HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】誰かの記憶に残り続けるということ『幼なじみ』

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本書は、佐藤正午氏がデビュー直後に書いた、幻の未発表作品である。本屋をふらついている時に、表紙の雰囲気と、帯に書かれていた「あなたの心の中に生きているのは、誰ですか?」という文章に惹きつけられて、手に取った。

50代の男性が、幼なじみの訃報を聞き、彼女との過去を回想するかたちで、物語は進む。彼女との思い出が、散りばめられた宝石のように、キラキラと断片的に甦る。

以前病を患ったときに、「私は三十だけ死んだ。」と言っていた彼女。
コーヒーを丁寧に入れる、華奢な彼女の後ろ姿。
照れながら手をつないだ小学生のとき。

そうした何気ない、ふとした瞬間が、今でも記憶に残る。

美しい過去だから憶えているのか。それとも過去だから美しいのか。彼女とはもう随分会っていなくて、そしてこれからも二度と会うことはなかったのかもしれない。

そして今になってこの世に彼女が存在していないと知ることは、むしろ心の中の彼女の存在を大きくするのかもしれない。果たして最後のとき、彼女は彼のことを想ったのだろうか。

15分程度で読めてしまう本書は、大人用の絵本といった体裁だ。牛尾篤氏の素敵な挿絵と、さらりとした、だけど心惹きつける文章。かなり地味だけれど、こういう作品は大好きだ。心を柔らかくほぐしてくれる。

その渦中にいるとなんでもない出来事が、あとから振り返ってみるととても尊いものだったと気づくことは、誰しもあるのではないだろうか。

本作は、そうしたかけがえのない日常への気づきを与えてくれる。また、著者の言葉に対するとてつもないこだわりを感じる。著者は日常でもずーっと言葉のことを考えてるんだとか。

お茶でも飲みながら、一息つきたいときに読んでみてください。

 

幼なじみ (Coffee Books)

幼なじみ (Coffee Books)

  • 作者:佐藤 正午
  • 発売日: 2009/02/06
  • メディア: 単行本
 

 

【書評】この世界は全て自分で決めて生きている。アンパンマンのマーチが教えてくれていた。子供の頃のシンプルな気持ちを忘れてしまった人に読んで欲しい。『EARTH GYPSY(あーす・じぷしー) 』

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先日東京から北海道に遊びにきてくれた友人は同じ大自然を目の前に全然感動していなかった。きっと「今」を楽しめなかったのでは?。心も頭も「ここにいなくていつも心配事やイライラを話していた。伝わるかはわからないけど、そんな友人にこの本は読んで貰いたい。

本書は双子の著者『なほ』と『まほ』が社会での生き辛さや格闘の中で本当の自分を取り戻していく姿、そして旅に出て生きる核心に気付き、『EARTH GYPSY』としてスタートさせるまでのストーリーが綴られているエッセイである。

"今を楽しむこと"、"自分で生きたい"だとまほが気づくまでの前半は読みながら涙が出てきた。変に大人になった今、当たり前のようで、なかなか出来ない事だ。

私がその中で感銘を受けたところから以下の2文を紹介したい。

“「努力」とはカッコいい言葉だけど、心を大切にする努力が人生で一番大事なはずだった。それをすっかり忘れていた。”

“お金もご飯も物もな、分け合ったら本当は貧えな人とか お腹が空いた人とかおらんくなるはずなんやで。人は分け合って生きて行けばいんや”

ここだけ抜き取ると綺麗事のように見えるかもしれない。しかし本気でそう生きていたら?。世の中はどう映るだろうか?あなたは自分の人生を生きているだろうか?


私は"いつか・もしを使って考えていた人生"を振り返ってみた。やりたいことが私にはあったはずだし、先送りにしている事があった。

“本当に、自由に自分が生きたい人生を選んでいたとしたら”

“壁はずっと越え続けなければならないんだ。越えられなかったら「頑張れない」として社会や会社からはみ出てしまう”

「頑張る」を「楽しむ」に変えるだけで見えている世界が少し変わった気がした。その「頑張る」は「楽しんでいる頑張る」なのかな?最近逃げ出したばかりの私には著書を通し「今、ここにいて良かった」と思えた。

そして本書の後半の旅では
“この世界は99%が思い通りになって、残りの1%が思い通りにならないんだ、そんな世界を選んで、生まれてきたんだ”とまとめられている。

え?反対じゃないの?と理解するのが難しいかもしれない。でも、そんな風に世界が見えたら不安もイライラも減るんじゃないかな?

