HIU公式書評Blog

HIU公式書評ブログ

堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

MENU

【書評】バカこそ尊い。バカとは突き抜けた存在。世の偉人はみな、バカだと言ってよい。『バカ映画一直線!河崎実監督のすばらしき世界』

f:id:SyohyouBlog:20200706063919j:plain


名書である。何故イキナリ言い切るのかというと、河崎実監督とは既知の仲だからだ。
なので、本書を書店で見かけた時には、そっと棚から引き抜いて平置き”風”に置き換えることもある。

それはさておきまして。

河崎実監督は、「いかレスラー」「日本以外全部沈没」「地球防衛未亡人」などで「バカ映画の巨匠」と呼ばれる「どこに出しても恥ずかしい映画監督(なべやかん氏考案)」だ。
そしてこの本は、監督のライフワークである「電エース」シリーズ30周年記念として、監督初の書き下ろしで上梓されたものだ。

河崎実監督の原点は、とにかくウルトラマン加山雄三だ。これらのヒーローに心を鷲掴みにされた小学生が、そのまま大人に育ってしまった様な監督は、なかなかええとこの子だったので物持ちが良い。
小学校の頃の落書きから、円谷プロの倉庫から持ち帰ってきた怪獣の着ぐるみなど、様々なものが丁寧に保管、整理されているのだ!
だからこの本でも「電エース」を始め、「ヅラ刑事」「大怪獣モノ」「ギララの逆襲」「アウターマン」などの製作秘話・未発表の資料集が満載だ!

さて、監督の映画がどのくらいくだらないかというとだ・・・

「電エース」は、快楽星人の王子だ。気持ちが良くなると身長2000mの巨人に変身する。何故2000mなのかというと、電エースが凶器に使う東京タワーのミニチュアを用意したところ、逆算すると2000mになってしまっただけのことだ。
変身ツールは基本的には缶ビールだが、お酒が手近に無い場合は、温泉に入る、女性に抱きつくなどでも代用可能だ。

「地球防衛未亡人」は、AKB48ももいろクローバーZなどに断られた挙げ句に、ダメ元で壇蜜にオファーしてみたところ何故か快諾を受け、彼女のエロなイメージを活かしてタイトルを改変。
壇蜜だからダン隊員だ。それじゃ隊長にモロボシ・ダン森次晃嗣を起用して、「ダン隊員」と言わせてしまおうという、アレな感じだ。

「大怪獣モノ」は、完全にシン・ゴジラにぶち当てた便乗作品だ。「日本沈没」に合わせて「日本以外全部沈没」を公開したら大ヒットしてしまった甘い経験に基づく、濡れ手に粟の二番煎じだ。
突然現れた怪獣に対抗するために、薬品セタップX(スタップではありません)を注入して人間が巨大化するのだが、イケメン俳優が巨大化すると、何故か今や新日本プロレスのゴールデンスターである飯伏幸太選手になってしまい、怪獣相手にプロレス技が炸裂する!

と、こんなこと(だけ)を42年も続けている河崎実監督は生半可ではない。
覚えておいて欲しい。監督にとって、「くだらなかった」「時間を返してくれ」というのは最高の褒め言葉なのである。

因みに、製作30周年を記念し、勢いで私の会社で作ってしまったのが、「電エースの気持ちのいいお水」と言う、特許取得のサプリメント入りのとっても美味しくて健康になれるお水の電エースバージョンだ。
シリーズ最新作である「電エースキック」では、キラーアイテムとして、すげーくだらなく登場するので、要チェックなのだ!
そう。これは書評であると同時に、私の会社の商品の宣伝でもあったのだ!
どうだ。恐れ入ったか。わはははは。わは。ごほげほ。

 

バカ映画一直線!: 河崎実監督のすばらしき世界

バカ映画一直線!: 河崎実監督のすばらしき世界

  • 作者:実, 河崎
  • 発売日: 2019/03/20
  • メディア: 単行本
 

 

