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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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素振りしたくなる 『最強の働き方』

本書は、著者に思いつきやひらめきを与えた世界中の一流ビジネスパーソンの働き方や、生活習慣、考え方をまとめた本である。

また、本書は業界を問わず、自分が選んだ分野で最高水準の仕事をするための行動指針を、具体的な行動にまで落とし込むことができるように支援することを目的としている。

著者は、ベストセラー『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』、『一流の育て方』の著者であるムーギー・キム氏だ。

本書の構成は、以下のとおり。5つの章に、最高水準の仕事をするための幅広い行動指針が77カ条の教訓として書かれている。

第1章 一流への道は一流の基本から ―― 知らない秘策より、知っている基本の完成度
第2章 一流の自己管理 ―― 一流への道は生活習慣から
第3章 一流の心構え(マインドセット) ―― 一流と二流の間にあるもの
第4章 一流のリーダーシップ ―― まわりから支えられる人はココが違う
第5章 一流の自己実現 ―― 自分を知り、自分を自由にする

著者によると、ビジネスパーソンとしての基本は第1章と第2章を、すでに中堅社員の方には第3章を、会社のリーダーとなり、より高みを目指す方には第4章を、仕事を越えた自己実現を求める段階の方には第5章を読むことを勧めている。

実は、本書を読み終わってから、毎日、少年時代にやっていた野球の素振りをしているような気持ちでいる。基本に戻り、自分の行動はどうなのか、一振り一振り確かめながら、毎日を過ごしているのだ。

”本書は、新人・中堅・ベテランを問わず「ビジネス研修・社会人研修の教科書」として最適な一冊に仕上がっている。”と著者が言っているように、本書は基本書として何度も読み返すための本であると言える。世界中の一流のビジネスパーソンといえども、最も大切なのは基本であり、毎日の素振りが大切なのだ。

本書を読み終えたときには、あなたも私と同じように素振りしたくなっているだろう。そして、基本に戻って素振りをしてみると、とても気持ちが良い自分に気付くはずだ。何度も何度も読み返したい、おすすめの一冊である。

 

 

 

ウケる会話の本質は、「聞く」『「おもしろい人」の会話の公式 気のきいた一言がパッと出てくる!』 著者 吉田照幸(SBクリエイティブ、2015/2/15)

   どうせ話をするからには、ウケたい。そう思って、面白いこと言おうとしてませんか?実は、ウケるためには、面白い話なんて必要ない。面白いことを言って、相手が笑ってくれたと思っていても、実は無理して笑ってることだってある。ウケるために必要なのは、相手に気持ちよくなってもらうこと。気持ちよく話してもらうことが何よりも大切になってくる。そう、聞く技術、すなわち、相手の話を引き出す技術こそが、ウケるために必要なのだ。


 本書では、相手の話を引き出す技術がたくさん紹介されているが、その中でも私が特に注目したのは、話の内容よりも前の部分。相手が話しやすい場を作る、という部分だ。会話には、その内容と同じくらい、時によってはそれ以上に、環境が影響してくる。例えば、お通夜で笑い話をする人や、祝いの席で悲しい話をする人は、あまりいないだろう。相手の面白い話を引き出すためには、その話が出てきやすい場を作ってあげることが最初の一歩なのである。


 また、本書では、解説した技術の一つ一つに、会話の具体例が付いてくる。そのため、この具体例を改変すれば、本書を読んでからすぐにでも実践に移すことができるのだ。


 自分の話は面白くない、あまり笑ってもらったことがない、と悩んでいる人にはもちろんのこと、何か面白いことを言おうとしてから回ってしまう人、会話の主導権をいつも握れるくらいコミュニケーション能力の高い人にも、ぜひ一度は読んでみてもらいたい一冊である。

ダメなものはダメ。どんなに好きでも。 『ハチミツとクローバー』 著者 羽海野チカ (講談社 2002年8月〜2006年9月)

