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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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したたかに進化する『植物はなぜ薬を作るのか』 著者 斉藤 和季 (文春新書、2017/2/17)

植物成分といった言葉が持っているイメージ。”自然の恵み”、”自然からの贈り物”など、優しく、健康をもたらしてくれるものといった良いイメージを持っている人が多い。

しかし、これは人間側から見たときの勝手なイメージである。

植物の側から見たときは、どうだろうか。そういったことを植物はまったく考えていないとすると、植物はなぜ化学成分を作るようになったのだろうか。

本書は、そのような問いかけに答えようと、書かれた本である。著者は、千葉大学薬学部教授の斉藤和季氏で、薬学の世界に40年以上も関わっているとのことだ。

本書によると、植物は独自に発達させた生存戦略を持っている。同化代謝戦略、繁殖戦略、化学防御戦略の3つだ。同化代謝戦略とは、ここでは光合成のことであり、繁殖戦略とは、風媒花や虫媒花といった後代を残すための生殖活動のことである。そして、この3つの中で、本書のタイトルである『植物はなぜ薬を作るのか』につながるのが、化学防御戦略である。

植物は以下の化学防御戦略により、生き残ってきた。

・捕食者に対して、苦い味や渋い味、あるいは神経を麻痺させるなどの有毒な化学成分を作る
・病原菌に対して、その増殖を抑える抗菌性のある化学成分を作る
・日光や無機栄養塩などの必要な資源を競う他の植物に対して、その生長を抑えこむ化学成分を生産する

これらの化学防御戦略と進化により、結果的に人間にとって必要な薬を作り、人間を助けることにつながっていったのだ。

本書では薬が作られる仕組みの他にも、薬になった植物成分の身近な例やバイオテクノロジーによる植物成分の人工的な生産についての説明がある。また、所々で化学構造式が出てくるが、私のようにまったく理解できない人には、「挿絵やイラスト、マンガだと思ってください」と著者が言っているので、その点は安心してほしい。

それにしても、生存戦略をもって繁栄していく植物は、とてもしたたかな存在であることに間違いない。大地にしっかりと根を張り、生き続ける植物のしたたかさに思いを馳せるのも面白い。