【書評】自分を追い詰めてしまう人へ 『フェアシンキング』

f:id:SyohyouBlog:20200706063003j:plain

 自分に自信が持てない、物事をネガティブに捉えてしまう、常に何かしら不安で落ち着かず、気分も落ち込み、なかなか幸福感が持てない。このような悩みを抱える方は非常に多いと思います。そして大体の対処法が「根拠のない自信を持とう」、「マイナスなことは考えないこと」、「常にポジティブでいよう!」などに終始してしまうと思います。

 著者の王丸典子氏はカリフォルニア州公認サイコロジスト・臨床心理学博士であり、認知行動療法を主にクライアントと向き合ってきました。フェアシンキングは認知行動療法をクライアント自身で行えるように王丸氏が簡素化した「心のセルフエクササイズ」になります。偏った考え方を見直し、別の思考パターンに導く方法のことです。

 人間は起こった出来事に対して認知(自動思考)、気分・感情、身体反応、行動という順番で反応します。認知行動療法はその入り口になる“認知‘(自動思考)”にアプローチしていき、不適切な認知を修正することで自分を追い詰める思考法から脱却を目指します。心理学者のエリスは「人は起こった出来事を誰でも同じように受け取る訳ではなく、必ずその人の特有な信念、考え、固定観念といった認知の枠組みを通して出来事を解釈し受け取っている。」と人間の認知を説明します。逆境が絶望かチャンスなのかはその人の認知、解釈次第なのです。

 自分を追い詰めてしまう認知を自分を助ける思考へ変化させましょう。ネガティブなことが浮かんだら一度反論して、客観的な思考に見直すのです。“この出来事はそんなに最悪なのか?絶望なのか?他人からそんなに強く非難されることなのか?” 客観的な視点で自分の思考を見直して、今の自分にとって最良と思える思考を選べるようになること。これがフェアシンキングの目的です。
 
 歪んだ認知のままではずっと自分を苦しめてしまいます。そういった場合は必ず公平な評価に基づき偏った思考を見直しましょう。本書は必ず役に立ちます。自分を大事にしてください。

 

フェアシンキング

フェアシンキング

 

 

【書評】つねに創造的な仕事をすることが、最も基本的な行動指針である。『成功への情熱-PASSION-』

f:id:SyohyouBlog:20200706062504j:plain



京セラグループと言えば、電気通信事業の自由化を受けて1984年に第二電電を創業したのを皮切りに、様々なジャンルの事業に手を拡げ、今や一大企業集団となっているが、その始まりは、上司との意見対立から職を辞し、「稲盛和夫の技術を世に問う場」として創業したセラミック工場であった。
しかしその後、労使トラブルをきっかけとして著者は当初の目的を捨て去り、京セラの経営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と定めることとした。

町工場からいかにして巨大企業となり得たのか。その理由を著者は、「企業哲学があり、それを全社員と共有できているから」と答える。
新しい会社を起こす際にも、M&Aで異なる文化と接した時でも、「哲学」、簡単に言えば「考え方」を伝え、共有するのだと言う。
本書にしても、米国企業を買収する際に、国民性を乗り越えて共生をするために、数日間の勉強会を行った際の資料として使った『心を高める、経営を伸ばす』と言う既存の著書が元となっている。

起業当初の著者は、技術的に難しい仕事を受注してきては、無理だという従業員を説得し、工夫を凝らし知恵を絞って、なんとか製品を完成させて顧客獲得を重ねた。
ポッと出の町工場には、他社ができない様な仕事を「できる!」と言い切り、やり切るしか新規開拓の道はない。
著者は、その頃から「自己の能力を未来進行形で捉えよ」と従業員に言い聞かせた。何としても夢を実現させようと強く思い、真摯な努力を続けるならば、能力は必ず向上し、道はひらける。
「人生の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力」である、と。

そして、事業を成功させ続けるためには、心を高め、徳のある人格を築き上げていくことと、高い目標を立て、毎日を全力で生きる。現状に甘んじることなく自分の限界にチャレンジし続ける精神的な強さと意志の力を養うことと説く。
これらのことを長年実践してきた結果が、現在の京セラグループを形付けることとなったのであろう。

