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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】70年の時を超えて動き出した真実『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』

 

世界を代表する麒麟の舌を持つ男たちが、レシピを通して70年以上離れた2つの時代を交錯するストーリー。

本書は、もともと『料理の鉄人』を手掛けた演出家の田中経一氏により、ミステリー小説『麒麟の舌を持つ男』として出版された。その後、本書『レストレシピ』として改題され、また映画化もされた。

主人公の山形直太朗は「世界で一番、人が喜ぶ料理を作れる料理人になりたい」という夢から、宮内省大膳寮で天皇陛下の料理を作る宮廷料理人となった。

また、そこには大膳寮の料理長(主厨長)を務め「怪物」とも呼ばれる秋山徳蔵の姿もある。直太朗が大膳寮に入って一番良かったこととして、秋山徳蔵とのエピソードについても書かれている。

そもそも秋山徳蔵とは、TVドラマ『天皇の料理番』 で青年期からの料理人生について描かれ、注目された。評者は当時、夢中になってこの番組を見ていたことを思い出した。その同じ環境で料理を作っていた「山形直太朗」へも、もちろん興味を持たないはずがない。

本書のメインは、天皇陛下満州へ来た際の料理を作るという極秘任務だ。その料理とは清朝の宮廷料理である「満漢全席」を超える日本版料理「大日本帝国食菜全席」を作ることだった。

しかし、戦時下にあるこの時代、食材を手に入れるだけでも困難だっため、試作品も作れず直太朗は空想の中だけで、このレシピを作っていった。

なぜ、そんなことが容易にできたかというと、直太朗は一度口にしたものを再現できる才能を持っていたからだ。中国では、それを「伝説の麒麟の舌を持つ人」というそうだ。まさにそれは、音楽でいう絶対音感のようなものなのだ。

また、もう一つの時代、現代の主人公「佐々木充」は「最期の料理請負人」として、死期の近づいた人へ「人生の最期に何を食べたいか?」を叶えるために、その人の思い出の料理を再現する。佐々木もまた、一度食べたら記憶して忘れない舌を持っていたのだ。ここにもう一人の「麒麟の舌を持つ男」が存在する。

佐々木充は、一流の中国人シェフ楊晴明から「大日本帝国食菜全席」の再現という「最期の料理」を依頼された。この「大日本帝国食菜全席」とは、各200ページを超える、春夏秋冬4冊のレシピでできている。また、それぞれ51品ずつあり合計204品となる。

しかし、この「大日本帝国食菜全席」は、単なる世界一の料理ではなく、そこにはある陰謀が隠されていた。そのため、多くの人の人生が狂わされる衝撃の事実が待ち受けていた。

また本書の最後には、幻のメニュー「大日本帝国食菜全席」204品すべてが掲載されている。機会があれば、是非食べてみたいものだが、中でも本書のキーともなる冬のレシピその51「スッポン雑炊」は、最も興味深い一品である。

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (幻冬舎文庫)

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (幻冬舎文庫)