この本には「まほのお守り」のような役目として『アンパンマンのマーチ』の歌詞が度々登場した。著書を読み終えて改めて聞いてみると子ども向けの唄なのに最後まで聞いてビックリした。あーすじぷしーを読み終え、しばらくは人生のテーマソングになりそうだ。

生きるのに不安だったり、退屈していたり、何かを忘れてしまった人に届いて欲しい。「私は、シンプルに生きたい。」と感じた一冊です。

 

 

 

【書評】人間とはかくもヘンテコな生きものなり『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』

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同じ現象でも見る角度や表現の仕方で、受け取る人の心証が異なります。意図的に表現の仕方を変えれば、相手の心証をコントロールすることができるかも? 本書はサザエさんのような身近な現象を元に、人間の経済行動の真実と理論が学べます。

物を買うという行為は顧客からすると大切な貨幣を提供すること。人は本来合理的な生きものなので、論理的に考えれば人間は可能な限り損をしないように行動をするはず。しかし、ある条件下では全く異なる行動を起こすことがわかっています。

人は価値判断をする際に、無意識に取ってしまっている行動があります。そこにちょっとしたトリックを加えることで、知らず知らずのうちに非合理的な選択へと誘導されているかもしれません。

例えばスーパーに行くと今では当たり前のようにあるPOP。真っ先に顧客の目につくように書かれたPOPに興味を惹かれることも多いのではないでしょうか。POP職人という言葉があるくらい重要であり、POPはお店の売上に大きな影響を与えている。POPを見た人間の心理が関わっているのです。

本書は行動経済学と銘打ってはいますが、本質は心理学です。人と人が交われば自然と感情が動き、行動が起こります。その感情の揺らぎの原因を知ることができると言ってもいいでしょう。物を売るビジネスをする人はもちろん、マネジメントやチームを統制している人には特にオススメです。

人の心情を無視した行動は上手くいきません。短期的には自分にのみ良い結果を出せたとしても、長期的に見たら必ずしっぺ返しをくらいます。行動経済学の各理論については入門編の立ち位置になりますが、知っておくだけで日常生活では非常に有用です。

 

 

【書評】顧客以上に顧客を知る『牛に化粧品を売る』

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「人口4000人の山に囲まれた田舎町で11年連続売り上げ日本一」。今みたいにECも無い時代、東京や大阪などの大都市を置き去り、専門店専用化粧品でNo1。「物が売れる」接客習慣のノウハウが満載です。

想像してみてください。田舎の化粧品店に牛舎で働く初老のおじいさんが来店されました。ご挨拶すると牛の名前を連呼されている。普通だったら困ってしまう状況です。こんな面白いエピソードを用いて、人間にも使える接客方法が学べます。

また、数ある接客習慣のなかでも「顧客台帳」の運用方法の徹底が凄いと感じました。内容は、名前、顔写真、家族構成(ペット含む)、購入品目、来店日時など、あらゆる情報を書き込み、従業員との共有も連絡帳を使い徹底。この作業を愚直に続けることで、「お客様にとって大切なことを知る」。もっと具体的に言うとお客様の生活する様子や考え方までイメージできるようになる。そうすれば、同じ商品だったとしても「あなたから買いたい」という状態を作れる。

本書は他に、「お客様は名前で呼ぶ」、「お客様を外見で選ばない」という基本から、「レジ3回作戦」、「手書きのDMの書き方」、「値引きではなく景品」など、実践的な内容が多く、販売や営業に携わる人にオススメです。

顧客以上に顧客のことを知り、顧客の特別なパートナーとして一生涯寄り添う。

ひとつひとつは難しくないことを愚直に続けることが、接客商売では重要だと改めて認識させられました。

 

牛に化粧品を売る

牛に化粧品を売る

 

 

【書評】会議の成功は参加者が納得すること!『ゼロから学べる! ファシリテーション超技術』

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本書は会議の司会、すなわちファシリテーターのための本である。会議の成功はなんだろうか?。短時間で済むこと?、盛り上がること?。それは全員が納得することである。

会議にも報告のための会議だとか、アイデア出しの会議だとか、何かを決める会議だとか色々ある。しかしどんな会議でも重要なのは全員が納得することである。

例えば短時間で終わらしたければ、多数決で決めれば良いがそれだと少数派は納得しない、リーダーが決定権を持つとすれば、参加者が参加する意義がなくなる。どうすれば全員を納得させることができるだろうか。

本書ではそのために多数の手法が紹介されているが、特にお勧めしていたのがKJ法だ。付箋を配ってみんなにアイデアをたくさん書いてもらって張り付けてまとめていくやつだ。