 恋愛は、自分だけの問題じゃない。相手がいて、相手の気持ちがあって初めて成立するのだ。こんな当たり前のことを、本書は痛みを伴って伝えてくれる。この漫画の登場人物の恋愛は、成就しないことの方が多い。

 

 中でも、私が特にそれを実感したのは、山田のエピソードだ。山田は、美少女だ。地元の商工会でもずっとちやほやされて、大切にされてきた。そんな彼女は、大学に入って恋をする。相手は真山、人と適切な距離感で関わろうとし、近づきすぎないようにしようとしている。本人は冷静に、うまくやっていると思っている。本当は人との距離感を自分で測れない、不器用な寂しがり屋なのだけれど。

山田は、真山に思いの丈をぶつけて破れ、泣き、それでも時々優しくしてくれる真山に対する思いを捨てきれない。美少女の、そんな懸命さにも、真山は絆されない。絆されないけれど、情があるから優しく接してしまう。だから、山田も期待してしまう。そんなループを繰り返すのである。


 そんなある日、山田は地元の商工会のメンバー5人から一斉に求婚される。急に好きだ、とか言われても、困る。そんなこと言わなければ、いつまでもみんなで楽しいままで居られるのに・・・。そう考えて、彼女は気づく。自分が今まで真山に対してしてきたことに。関係性を変化させようとすることは、それまでの関係に戻れなくなるリスクを背負うことでもある、ということに。自分は今まで、真山に対して、居心地の良い関係を壊すリスクを強いようとし続けていたのだ。


 恋は盲目、という言葉は、相手の良いところしか見えなくなる、というだけではない。自分の行いが相手に与える影響も、相手の気持ちも、時には、自分の気持ちさえも見えなくなってしまう。この作品では、この言葉が、多様な意味を持って、各人物に重くのしかかってくるのだ。


 ちなみに、山田と真山のストーリーも大きく扱われているが、主人公はまた別の人物で、そのエピソードもかなり大きく、重いので、ぜひ読んでみて欲しい。

ビジネスでの飛躍的な結果と、自分の人生の幸せを両立したい人へ『サーチ・インサイド・ユアセルフ』

最近、「マインドフルネス」という言葉をよく耳にする。マインドフルネスとは一言でいえば、「今、この瞬間」に意識を集中させること。日本語では、「瞑想」と呼ばれたりもする。

 

「瞑想」と聞くと、どうも怪しい、宗教っぽい、なんて思う方もいるかもしれない。しかしマインドフルネスの効果は科学的に実証されており、今ではグーグルをはじめとして多くの企業が研修として取り入れている。

 

本書では、マインドフルネスを日々取り入れやすい形に落とし込んだ「サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)」という、グーグルで熱狂的に支持されている研修プログラムのすべてがわかる。

 

グーグルのように飛躍的な結果が常に求められる場で働くことは、強いストレスにさらされることでもある。

 

しかしこのSIYを実践することで、自分を見つめる力、他者とよりよい関係を築く力が上がり、ビジネスにおける結果、そして自分の人生に対する満足度も上がっていく。

 

著者はグーグルのエンジニアで、実際にこの研修プログラムの開発に携わった人物。翻訳の文章は直訳に近いものがあり、日本語の文章としての自然さはなく、少し読みづらく感じるかもしれない。しかし、著者のエンジニアとしての性格が表れているかのようにとても論理的に書かれており、マインドフルネスの実践法から理論まで、一通りのことがわかり納得できる。

 

「ストレスでイライラする」「いつも忙しいと感じる」「集中力がなくなった」、そんなことを思っているビジネスマンが読めば必ず得るものがあるだろう。読み終わったときには、マインドフルネスを何かしらのかたちで生活に取り入れたくなっていることは間違いない。

 

もしもこの本を少し読みづらく感じたら、マインドフルネスについてより初心者向けに書かれたもの(例えば『世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる 』は読み物として読みやすくおすすめ)を読んだ後に、また手に取っていただきたい。

 

