HIU公式書評Blog

HIU公式書評ブログ

堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

MENU

【書評】天才ハッカーがサイバー犯罪に挑む『王様達のヴァイキング』

 

本作品は主人公の是枝一希が世界を制するまでの物語だ。彼はバイトは何度もクビになり高校も中退、それらの根本とも言えるが何より人とのコミュニケーションが大の苦手だ。ただしそんな彼でも一つだけ天才的な能力を身につけていた、クラッキングだ。この物語はその能力を孤独に使っていた彼をエンジェル投資家の坂井大輔が暗闇の中から引き上げるところから始まる。

是枝一希はクラッキングを武器に、様々なサイバー犯罪に対し立ち向かう。彼にとってクラッキングは好きで好きで没頭し勝ち取ってきた、いわば自分の欲求を満たすためだけのものだ。そんな彼は壁にぶつかる度に、自身の欲求と初めてできた仲間との繋がりの間を何度も揺れ動く。手段を選ばず犯罪に手を染めてもその壁を破りたいという欲求と、一線を超えてしまったら今までの繋がりが消えてしまうという想いを、何度も行き来するのだ。10代という成長途中な少年の心の葛藤が怖いほど表れていることが、この作品に引き込まれる理由ではないだろうか。

作品の魅力は主人公の心の揺らぎであることは前述した通りであるが、もう一つの魅力は彼が決断した結果出来る仲間との繋がりだ。必ずしも全て正しい答えを出していくわけではないが、彼の選択によって有機的に新たな繋がりが生まれていく。自分自身の選択で置かれている現状を変えていける、そう思わせてくれる作品だ。