小説
井上真偽の『ムシカ 鎮虫譜』は、音楽とホラーの融合が生み出す独特の世界観を持つ小説です。瀬戸内海の小さな無人島を舞台に、音大生たちと巫女たちが虫を鎮めるという、異色のストーリーを展開します。 物語は、夏休みにこの島を訪れた音大生たちから始ま…
「比ぶ者なき」は、ある種の革新的な作品であり、私が初めて経験する、藤原不比等を主人公に据えた歴史小説でした。馳星周は彼の物語を通じて、我々に一つの仮説を提示しています。それは、、、藤原北家が、自らと天皇家を絶対的な存在として確立するために…
「夜市」台湾の夜市とは全く関係のない、恒川光太郎によるホラー小説です。裕司という男性が主人公で、彼は幼いころに不思議な市場「夜市」に迷い込み、そこで弟と引き換えに「野球選手の才能」を手に入れました。 「夜市」は人間の欲望とその代償について考…
こちらは日常と非日常の境界に立つ人々の奇妙な物語である。現実と幻想が交錯する中、読者は深い心理的なテーマと対峙することになるだろう。本作は作者の安部 公房の死後に発見された未完の作品であり、話が途中で終わってしまうのだが、非常に魅力的で不思…
短篇集というものは割と奇抜なものに出会い易い。長篇作とは異なり、作者も何かしらのチャレンジを行なうのにハードルが低いのだ。初っ端の『待機員』がその一つ。舞台設定自体がふざけていて、コンピュータが大統領を勤める未来の合衆国で、主人公は失業者…
短篇集というものは割と奇抜なものに出会い易い。長篇作とは異なり、作者も何かしらのチャレンジを行なうのにハードルが低いのだ。初っ端の『待機員』がその一つ。舞台設定自体がふざけていて、コンピュータが大統領を勤める未来の合衆国で、主人公は失業者…
『スターウォーズ』みたいなピュンピュンと光線が飛び交う様なスペースオペラは別として、割とSF映画が好きだ。1996年に公開された『スクリーマーズ』という、ちっと変態チックなホラー感アリの映画も結構面白かったのだが、エンドロールでディックの短篇小…
一斉を風靡したインパクトありすぎるタイトル、映画を観た方も多そうだ。その原作本。読後先ず思ったのは、もし自分自身が「この作品で映画を作る監督になったら?」各場面をどう映像化するか。とクリエイティブ魂がモクモク湧いてきそうだ、というものだ。 …
久し振りの二村永爾シリーズ。作家デビュー間もない頃、1972年の短編に於いて神奈川県警の刑事として登場した二村永爾は、矢作俊彦としては異例で、他に類を見ないことなのだが、その後長らく登場することになった人物だ。三作の短編を経て、1978年に長編一…
桟橋に人だかりができている。夕日を見るために、人々は集まっている。夕方が一番素敵な時間、とは何故だろうなと読みながら考えていた。著者はカズオ・イシグロ氏。 もちろん朝の時間も好きだ。起きて窓をあけると、橙色の雲が空を包んで、鼻腔に澄んだ透明…
戦時中に起きた米兵解剖実験をモチーフにした小説。勝呂という無愛想で謎多き医者がいて、彼のクリニックに肺を病んだ患者が尋ねてくる。勝呂は嫁にも看護師にも逃げられた孤高のドクターで、無口だが腕は確かだ。患者は勝呂医師の経歴が気になり、新聞で調…
これをお読みの皆さんは、小説と聞いて、どのように思うだろうか?「ただの娯楽さ」と片付けることは可能だ。しかし、小説からは多くのことを学べる。本書は、はらだみずきさんの『海が見える家』だ。僕が興奮したのは、まず舞台が館山だからだ。千葉県であ…
1980年、米中間で起きた衝突により勃発した第三次世界大戦。戦後、世界はワルシャワを中心とする共産主義体制と、ヨーロッパ・アメリカ合衆国(USEA)とに二極化された。90年代には、USEAでは大統領ではなくそのファーストレディの方が民衆の圧倒的な信頼と…
今は当たり前のように生活していますが、大東亜戦争(第二次世界大戦)で多くの若者が命を捧げました。この小説はその若者の一人である、宮部久蔵の人生を追ったものです。この物語を通して、改めて生きることの尊さやありがたさを感じることができる一冊で…
ハードで形而上的な作品が多い印象のフィリップ・K・ディックであるが、これはなかなか手強い小説だった。舞台設定、状況説明が殆ど無いまま、様々な人々が現れ、複数の箇所に於いて話が進んでいくので、何が行なわれているのか、何を描こうとしているのか、…