そして、最後を締める言葉はこれだ。
「決してあきらめない」

 

 

成功への情熱―PASSION― (PHP文庫)

成功への情熱―PASSION― (PHP文庫)

  • 作者:稲盛 和夫
  • 発売日: 2001/01/05
  • メディア: 文庫
 

 

【書評】好きなことだけで生きていく。『限界集落(ギリギリ)温泉』

f:id:SyohyouBlog:20200706062305j:plain

伊豆の山奥にホームレスの溝田が流れ着いたところから物語は始まる。死にたがりのコスプレイヤー・アユや都会で落ちこぼれたオタクたちを巻き込んで、廃業寸前の温泉宿再建を計画する!

都会に疲れたゲームクリエイターネットアイドルを客寄せパンダにする。漫画家、モデラーなどクラフト系に強いスペシャリストは田舎で食っていけるのか?

「政治家とアイドルは実によく似てる!」「やりたいことを実現しようとしたら政治だった」と最終巻では宿屋の主人が下田市長選に立候補する。

著者の鈴木 みそさんは本書を含めた「2013年電子書籍の収支」を生々しく公開している。
https://bit.ly/2MIAOgs

温泉・ビール・海の幸に、綺麗所と自分たちで作ったイベントが加わった、新しい生き方のモデルである。

 

限界集落(ギリギリ)温泉第一巻

限界集落(ギリギリ)温泉第一巻

 

 

【書評】経済発展は心穏やかに暮らすためのもの。『アダム・スミス ぼくらはいかに働き、いかに生きるべきか』

f:id:SyohyouBlog:20200706061737j:plain



アダム・スミスは、1700年代に活躍し、「経済学の祖」と称されたイギリスの倫理学者・経済学者・哲学者である。

有名な著書である『国富論』に於いて、「富とは国民の労働で生産される必需品と便益品」であり、神が人間に与えた「利己心」をどんどん発揮することで、必需品、便益品が国民の間に広まり社会公益が進む、と定義したため、「利己心」を助長する人物であると評され、誤解を生んだ一面もあったらしいが、先に書かれている倫理学書『道徳感情論』を前提とすることで意味合いは変わってくる。

「規制の無い世界で自由に経済活動をすれば、見えざる手によって調整される」
と、するものの、
「適正な動機があって、適正に行動し、適正な結果が出たものが賞賛に値する。偶然の結果は褒められたものではなく、意図やその結果にいたる行動も伴っていなければ「善」とは言えない」
と、プロセスの重要性に注意を向けることにも怠らない。

「或る程度以上の豊かさでは幸福感は変化しない。また、幸福は持続しないが、上を求め続けるのは軽薄な人だ」
「自分のなかの裁判官に従う賢人として生きるか、周囲からの評価に左右される軽薄な人になるか」
「賢人は、たとえ自分に災難が降りかかっても、やがては大したことではなくなるということを理解している。そして、その時を予め見越して、最初から大したことではないと思うように努力する」
と、欲望に溺れることの無意味さを説きながら、信念を持って生き、動じることなく困難に当たるべきだと訴える。
既に今から250年以上前に、現代にも通じる様な数々の言葉を残していることに驚きを隠せない。
逆に言えば、何百年を経ても人間の本質は大した進化を果たしていないと言うことか。

さて、アダム・スミスは、本書以外の場に於いて、「幸福の条件」を三つ挙げている。
一 借金がないこと
一 良心の呵責がないこと
一 健康であること
実に人間的である。

 

 

