HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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21世紀版、非戦の書『頭に来てもアホと戦うな!』

東京で行われた勉強会が夕方に終わり、私は品川駅から名古屋駅までの帰りの新幹線に乗っていた。席はB席。幸い、隣のA席には優しい老婆が座り、Ⅽ席は空席のまま電車は品川駅を出発した。私はDVD『僕の彼女を紹介します』を見るためにPCを出し、そして休憩がてら読もうと読みかけの本も傍らに置いた。

映画『僕の彼女を紹介します』を集中して見ていると、急にⅭ席に「ズドン」とスーツ姿の中年の男が勢いよく座った。周りの乗客が音に驚きこちらを見る。その男は、後ろの家族連れに会釈もせず最大限まで席を倒しふんぞり返る。後ろの赤ちゃんはびっくりして泣き散らかす。ふんぞり返ったと思ったら、今度は前かがみになり、コンビニで買ったであろうカルビ弁当をくちゃくちゃと音を立てて食べ散らかす。口からカルビが飛び散り私のパソコンの画面に着く。「この非常識野郎が……」私は怒りの感情に支配されていた。
そして、その男は狭い席にも関わらず、私の方に靴の裏を向けて足を組み、本を読み始めた。
何を読んでいるかと思ったら、稲盛和夫氏の名著『生き方』だった。ちなみにサブタイトルは『人間として一番大切なこと』である。

「なにが利他の心だ。ちゃんちゃらおかしいわ。お前みたいな下品で礼節に欠け、他人の気持ちが分からないヤカラが増えたからそういう本を出さなきゃいけなくなったんだろうが。そんな高名な本を読む前に俺のパソコンの画面の上のお前の汚い口の中から飛んできたカルビの破片をどかせ。生き方を考え直す前にまず食べ方とマナーを見直せ。」

イライラが募り集中してDVD『僕の彼女を紹介します』を見れないのでパソコンをしまった。そして読書に切り替えようと自分の本を手にしたら、その本は「頭に来てもアホと戦うな!」だった。

「自分のことよりもアホに関心を持ったりするのは自分の責任である。戦うべきアホは相手でもなく、自分なのだ。アホと戦う暇があったら、そんなことを考えてしまう自分と戦うのだ。」私はそこを赤ペンで幾度も線を引いている。『生き方』を読むカルビ中年も私も同類の「アホ」だと気づいた。イライラと怒りで楽しく映画を見る予定だった1時間を消費し、もう新幹線は名古屋についていた。いくら本を読んでも全く身につかないな、と私はしみじみ思った。

皆さんはこの本を読み、私のように怒りの感情に支配されずに生きてください。
『僕はこの本を紹介します。』