これからは日本人の働き方も変わってくる時代だ。年功序列・終身雇用はもはや保証されず、プロセスよりも結果重視。そんな環境において自分の力で人生を切り開いていきたい人にとって、マインドフルネスはまさに必須の武器だとこの本を読み強く感じた。

 

 

サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

 
世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる
 

 

この本ギャグ漫画?『日本人の知らない日本語』 著者 蛇蔵 & 海野凪子(メディアファクトリー、2012/01/31)

 

本書は、日本語学校で好奇心旺盛な外国人相手に教える日本人講師が描いた本である。(ほぼ漫画)

タイトルの通り、日本語について書かれた本なので、もちろん真面目な日本語の解説がある。
例えば、一般に正しくないとされる「ら」抜き言葉だが、ちゃんと説明を聞くとその存在理由・合理性が理解できる。
普通の五段活用の動詞は可能形・尊敬形と変えるとそれぞれ変わる。例えば、「書く」を可能形に変えると、「書ける」となるし、尊敬形に変えると、「書かれる」となる。
しかし、一段活用の動詞は可能形・尊敬形と同じになる。具体的には、「出る」を可能形にすると「出られる」、尊敬形に変えても「出られる」となってしまう。なので、これに違いを出すために可能形を「出れる」とする。なので、「出れる」という「ら」抜き言葉には合理性がある。こんな真面目な説明もある。

しかし、本書の最大の魅力は好奇心旺盛すぎる外国人との格闘の日々である。
例えば、「スッパ抜く」って言葉に出てくる「スッパ」ってなんですか?なんて質問がくる。
即答できず苦しみ調べると、「素破」もしくは「透破」と書き、戦国大名の抱えていた忍者のことだそうで、その忍者が機密情報を手に入れてくることをいうのが起源とのこと。
これを聞いた外国人は、「じゃあ、すっぱだかも忍者のことなんですね!」と返されたりするわけだ。
また、別の質問でいきなり「日本のマリさんは大変なんですか?」と聞かれる「どこのマリさんだよ??」となるわけだが、「おマわリさん」のことで、「お」を付けると丁寧語になると知った外国人特有の疑問が飛んでくる。
また、美人なフランス人女性から「親しい男性に「にくたい」あげたいですが、どうすればいいですか?」なんても聞かれる。
実際はネクタイの間違いなのだが、こんなエピソードが事欠かずに書かれているのだ。

想像の斜めの質問が飛んでくる外国人からの質問がこの上なく面白い。是非読んで笑ってほしい。

ドキドキ、ハラハラ、キュンキュン『ヒメゴト〜19歳の制服〜』(全8巻)著作 峰浪りょう(小学館、2011/4/28)

「"ヒメゴト"を持つ三人の十九歳が繰り広げる "ヨクボウ"と"セイフク"の物語」と言うキャッチコピーを持つ本作品。18歳未満でもなく成人でもない19歳の男女三人は制服に関する『ヒメゴト』を持つ。三人はいかにして制服を脱ぎ捨て大人になるのか。三人のぐちゃぐちゃな三角関係による感情の揺れ動きが最高!!。

さて、三人の主人公を紹介していきます。

●ヨシキ
本名はユキですが仕草、見た目、口調も男なので周りからもヨシキと呼ばれています。そんなヨシキの『ヒメゴト』は「自分の家で高校時代のスカートを隠れてはくこと」。本当は女の子に成りたくて、成りたくてしょうがない。

●ミカコ
学校では美少女なお嬢様、純潔少女。しかし、夜は街で自分を15歳と偽り制服を着て売春をしています。

●カイト
イケメンであり、年上の彼女からはお金を貰っています。そんなカイトの『ヒメゴト』はミカコが大好きで、ミカコと同じ服を着て(女装して)街を歩くこと。

以上の三人の三角関係がぐっちゃぐっちゃにもつれていきます。

ヨシキはカイトが気になり、カイトとヨシキは「女装仲間」として仲良くなり、でもカイトはミカコが好きで、ミカコはヨシキが好きになり、、、。と、とにかく説明できないほど関係がぐっちゃぐっちゃで、感情が揺れ動きまくります。

