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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】成功者の栄光とその苦悩。どのようにしてアレキサンダー・マックイーンになったのか『マックイーン~モードの反逆児~』

本作品はファッションデザイナー、リー・アレキサンダー・マックイーン氏の栄光とその影に隠れた苦悩、そしてその生涯について語られたドキュメンタリー作品である。

 

労働者階級の家庭で育ち、食べるにも困り、コネもなく失業保険で生地を買って、作品を作っていた。そしてとてもシャイだったという青年がどのようにして「アレキサンダー・マックイーン」になったのか。

 

マックイーン氏のファッションショーは、舞台や映画にインスパイアされた独自の世界観を持ち、演劇のような演出を行ったり、宇宙をテーマにし、ロボットを使い純白のドレスに色彩を噴射させたり、ファッションだけの枠におさまらない演出を行う。その過激さは「モードの反逆児」と言われ、大絶賛とバッシングの両方を浴び、若くして一躍、時の人となった。

 

しかし、マックイーン氏は10代で伝統的な英国服の仕立てを学び、舞台衣裳にも精通していたためその技術は、演出との相乗効果で、より服の魅力を引き立てていたという。

 

その実力は、多くのファッション関係者から認められ、彼のイメージとは真逆と言われた「ジバンシィ」のクリエイティブ・ディレクターに選ばれ、英国女王からは勲章が授与され、またイギリスのキャサリン妃が結婚式に着用したドレスも「アレキサンダー・マックイーン」のものである。

 

このような活躍により、デザイン界の寵児と言われたが、ありのまま、普通の自分でいたかったマックイーン氏に対し人々は王様のように扱い、彼の作品が認められるほど、苦悩も増していった。

 

自身のブランド「アレキサンダー・マックイーン」と「ジバンシィ」の両立。1年に10回以上のショーなど、いくら好きなことでも度を越えると、すべてが嫌になることは当然だ。

 

また、作品作りや、ショーの演出などは自分を表現するという意味合いで行っていても、そのインパクトが強いものほど、バッシングも激しくなり、誰もがその才能を評価するわけではなかった。

 

世の中に名前が出るような功績をあげている成功者のみが知る、その栄光に隠れた不安や孤独感、強いプレッシャーは、凄絶なものだろう。

 

表では、脚光を浴び、自信に満ち溢れ、人々が憧れるような存在ではあっても、裏では人知れぬ孤独感を常に背負い、背中で涙を流し、耐えているのだと思う。

 

本作品により、成功者の人生の光と影が深く感じられた。それでも、自分の好きなことをして、望んだ人生を選択して生きていく、それが人生の醍醐味であるに違いない。

 

また、マックイーン氏も参加していた世界4大コレクションでは、マックイーン氏にも劣らないようなデザイナー達の活躍や面白い演出を見ることができるだろう。いつかその迫力を直接肌で感じてみたいと思った。

mcqueen-movie.jp