イデアを出せなかった人もいないし、まとめやすいし、みんなの裏の考えまで洗い出すことができてくるため納得感が得やすい。

また、本書ではファシリテーターは開催者がやること。会議の前に分刻みで会議のスケジュールを考えて、会議の初めに伝えること、リラックスさせるためにアイスブレイクを行うことなど、考えたこともない会議のテクニックが詰まっている。会議とはなんとなく話し合うことと思っている人は目を通しておくべきだ。

 

ゼロから学べる! ファシリテーション超技術
 

 

【書評】イノベーションの生み出し方『まんがでわかるデザイン思考』

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最近すごいペースでビジネス書の漫画が出ているがこの漫画もその一つ。イノベーションを生み出すデザイン思考が学べる本だ。

デザイン思考を学ぶために本作品ではカフェを舞台とする。売り上げが出ないカフェ。一体何が原因なのだろうか。

店長はひたすら顧客の観察を行う。仕事で使うために来ている人が多い。じゃあ、ソファー席ではダメで、椅子とテーブルに変えたらどうだろう。打ち合わせや、資料作りで利用している人が多いから書き込みができる机はどうだろうか?。そうして売り上げをどんどん上げでいくというストーリーだ。

デザイン思考は観察を行い、顧客の真の悩みを考え、アイデアを出し、プロトタイプを作る。この流れをまるでセミナーを受けているかのように学べるのが本作品だ。

デザイン思考とは何か。その1冊目には非常に有用だろう。そして、もっと勉強したい人は色々な名著にあたることをもちろんお勧めする。

まんがでわかるデザイン思考

まんがでわかるデザイン思考

 

 

【書評】環境が変わっても、遺伝情報は変えられない『その悩み「9割が勘違い」~科学的に不安は消せる~』

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人々が抱えるその悩みの原因は、実は自分自身にあるのではなく、人類が生き残るためにインプットされた遺伝情報によるもの。

そのため、環境が変わり、危険にさらされることが少なくなった現代でも、人は安全なことにまで過剰にストレスを感じてしまう。

本書では著者の専門である認知科学、研究を続けている生物学、脳科学、心理学により人々の悩みの解決法について伝えている。

例えば、人見知りが直らない、ついつい食べ過ぎてしまう、情熱が湧かない、周りの評価が気になる、おかしいと思っても反対意見が言えない、注射をするときの痛みをとる方法等、本書で紹介する悩みは様々だ。

評者も最近複数の悩みが浮上してしまった。特に仕事では、会社を何とか良い方向へ転換させようと行動しても、なかなか難しい。

そのため、休みの日や早退したわずかな時間でも、楽しみで満たそうとすれば、年配部下たちから「どうしたらいいんだ」と何度も何度も電話がかかってくる。元々電話は嫌いだが、本当にうんざりする。

来年どころか来月の見通しも、全くわからなくなってしまったが、どんな悩みも本書で伝えるように、自分の身に危険があるものではない。

先はわからなくても、できるうちは一つ一つその時の最善を選択し、今を楽しみ、好きなことや面白いこと、美味しいもので満たし、本書が伝える「ホット&クール思考」を身につけ、今、この瞬間を大事にすることが、悩みの解決になるようだ。

 

 

【書評】いいか。よく聞きゃあれ!俺は好きこのんで戦争してるんだ。あんたらと一緒にしねェでくれ!『気分はもう戦争』

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中ソ戦争が勃発する漫画作品である。
え?ソって何って?ああ、そうか。ソビエト社会主義共和国連邦、つまり・・・ええと、簡単に言えば今のロシアとその仲間たちのことだ。

矢作俊彦の作に、大友克洋の画である。これはもう堪らない。
当時二人は、ネオ・ハードボイルド小説作家と、ニューウエイブ漫画家としての地位を或る程度確立していたどうしだった。この二人がどういう運びかは知らないが、コンビを組んだのだ。

大友漫画は、それまで主流であった劇画調漫画と大きく異なり、強弱を廃した画一的なペンタッチと緻密な書き込み、それに反して大胆な空白を使用した構図を見せてくれたりと、斬新であった。
ドライで残酷でもありながら、すっとぼけてもいる作風も魅力であったが、最大の特徴は、登場人物を美男美女に描くことがなく、普通の平坦な顔をしたキャラクターしか出てこないところであった。もっとも、これは『アキラ』で覆される。