三人は如何にして制服を脱ぐのか、最後はめっちゃ感動です。傑作です。これだけぐっちゃぐっちゃな三人と三角関係が綺麗にまとまります。とにかく、間違いなく傑作、面白いので読んでください。

2017年はこの作品の1年になる『メイドインアビス』著作 つくしあきひと(バンブーコミッス、2013/7/31)

2万メートル以上の深さである秘境の大穴『アビス』。その深く巨大な縦穴の中では奇妙奇怪な生物が生息し、貴重な異物が眠っている。本作はそのアビスへ挑む可愛らしいロリ&ショタの主人公リコ&レグによるダークファンタジーである。

主人公のリコは孤児であり、10年前にアビスで亡くなった母のように偉大な『探窟家』(大穴に挑戦する冒険家)になりアビスの謎を解き明かすことを夢見ている。もう一人の主人公レグは器械でありながら人間の感情も理解し、戦闘能力が非常に高い。しかし、記憶喪失でありどこからきたのか、また自分は何者なのかが全くわからない。

ある日、アビスで手に入れた異物の中から10年前に亡くなったはずのリコの母からの手紙を見つける。そこには、「奈落の底で待つ」と一言。居ても立っても居られなくなったリコはアビスの最深部を目指すことに、また、レグも自分が何者なのかを理解するために冒険を始める。

本作は主人公達がとにかく可愛い!。しかし物語は歴史、文化、背景etc…が、これでもかと言うほど練りこまれている。王道の冒険物らしくアビスに潜れば潜るほど敵は強くなり、何度も何度も残酷な現実を目の当たりにし、常に死と隣合わせの冒険が繰り広げられる。本当に作者のつくしあきひと氏はキツイ、エグい、残酷、残虐に立ち向かう二人の心理描写がうますぎる!話に引き込まれずにいられない!。可愛い絵柄に惹かれてキッズが読むとトラウマになりかねないほどの大人向けのダークファンタジー作品だ。

また、本作品は2017年7月よりアニメ化が決定している。2017年は間違いなく、メイドインアビスの1年になることを確信している。

試し読みも出来るのでどうぞ!
https://goo.gl/UFUTc

https://goo.gl/Nr91gg

人間はアホだから、コスパの良い「読書」をするしかない『リーダーの教養書』著者 出口治明 他4名(幻冬舎、2017/04/26)

昨今話題のNEWS PICKS本の第一弾である本書。

本書には、日本人には教養が足りないと常々おっしゃっているNEWS PICKS佐々木編集長のメッセージと、

ライフネット生命元社長の出口さんと一橋の楠木先生の対談、

猪瀬元都知事をはじめとした教養人による教養を身につけるためのブックリストが掲載されている。

 

本書において印象的なことが2点ある。

1つ目は、本を読むことのコスパの良さを再確認させられた点である。

出口さんと楠木教授の対談の中で、はっきりと読書は圧倒的にコスパが良いと話をされている。

それもオーダーが違ってコスパが良いと言っている。

それもそうだ。

この本は値段は1000円ちょっとで、読むのに2時間強の時間が必要だが、世の中にある面白そうな本を130冊を一気に知ることができ、かつその本に対してなぜこの本が良いかの教養人の考えを知ることができるのである。

読書をしないなんて考えられない!。

 

2つ目は、人間はアホであるため、教養が必要だという教養に対する考え方である

(やや私が拡大解釈していると思うが。)。

本書にも、一般的な「教養」の捉え方である、「ビジネスをする基本能力で、スポーツをする上での足腰である」や

「教養とはリベラルアーツのことで、それは自由になるための技術である」等記載されているが、

教養人の紹介するブックリスト及びそれに対するコメントを見るとこれらとは一線を画する教養の捉え方が浮かびあがる。

 

