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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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これを読むだけで化学産業まるわかり『「ケミカルビジネスエキスパート』養成講座』

『「ケミカルビジネスエキスパート』養成講座』 田島慶三

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これまでの日本および世界での化学産業の歴史、業界別の産業についての動向、
またその情報の入手法、関連法律などについてまとめた本であり、すべての化学産業に関わる人間、関わろうとしている人間の必読書である。
逆に言えば、本書を読むだけで何十年前から化学業界にいたかのような知識を得ることができる裏技のような本である。

科学史や伝記が好きな自分としてはコロンブスが大陸以外に発見していた非常に重要なものについての記述が非常に興味深かった。
『ゴム』の発見も実はコロンブスがしていたというのである。

コロンブスはアメリカ大陸に行ったとき、原住民がゴムボールで遊んでいるのを見たことが現在のゴム産業へとつながっているらしい。、
他にも化学、医薬品産業というのは人体実験の歴史であることは知っていて面白かったが、
それらを楽しむには「世にも奇妙な人体実験の歴史」「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」を読むほうが面白い。

勉強になると思った点についてはこれからの化学産業の動向についてだ。
日本においてはどんどんと高齢化が進むため、医薬品や医療分野を考えた産業が、
世界に目を向けると、人口増加に伴う食料生産のための肥料農薬の分野がこれからの化学産業での重要課題であり、成長市場であるということ。
これらについては、どこの化学企業においても重要課題であるとの共通認識があると思う。
日本の立場としてはグローバル化が進む今、それぞれの会社での強みをいかし、海外へと向かう時期に来ているらしい。

ところで、この本の出版社である化学工業日報社とは1937年に創業した化学工業に関する業界紙「化学工業日報」や「化学経済」を出版している会社で、
そこで毎年刊行されているケミカルビズネスガイドをもととして、書き直したのがこの本である。
タイトルに改訂版とついているが、2014年に発売したものの改訂版で2014年に発売したものという意味である。
改定では、新しく第2部:殺菌剤・消毒薬・抗菌剤、試薬、家庭用殺虫剤、第5部:倫理[コンプライアンスほか]が追加されている。
おそらくこれらの分野が、2010年から2014年までの4年間の間に重要性が増してきた分野だと考えられる。

また、著者は日本化学会フェローで、東大工学部応用化学出身修士課程修了後、通産省に入り、40歳前に三井化学に移り、
主として研究統括部で欧米の化学企業の動向について調査された方である。
会社にずっといたわけでない分冷静に物事を見ることができると化学業界での評価が高い。
その後、2008年に定年退職し、世界と日本の化学企業の歴史と経営戦略を月刊誌「現代化学」に2011年から2012年にかけて連載していたようだ。

とにかく、全化学産業に関わる方、これから関わるかもしれない方、関わりたいと考えている方には必読書である。

世にも奇妙な人体実験の歴史『トレヴァー・ノートン
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解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯 『ウェンディ・ムーア』
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