【書評】自分に合った勉強法を見つけることが試験合格のコツ『税理士試験 この勉強法がすごい!』

f:id:SyohyouBlog:20200706063542j:plain

 税理士全体に占める20代の登録者数は全体の0.6%と極めて少数だ。本書にはそのような狭き門をくぐり抜けた著者の勉強法が記載されている。
 税理士試験は5科目の合格が必要になる。この1科目のボリュームが膨大で、しかも試験は年1回であるため、資格取得までは長丁場の戦いとなる。そのため、①膨大な知識を効率よく手にする記憶法の修得、②長期試験にモチベーションの維持が欠かせない。
 著者は①に関しては、脳のメカニズムに基づき、1日後・3日後・1週間後・1か月後と定期的な間隔での復習や、予備校授業の重要ポイントの見極めにより効率性を達成している。また、②に関しては、朝一番に行うべきタスクを自分に課し集中的にこなすこと、試験時期から逆算で算出しつつ、達成状況のフィードバックを行い、腹八分目のボリュームにより無理無くかつ軌道修正しやすい計画を立案することを実施していたという。
 なお、本書では著者の経験に基づき「税理士試験」が中心ターゲットとしているが、上記の内容以外にも様々な勉強法に触れられている。そのため、自分に合った勉強法を取捨選択することができるはずだ。
 平易な文体での記載であり、レイアウトも見やすくさらさらと読める内容なので、気軽に税理士の資格はどのような資格か知りたい人や、これから難関資格試験に挑戦する受験生に一読を勧めたい。

 

税理士試験 この勉強法がすごい!

税理士試験 この勉強法がすごい!

  • 作者:吉岡のん
  • 発売日: 2020/03/04
  • メディア: 単行本
 

 

【書評】政治家ではなく、実業家による政治『東京改造計画』

f:id:SyohyouBlog:20200706060945j:plain

Amazonで予約が開始されるや否や
堀江貴文氏、都知事選出馬へ 関係者は可能性に「99%」…7月投開票
https://bit.ly/2Zvp0pb
という憶測が日本中を駆け巡った。

江戸城再建」「大麻解禁」「低用量ピルで女性の働き方改革」など【東京都への緊急提言37項】どこから読んでも面白い。

中でも、悪平等意識への改革は大きなテーマである。例えば「本当の渋滞ゼロ」「満員電車は高くする」では、ダイナミック・プライシング。混雑時にワンコイン程度料金の上乗せを提唱する。

併せて「ETCゲートをなくす」「切符も改札機もなくす」ではAIでナンバーを読み取って課金、スマホQRコードを読み取る改札機の導入など。テクノロジーファーストな提案も目立つ!

NHKから国民を守る党の立花孝志党首による「選挙を取り仕切る人」「政治を実行する人」の分離。それの更に上をいく「政策を考える人」をも分離させた発展系である。

 

東京改造計画 (NewsPicks Book)

東京改造計画 (NewsPicks Book)

 

 

【書評】雨のせいで、二人殺した。O・K!そうしておこう。雨のせいにしておけばいいさ。『神様のピンチヒッター』

f:id:SyohyouBlog:20200705215402j:plain
矢作俊彦の存在を私が知ったのは、FM東京の『マンハッタン・オプ』という私立探偵物のラジオドラマの作者としてだった。洒落たセリフと、ハメットの名無しの探偵を彷彿とさせる味付け、チャンドラーを意識した様な文体で、いっぺんに気に入ったものだった。
その次には、『ハード・オン(画:平野仁)』、『気分はもう戦争(画:大友克洋)』といった漫画の原作者として再会した。
どうやら彼の本業が小説家らしいと気付いたのはその後のことだ。当時、SFとハードボイルドを嗜好していた私は、程なくして著者の小説を手にすることとなる。

著者のキーワードは、日活無国籍アクション映画と学生運動だ。特に漫画を含めての初期の作品らではその影響が顕著に感じられる。
太っていなかった頃の石原裕次郎、眉間にしわを寄せて無口になる前の渡哲也、フマキラーの様にブンブン拳銃を振り回す宍戸錠が大好きだったのだ。
おまけに著者は横浜生まれだ。

日活映画の斜陽に焦りを募らせ、新作映画の台本用にと書いた原稿を、周囲から「これじゃシナリオじゃなくて小説だ」と言われたことが小説家デビューのきっかけとなった。1972年のことだ。そして、そのデビュー作が『抱きしめたい』。若き殺人者”翎”の物語だ。
それから5年後には長編小説を出版し始め、スタイリッシュなネオ・ハードボイルドの旗手として注目されだすこととなる。