「人間は元来アホだから教養が必要である」というのだ。

 

出口さんは直接的に、「(以下、引用)僕は『フランス革命省察』を書いたエドマンド・バーグの保守主義からは大いに学ぶことがあると思っている。

彼が言ったことは、要するに「人間はアホだ」ということなのだ」と書いているし、

経済の本を紹介している大阪大学教授の大竹教授は、

「人間は合理的な行動を常にしているわけではない。そのことを理解しないとビジネスはできない。」とのことで、

『予想通りに不合理』(ダン・アリエリー著)等を紹介している。

アホとまでは言っていないものの人間は合理的でないとはっきりと言っている。

また、元Microsoftの中島聡氏は、本でないものビル・ゲイツが1995年にマイクロソフト車内に向けて送ったインターネットに関するメールは必読だと書いている。

しかし、実際はマイクロソフトの社員はWindows95の成功に浮かれ、このメールの真意を理解するする社員はごくわずかであり、2000年代に停滞の10年を迎えたと書いてある。

やはり、人間そんなによくはできていないのである。

 

この本を読んで、自分がアホであることを再認識させられた。

アホである自分を少しでもアホでなくすために、コスパの良い読書をし、本書のブックリストにある本を読みたい。

みなさんもどうだろうか。

 

リーダーの教養書 (NewsPicks Book)

リーダーの教養書 (NewsPicks Book)

 

 

本を読むのも、書評を書くのも簡単だ!『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』 著者 土井英司(サンマーク出版、2016/10/25)

みんな、本を読むこと、書評を書くことを難しいと捉えすぎだ。本を読むことも、書評も書くことも全く難しくない。

 

本書は、まず本を読むにあたっての心構えとして「全部読もうとしないこと」挙げている。

逆に、自分にとって価値のある1行に出会うことができたのであればそれはそれで良いではないかというのが著者からのメッセージだ。

そして、「速く読むな。遅く読め。」とも書いている。

ないことを知ること、慣れていないことをすることに時間がかかるのは当たり前のことであるから、じっくり読めば良いという。

また、読書には2つのパターンしかなく、新しい知識を得るための読書とすでに知っている知識を深く知るための読書の2パターン。このどちらにしても、時間がかかって当たり前のことである。

 

本書では本の読み方の他にも、実際に著者が本を読み、線を引き考えたこと、感じたことを書いている。

それを真似すれば確実に書評は書けるようになる。

具体的には、書評を2つのパートに分ける。

 

まず、はじめのパートで全体の説明をするのだ。

この本は「本を読む読者に対して、本を読んで一本でも心に留めれる文があれば良いではないかと提起した本です。」と書き、そして簡単に目次を追いながら全体の説明を書く。

「この本は大きく2つのパートに分かれており・・・。」と書けば良い。これで1つ目の全体の説明のパートは完成だ。

 

そして、2つ目のパートとして、印象に残った文章を引用し、そして思ったこと考えたことを書けば良い。

「私は、この本の始まりで書かれている「評価とは理解である」という文章が心に残った。

なぜならば、こうやって書評を書いているが、難しかった本、理解できなかった本に対して面白いと思うことはない

(具体的には、『ブラック・スワン-不確実とリスクの本質』)。

逆に、自分が普段なんとなく思っていることを単刀直入にわかりやすい言葉で説明してくれる本はとても良い本だと思う(それはこのブログで紹介している本達)。

また、普段の仕事に置き換えてもそうだと思うのだ。あまり、よく分からない人のことを高く評価することはまずない。

この人がどういう考えの元でどういう行動をしているかがわかると、その人を自然に評価できると思うからである。

普段なんとなく思っていることを単刀直入に表したこの言葉が印象的だった。」

 

そして、締めの文を一文書けば、書評は完成だ。

「この本は、良い本の良い文だけを集めた傑作選のような本だ。普段あまり読書をしない人も本書を読んで、お気に入りの文を見つけ、書評を書いて欲しい。」

 

