、子どもだろうが侵しちゃいけないところがあるんだ」』

タイトルの「星を掬う」というのは、
宇宙のように拡がる記憶の中から、
星のように美しい記憶を辿るという意味。
記憶を辿ることは、星を掬うようなものだと。

病気のこと、家族のこと、色々と考えさせられる1冊。

本:星を掬う
作者:町田そのこ
発売日2021.10.18