HIU公式書評Blog

HIU公式書評ブログ

堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

MENU

相手をストーリーに巻き込め!『人生の勝算』

 

『人生の勝算』著者:前田裕二(幻冬舎、2017/6/30)

本書にはSHOWROOMというエンターテイメントサービスを立ち上げた著者の血肉が詰まっている。
彼の熱量をここで説明してしまうのはいささか野暮な気がするので、彼の焼け焦げるような熱量はぜひ本書を手に取って感じて欲しい。

ここでは著者の考え方に触れよう。
幾分私自身の解釈が含まれていることは許してほしい。
著者はエンターテイメントにおける“質”の意味が変わってきているという。質の高さとは、受け手が「どれだけ自分のストーリーとして感じられるか」に影響されるという。
この話を聞くと、文脈として想起されるのが東 浩紀の著書『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』だ。この書籍ではコンテンツの消費の仕方が過去には世界観やストーリーなど大きな物語そのものではなく、部分的に切り取られ消費されるようになったと綴られていた。動物化するポストモダンからも、大きな物語の消費も部分的な要素もコンテンツの所有・主導権は発信者にあったはずだが、著者は発信者と受信者が繋がりを持った上で、それらを受信者にも共有することでコンテンツの質が高まるのだと言う。確かに情報が溢れ「情報の信頼度」という指標を機能させづらい現代で、「自分との関係度」が質の指標になるのは想像に硬くない。現にネットで検索するものはいつだって“自分が”気になることだ。

30年という短い時間を生きてきた中での体感としても、やはり質の意味するものが変わってきたと思う。本書でも取り上げているが、AKB48が好例だ。手の届かない高い完成度のコンテンツより、たとえ隙があって発展途上のだとしても、そこに自分自身との繋がりを見つけられるものであれば、受け手にとっては上級品質のコンテンツとして歓迎される。

本書はコンテンツの未来を指し示す新しいコンパスだ。何を目指して進めばいいのか悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。きっとこの書籍が「こっちだよ」と導いてくれるはずだ。