ここで紹介するのは、先述したデビュー作を含めた6作を編した短編集だ。
「抱きしめたい」
「夕焼けのスーパーマン
「王様の気分」
「言い出しかねて」
「神様のピンチヒッター」
「ひゃくパーセント・ダウンヒル

「気取り」に命を懸ける男たちの姿をお楽しみいただきたい。

 

 

【書評】公約とは?東京都知事とは?『東京改造計画』

f:id:SyohyouBlog:20200704225204j:plain
東京都知事選挙日まで5日を切った。
本書では冒頭にて、小池都政4年間の成果と合わせて、政治家はどうあるべきかについて述べられている。

小池都知事が公約として掲げた「七つの0」はほとんど達成されていない。
はっきりと達成の宣言ができたのは「ペット殺処分ゼロ」のみである。

これに限らず、言いっぱなしの公約が検証されない現状に著者は、自分のような民間企業の経営者ならクビになっているだろうと苦言を呈する。
政治家に求められているのは当選後、如何に改革を推し進めるかである。
聞こえの良い公約を掲げ、当選し、政治家で居続ける事では決してない。

本書は都政を改革するための37項目の提言により構成されているが、序章ではこの他にもう一つの提言が記されている。
保有している資源に資金を投入し、財政を潤し、都民により良い生活を提供するという考えには非常に共感できた。

都知事選挙日までに是非本書を手に取って一読して頂きたい。
その上で候補者の公約をもう一度見直してほしい。
実行可能なのか,都民の生活はどう変わるのか、各々が思考する事が最も重要だ。

 

東京改造計画 (NewsPicks Book)

東京改造計画 (NewsPicks Book)

 

 

【書評】生きるために、死を考える。『もしも一年後、この世にいないとしたら』

f:id:SyohyouBlog:20200704212517j:plain

現代は、人生100年時代だと言われる。そう聞くと、死は自分とは遠いところにあるものだと錯覚してしまう。けれど実際は、誰もが死と隣り合わせにある。

著者は精神腫瘍科医として、がんに罹患された方とそのご家族とともに死と向き合ってきた。本書では、そんな著者の日々の苦悩や気付きが記される。

著者自身、がんセンターでの仕事を始めるまでは「死」というものを考えてこなかったそうだ。けれど患者さんの死と向き合う中で、否応なしに「死」を見据えざるを得なくなった。そうして、ある時著者の中に初めて死生観というものが芽生えた。

死をどう見据えるようになったかというと、「死んだらすべてが終わる」と思うようになった。そして「どうせ終わりが来るんだし、あまりくよくよと考えず思いっきりやればいいじゃないか」という開き直りのような感覚が芽生えた。

それは虚無主義的な在り方と言えるのかもしれない。だが著者にとっては、死を見据えることによる絶望、恐怖を通り抜け、人生を初めて肯定的にとらえることができた瞬間だった。

そうして人生には期限があることを意識すると、自分の心の声に耳を傾けるようになる。けれど日々「しなければならない」ことをしてきた人にとって、「したいこと」をするのは、案外難しい。

そこで著者が提案するのが、会社を辞めるような大きな決断を衝動的にするのではなく、小さなところから自分の心の声を聴いてみること。

昼ごはんに本当に食べたいものを食べる、タイトルを眺めて自分の心が動いた映画を見てみる、ワクワクと心が反応した本を買ってみる。それくらい小さなことで構わない。

心のおもむくままにいきあたりばったり、というのがとても良いそうだ。目的や時間の制限を決めず、自分の心がどこにワクワクするのかを意識することが大切だ。

「死」をなるべく考えないようにする在り方は、現代社会のひとつの病理だと著者は考える。有限を意識することは、「大切な今を無駄にしないで生きよう」という心構えにつながる。死を見つめることはつまり、どう生きるかを見つめることなのである。

 

もしも一年後、この世にいないとしたら。

もしも一年後、この世にいないとしたら。