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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】人生の最後に何を食べたい? 『最後まで口から食べるために①』

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過去には、飲み込みの機能が落ちたら胃瘻等の経管栄養を選択するというケースが多かった。対して現在は、何とか最期まで口から食べさせてあげたいという支援が流行となっており、少しでも食べられる可能性のある人には希望の持てる時代に変わってきている。
本書は、口から食べる支援の科学性と、対象者の立場を重んじた人間性を両立させた支援の必要性を軸として飲み込みに困難を抱える方との接し方、考え方を解説している。

本書の特徴としてイラストや見やすい図が多くて読みやすいことが挙げられる。パラパラとめくって最後のページまで見ることができるし、図の色合いもいいため記憶に残りやすい。他の摂食嚥下機能に関わる本はいかにも専門的な本であるという内容で文章量も多く、頭に入りづらいが、本書のように本当に伝えたいことをシンプルにまとめていると、これだけ分かりやすいのだなと感じられる。

誤嚥性肺炎で入院となりむせ込みが目立つから、ソフト食やミキサー食しか食べられない。本当は食べたいのに、何で食べられないのかと、生活への意欲が低下してしまう。本書でも具体例として触れられているし、私自身もそういったケースに触れることがある。もちろん食べたいからといって、全ての人が食べられるようになるわけではないが、本人の希望に沿えるような試行錯誤や、評価のやり直しなどを行う必要性を本書は与えてくれる。

著者である牧野日和氏は、博士(歯学)、言語聴覚士認定心理士の3つの立場より、食べる障害を有する対象者とその家族に、科学的視点と人間味あふれる視点を両立させた支援を実施している。人生の最後に何を食べようかという「お食い締め」という言葉も提唱している。

本書は著者の想いを世に広めるためか、分かりやすく書かれている。既存の飲み込みに関わる本は、看護師やリハビリ職などの医療職に向けたものが多いが、現場の栄養士や介護士または対象者の家族にも伝わりやすい内容だと思う。普段、飲み込みに障害がある方に関わらない人にとっては、どこまで理解しやすい内容と言えるかは分からないが、他の本よりは分かりやすいので、少しでも興味があれば読んでもらいたい。