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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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『本物の思考力』

『本物の思考力』著者:出口治明(小学館新書、2017/4/4)

-間違った常識を疑え-

最近の世の中は思い込みや固定概念に縛られていて、常識を疑うことができなくなり、物事の本質を見誤る。数字(データ)、ファクト(事実)、ロジック(論理、論法)に基づき思考する。

まず、高度経済成長期を通り抜けてきた企業モデル。「冷戦」、「人口増加」、「製造業が牽引する開国・富国モデル」この3つの条件であった。だが今となって見れば冷戦は終結、人口減少、工場モデルはサービス産業モデルにとって変わってしまっており、全てが消失してしまっている。それなのになぜ企業は昔ながらの常識を植えつけて高度経済成長期と変わらぬ働き方をするのであろうか?その原因は経営幹部が高齢化して現在の日本社会を牛耳っている幹部クラスの人々が、過去の成功を捨てきらず、従来の働き方を若い世代にも押し付けている点。特に問題になっているのが長時間労働ではないかと思う。長時間労働を押し付けられた若手社員は心も体も疲弊し、バイタリティ溢れる社員が潰れていく光景は見ていられない。

最近よく話題になるSNS疲れ。友達が多く余暇が充実している人を羨ましいと思うなら「自分も仲間に入れてよ!」と申し出ればいい。自分で企画するなり行動すればいい。南国でバカンスを過ごす友人に嫉妬するならさっさと休みの日に自分で出かけてみればいかがかと思う。知人が出世したことが羨ましいのなら、自分も出世を目指せばいい。でもやってみたからといって全てがうまく行くとは限らない。しかしそこで初めて自分の向き・不向きが分かることが多いのも事実である。自分のことは自分でもよく分かっていないのが当たり前であることをしっかり理解する。

世の中の物事全てはトレードオフで何かを選ぶことは、別の何かを諦めることである。終わってしまったことは後悔しても仕方がない。ならば後悔している時間があるならば他のことに時間を割いた方がいいに決まっている。そういうふうに発想を切り替えれば人生はどんどんと前に進んで行ける。

数字、ファクト、ロジックと聞くと「難しい」「理屈っぽい」と感じるかもしれない。実際はむしろ逆である。自分の頭で考えることができるようになると、周囲の複雑な情報から判断に迷ったり、あとで悔やんだりすることが圧倒的に少なくなるので精神的にも時間的にも余裕が出てくる。さらには、「自分は自由である」という感覚が出てくる。

人間というのは失敗する生き物である。失敗するたびに「挽回しなくては」と思うことがあるかもしれないが、そんなことは思う必要はない。なぜならやがて失敗することが怖くなり身動きが取れなくなってしまうからである。何かにトライして成功したら100点、失敗に終わればマイナス100点という採点ではなく、成功したら100点、失敗してもその経験値を絶対値と捉え100点、つまり合計200点という採点で喜怒哀楽の総量として人生を捉えるようにする。失敗も成功も経験したことには違いはないので、経験していない人よりは遥かに知識は増えているので物事を判断する時の材料になるでしょう。それが人生経験であり、賢くなることができるであろう。

著者の出口治明さんはライフネット生命の創設者だ。2006年に創業されたまだ若い会社である。生命保険業は長いサイクルのビジネスである。今後、世の中はどう変化して行くか分からない。時代に沿った臨機応変な対応が求められるこのご時世、必要になってくるのは判断力ではないかと思う。その判断の裏付けに数字、ファクト、ロジックを分析して答えを出してくことが大切であると感じた。