SF界の鬼才フィリップ・K・ディックは、優れたアイデア・ストーリーを多数著した。表題作「マイノリティ・リポート」は、トム・クルーズ主演、スティーブン・スピルバーグ監督で2002年に映画化されたが、その設定はやはり特異なアイデアによって成り立ってい…
ハードボイルド探偵小説界に於ける希代の名作家レイモンド・チャンドラー。その全中短篇を網羅しようという短篇全集の第2巻目に収録されているのは、1936年から1937年にかけて発表された七篇である。今回も、一作毎に翻訳者を変えており、読み比べてみれば、…
村上春樹による『ロング・グッドバイ』の新訳が刊行された影響で、改めてレイモンド・チャンドラーの作品が再評価されたのを機に、新訳で編まれた短中篇全集全4巻が発刊された。なかなかの商売上手ではないか。しかも、一作毎に翻訳者を変えるという凝りよう…
「現代で最も重要なSF作家の一人」と呼ばれる迄になったフィリップ・K・ディックであるが、最も有名な作品は、映画『ブレードランナー』の原作として知られる『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』であろう。自作の初映画化であった『ブレードランナー』…
村上 春樹待望の長篇小説『街とその不確かな壁』若き日の初恋の相手への深い愛、忘れられない愛の扱いに苦悩する中年男性。現実社会からファンタジーワールドへ迷い込む、そしてその境界線は不明瞭。謎に満ちた世界へとあなたを誘う。 漆黒の分厚いハードカ…
1922年にデビューし、アーネスト・ヘミングウェイを祖とするハードボイルド手法を、推理小説に持ち込んで成功させたのはサミュエル・ダシール・ハメットであったが、続いて1933年にハメットと同じく、推理小説パルプ・マガジン『ブラック・マスク』誌でデビ…
「あいつが、あいつが家にいるみたい。お願い早く来て、助けてー」と切迫した場面から物語は始まる。何処からどういった切り口でこの書評を纏めるか、に悩むという良い意味で贅沢な小説である。一言の台詞に至る背景や心理描写の精密さが持ち味ともいえる作…
本書は、1965年に『週刊少年マガジン』でメジャー化してからの鬼太郎のお話バージョンである。メジャー化とは言っても、テレビアニメ第3シリーズ(1985年〜1988年、全108回)以降のイメージしかない方がこの原作を読んだら、違和感バリバリであろうと思う。…
誰からだったかはすっかりポンっと忘れてしまっているが、薦められるまま読んでみたら、これがやたらめったらとんでもなく面白い冒険活劇一大浪漫小説だった。嘘だと思ったら読んでみてちょーだい。戦前の満州を舞台に、日本人でありながら馬賊の攬把(ラン…
誰からだったかはすっかりポンっと忘れてしまっているが、薦められるまま読んでみたら、これがやたらめったらとんでもなく面白い冒険活劇一大浪漫小説だった。嘘だと思ったら読んでみてちょーだい。戦前の満州を舞台に、日本人でありながら馬賊の攬把(ラン…
家政婦をしているシングルマザーの主人公は新しい仕事先へ向かう。そこで出会ったのは80分しか記憶の持たない数学博士。主人公の誕生日を聞いて「友愛数だ!」というように何事も数学で頭が満たされている。数学以外はあまり興味のない博士だが、ある日主人…
特に取り柄がある訳でもない、冴えなーい若者ヒロシは、ある日突然まんまヤーさんな二人組に声をかけられる。思いっきり警戒するヒロシに向かって、ヤーさん二人組は唐突な申し出をする。「映画俳優になりたくないか?」どうして僕みたいな非モテが・・・と…
読書中はとにかく難解で読み終わったら虚無。そんな感想を素直に持ちました。タイトルにある「ゴドー」を待っているというストーリーです。 詳しく言いますと、2人の浮浪者が良くわからない会話をしており、どこからともなく更に2人がやってきて会話に参加…
主人公の梨木匠はどこにでもいる普通の大学生。平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。 ところが、バイト先で出会った看護学生の常盤さんは、誰にも心を開いていないみたいで、匠は…
婚活アプリて知り合った架と真美。結婚の段取りをすすめていた2人。ある日真美は忽然と姿を消してしまう。 失踪前に真美が漏らしていたストーカーの存在。真美は事件に巻き込まれてしまったのか?架はストーカーの正体を必死で探す。 果たして真美の安否は?…