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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】自分だけに見えるこの美しい世界を永遠に残すために『永遠の門~ゴッホの見た未来~』

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本作は、フィンセント・ファン・ゴッホ氏の作画人生について書かれたものである。また、ゴッホ氏の生涯については、諸説あるため、監督なりの解釈により作られた。

ゴッホ氏が画家として活動していた当時、なかなか作品の良さを理解してもらえず、個展を開催しても、期間の途中で中止を余儀なくされたり、いまでは考えられないような扱いを受けていた。

また、人とのかかわり合いも難しく、芸術革命をおこそうと意気投合し、慕っていたポール・ゴーギャン氏との友人関係も、長くは続かなかった。

しかしゴッホ氏は、たとえ誰にも理解されなくても、自分が見た世界を人々と分かち合いたい。そして、この美しい世界を永遠に残すために、描かずにはいられなかったそうだ。

ゴッホ氏の後期の作品は、どれも色鮮やかなところが印象的だが、本作でも全編を通してゴッホ氏のその時々の感情が色で表現されているところが興味深い。太陽の光、そして影、自然溢れる美しさが、ゴッホ氏の描く作品と本作のストーリーとで連動している。

また、ゴッホ氏は黄色をこよなく愛し、黄色の家にも住んでいた。また黄色といえば代表作「ひまわり」や「麦畑」が思い浮かぶ。本作でも鮮やかな黄色の世界が広がり、それはゴッホ氏自身を表現している。

また、本作で広がる黄色の世界とは対称的にゴッホ氏を演じるウィレム・デフォー氏の青い瞳、そして鮮やかな青い服を終始、身に纏っていたことが印象的だ。黄色の世界の中に佇む反対色の青。ゴッホ氏の頭の中の幻想の世界でも、ゴッホ氏を際立たせるために表現されていたのだろう。

またゴッホ氏は、日本の浮世絵にも大変関心を抱いていたため、その作風は、そこからインスパイアされた部分もあるようだ。実際に400点以上の浮世絵をコレクションし、その浮世絵を模写することにより、自分の作品にもそのエッセンスを取り込んでいったのだと言う。

本作は、現実の世界とゴッホ氏目線の幻想の世界。二つの世界が鮮やかな色によって表現され、その世界を誰もが体感できるように作られた作品である。