さて、本作は中ソ当事国だけでなく、韓国や、アメリカ、NATOイスラム圏内などを混ぜこぜながら、紛争勃発までをシリアスに描いた第一話から始まるが、以後は、矢作俊彦大友克洋が中ソ戦争漫画で一発当てようと奮戦するギャグパート、戦争により多くの日本人が運命を左右される様を描く読み切りのシリアスパート、ハチマキ、ボウイ、めがねの三人組が中国大陸を激しい戦闘をしながら渡り歩くギャグ(?)シリアス(?)パートが、交錯していく全十三話だ。

1980年頃を描いたものなので、そりゃ流石に古いっちゃ古いが、なかなか類を見ない作品ではあり、また、2019年には『漫画アクション』にて、『気分はもう戦争3(だったかも知れない)』が単発で掲載されて話題となったりと、未だに影響力のある作品ではあるので、機会があれば是非。

 

気分はもう戦争 (アクション・コミックス)

気分はもう戦争 (アクション・コミックス)

  • 発売日: 1982/01/24
  • メディア: コミック
 

 

【書評】いいか。よく聞きゃあれ!俺は好きこのんで戦争してるんだ。あんたらと一緒にしねェでくれ!『気分はもう戦争』

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中ソ戦争が勃発する漫画作品である。
え?ソって何って?ああ、そうか。ソビエト社会主義共和国連邦、つまり・・・ええと、簡単に言えば今のロシアとその仲間たちのことだ。

矢作俊彦の作に、大友克洋の画である。これはもう堪らない。
当時二人は、ネオ・ハードボイルド小説作家と、ニューウエイブ漫画家としての地位を或る程度確立していたどうしだった。この二人がどういう運びかは知らないが、コンビを組んだのだ。

大友漫画は、それまで主流であった劇画調漫画と大きく異なり、強弱を廃した画一的なペンタッチと緻密な書き込み、それに反して大胆な空白を使用した構図を見せてくれたりと、斬新であった。
ドライで残酷でもありながら、すっとぼけてもいる作風も魅力であったが、最大の特徴は、登場人物を美男美女に描くことがなく、普通の平坦な顔をしたキャラクターしか出てこないところであった。もっとも、これは『アキラ』で覆される。

さて、本作は中ソ当事国だけでなく、韓国や、アメリカ、NATOイスラム圏内などを混ぜこぜながら、紛争勃発までをシリアスに描いた第一話から始まるが、以後は、矢作俊彦大友克洋が中ソ戦争漫画で一発当てようと奮戦するギャグパート、戦争により多くの日本人が運命を左右される様を描く読み切りのシリアスパート、ハチマキ、ボウイ、めがねの三人組が中国大陸を激しい戦闘をしながら渡り歩くギャグ(?)シリアス(?)パートが、交錯していく全十三話だ。

1980年頃を描いたものなので、そりゃ流石に古いっちゃ古いが、なかなか類を見ない作品ではあり、また、2019年には『漫画アクション』にて、『気分はもう戦争3(だったかも知れない)』が単発で掲載されて話題となったりと、未だに影響力のある作品ではあるので、機会があれば是非。

 

気分はもう戦争 (アクション・コミックス)

気分はもう戦争 (アクション・コミックス)

  • 発売日: 1982/01/24
  • メディア: コミック
 

 

【書評】聖書は人生の取扱説明書である『人生に悩んだから「聖書」に相談してみた』

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Twitterのフォロワーが10万人を超える著者は言う。その悩み、聖書が解決してくれますよ。信仰とか教義の対象として重く考えられている聖書には、実はあなたの悩みを軽くする知恵がいっぱい詰まっています。あなたもこの1冊を読み終わるころには、心がほんの少し軽くなっているでしょう。

聖書と聞くと、分厚くて難しく、キリスト教の人が大切に読むもの、という印象がありました。中に出てくる有名な話はいくつか聞いたことがありますが、いざ読んでみるには少しハードルが高いと感じていました。でも実はそんなに難しいものではなく、普段の悩みを解決してくれるヒントがいっぱい詰まった本だったのです。

クリスマスなのに独りで寂しい。例えばこんな質問が著者に寄せられました。これに対して著者は、世界で最初のクリスマスイブとは、2000年前のイエスが生まれた夜のこと。真っ暗な飼葉桶の中でイエスは生まれた。クリスマスとはそのことを心に覚えておくための日だから、無理にキラキラする必要はないよ、と答えます。これにはクスっと笑ったし、今年のクリスマスはこの言い訳を使おうと思いました。

そんな感じで聖書に出てくる言葉や物語は、私たちの悩みをポジティブなものに変換してくれます。人生に悩みは尽きません。酒を飲んで忘れるも良し。友達に話すのも良し。そして、聖書に相談してみるのも良しだと思います。

その悩み、聖書が解決してくれるよ。今度誰かに言ってみたいですね。