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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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コンプレックスを克服するための本ではありません『コンプレックス文化論』

『コンプレックス文化論』著者:武田砂鉄(2017/7/15、文藝春秋

「コンプレックス」と聞いて、何が思い浮かぶだろうか。この本は、天然パーマ、下戸、解雇、一重、親が金持ち、セーラー服、遅刻、実家暮らし、背が低い、ハゲというコンプレックスになりがちな代表的な特徴を1章ごとに取り上げ、深い考察をまとめた1冊だ。
しかし勘違いされては困るのは、あとがきにも書かれているように、「小さいことにクヨクヨするな」というようにコンプレックスを解決しようとする本ではないということだ。むしろ、「コンプレックスを引きずってしまえばいいではないか」という主張のもと、コンプレックスについてしつこく探求した本である。
こんなテーマで文章を書く著者のひねくれ具合に若干呆れつつも、そのひねくれた視点でくどくどと掘り下げられていく文章には中毒性があり、世界の新しい見方に気づかされる。
たとえば「一重」の章は「二重ファシズムの中で」という見出しで始まり、ある年のAKB48選抜メンバー16人全員が二重であることに気づいたという文章が続いている。
言われてみて初めて、現代は「二重ファシズム」の世の中であることに気づかされた。私は小学生の頃は奥二重だったが、中学生くらいからだんだんと二重になった(こう書くと奇跡のようだが小学生の頃から疲れたり熱が出たりすると二重になっていたため、中学から慢性的に疲れている状態になったと解釈している)目の持ち主だ。もしも今でも一重だったら、「二重ファシズム」の世の中であることにもっと前から気づいていただろう。コンプレックスとはこのように、持っていない人からしたら、本当に取るに足らない小さなことだが、当事者にとってはそうもいかないという不思議なものなのだ。
もう一度言うとコンプレックスを解消するための前向きな自己啓発本では決してない。しかし、自分にはないコンプレックスについて他人事として楽しむ読み方も、自分のコンプレックスについて客観的な分析をもとに向き合ってみる読み方も、どちらもおすすめできる一冊だ。