 

一流の人は、本のどこに線を引いているのか

一流の人は、本のどこに線を引いているのか

 

 

金融の世界のことを知りたければこの1冊なんじゃない? 『リーマンショックコンフィデンシャル  TOO BIG TO FAIL』 著者 Andrew Ross Sorkin 加賀山卓郎訳 (ハヤカワノンフィクション文庫 2014/04/25)

 

本書は、リーマンブラザーズが破綻する前後について時系列に沿って物語形式で書いた本です。
リーマンショックについて様々な本が出ているかと思いますが、本書は大変面白かったです。
理由として3点あります。

まず、1点目として、金融の世界で出てくるキーワードが余すところなく出てくる点です。
ざっとですが、下記に挙げる10のワードの意味を説明できる方はそうはいないと思います。
これらが物語の中でサラッと出てきてそれらの関連性がなんとなく理解できます。
デリバティブ
コモディティ
・サプライムローン
証券化
・デゥーディリジェンス
CDS
・世紀の空売り
レバレッジ
モラルハザード
エクスポージャー

 

次に2点目として、読み応えがある点です。
本書は文庫版で約900ページの大作であり、登場人物が多く、時系列に沿って書かれているため、大変読み応えがあります。
リーマンショックとは「証券化商品であるサプライムローンの評価方法に誤りがあり不良債権化し、それにより大手金融機関が潰れた話」ですが、それ以外に様々な問題提起をした歴史的トピックだと思っています。
例えば、「資本主義は良いか悪いか」「ウォール街が富裕層達は金を稼ぎすぎだ。貧困層に分配するべきだ(ウォール街を占拠せよ)」、「絶対起きないは絶対起きない(哲学的な問い)」等です。これらについて、本書を読みながらぼんやりと考えることができます。

最後に3点目として、始まりと終わりがかっこいい事です。
本書は、ガリレオ・ガリレイの言葉を引用して始まります。
「あらゆる真実は、発見してしまえばたやすく理解できる。重要なのは、発見することだ」と引用し、「本書がそうであることを願う」と始まります。
そして長い物語の後、ルーズベルト大統領の演説の引用で終わります。
「重要なのは批評家ではない(中略)。
名声は、現に競技場に立つ男のものだ。(中略)
万一失敗に終わっても、それは少なくとも雄々しく挑戦したうえでの失敗である。
だから、彼らの立場が、薄情で臆病な、勝利も敗北も知らない者たちと同じになることはありえない。」と引用し、
「(本件について)現場で戦った人がどうであったかは後世が判断することである」と終わります。
かっこよくないですか?

以上より、金融の世界の事をざっとインプットして、ぼーっと俯瞰して考えたい人には大変おすすめです。


*上記の言葉の意味は下記になります。
デリバティブ
金融派生商品のこと。原資産である、株式、金利、債権、通貨等から派生した商品の総称。
コモディティ
石油石炭や金銀、小麦のように実態のある現物商品の総称。
・サプライムローン
通常の住宅ローンの審査には通らないような信用情報の低い人向けのローンのこと。
証券化
保有資産を資金化するために、資産のキャッシュフローを裏付けに有価証券を発行する手法。
・デゥーディリジェンス
企業価値の調査こと。
CDS
「Credit default swap」の略。
社債国債、貸付債権などの信用リスクに対して、保険の役割を果たすデリバティブ契約のこと。
・世紀の空売り
空売りとは証券等を未来から買ってきて現在売ること。リーマンショックが起きることを予測して空売りを行い、莫大な利益を上げたこと。
レバレッジ
経済活動において、他人資本を用いることで自己資本に対する利益率を高めること。
モラルハザード
元々は保険があることによって、より危険を起こしやすくなること。これを広義に捉え、倫理観や道徳感の欠如を意味することもある。
エクスポージャー
投資家の持つポートフォリオのうち、直接的にかかわる特定のリスクにさらされている資産の割合のこと